Web特集
2008年07月03日
中小規模工場におけるVOC対策と水性塗料の可能性(工業用水性塗料・塗装特集)
改正大気汚染防止法(VOC規制)が施行されて2年が経ち、VOC排出量を3割削減するという目標期限の2010年度(平成22年度)まで残りも少なくなってきた。実際に法規制の対象となっているのは自動車関連、建材関連など一部の大規模工場だが、目標達成にはそれ以外の中小規模の塗装工場での対策が必要だ。対策としては、使用している塗料の低VOC化、具体的には水性塗料、粉体塗料、ハイソリッド塗料などがあり、その他に塗着効率の向上、VOC処理装置などが考えられる。
そんな中、東京都立産業技術研究センター・デザイングループの木下稔夫氏は「スプレー塗装におけるVOC発生の調査・解析」をテーマに東京圏の工業塗装専業事業所の実態調査を行った。中小塗装工場での実作業によるVOC発生及び排出の調査・解析を行うことで正確な実態の把握を図った。
木下氏は「小規模工場での実態を分からないまま法律で規制しても現実的ではないのではないか。今後の方向性の中で現状を把握して公にしながら、実態に即した対策や法規制を思考する必要がある」との見方を示す。
図1を見ても分るように、小規模塗装工場においては小ロット多品種の場合が多く、それに伴い使用する塗料も多くなりVOC濃度パターンが異なってくる。
東京工業塗装協同組合が行った調査によると、年間に使用する塗料銘柄数は、38%が10未満と少ない銘柄であった一方で、10‐49が39%、50‐99が13%、100以上が6%となり平均では46銘柄であった(無回答4%)。また、塗料の種類では10‐49が40%、50‐99が17%、100以上が32%となり平均では153種類の塗料が使用されていることが分った(無回答11%)。
使用する塗料に関しては、発注者側指定のケースが半数近くあるため容易に変更できない現実がある。そこで重要になってくるのが塗着効率だ。図3のスプレーパターンの実態を見てみると、箱状小物被塗物では約3分のスプレー時間に伴いVOC濃度も右肩上がりとなりそれが終わるといったん下がる。そのパターンを繰り返している。板状小物被塗物も同様の傾向が見られる。
木下氏は「スプレー塗装ではピークがたくさんあり、VOC濃度が大きく変動する。そのため法規制で平均的に規制する場合、濃度をどのように考えるかを吟味しなくてはいけない」と述べるとともに、専業者は自社で塗装内容を把握することで対策が立てられるとの見方を示した。
(図はJST、東京都地域結集型研究開発プログラム平成19年度研究成果発表会資料より)
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水性塗料の前にできることをやる
東京都立産業技術研究センター・デザイングループ 木下稔夫氏
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スプレー塗装は吹き方、塗り方によって使用量が変わっていく。3割削減であれば塗り方で工夫したり、ハイソリッド塗料を使用したりして対応できるのではないか。すぐに水性塗料を使用するというより、まずはできることからやるというのが現実的だと思う。缶の保管の仕方にしても調合後にはきちんと蓋をしたり、ガンを洗浄するときはブースに吹き捨てるのではなく圧を落として一箇所にまとめたりといった細かなことが大切だ。
行政サイドにも言ったことがあるのは、塗装業者だけでは難しいということ。発注側のメーカーも取り組むことが必要だと感じる。塗装というのは製品の付加価値、外観、物性などを付与するので購買に大きく関わっている。そのため企業の営利活動とのバランスが大切になってくる。すべての製品ということではなく、求められる外観や物性を考慮して、製品ごとに水性塗料に替わる可能性を探していく取り組みが重要だ。それには低VOC製品に対してメーカー並びに国民が許容する気持ちを広まるような仕組みづくりも必要だ。