Web特集
2008年08月19日
シリーズ: 揺れるライン塗装
揺れるライン塗装№147 明治ナショナル工業 春日・本社工場 PULL生産方式に対応した多頻度色替え
松下電工グループの明治ナショナル工業はPULL生産方式を導入。一部内製化率を高めるなど生産効率の追求を図っており、今回の設備投資はより経済効果を狙っての導入となった。
同社は1926年(大正15年)1月に創業。一貫して照明器具の製造を行ってきた。現在は松下電工の連結対象子会社として照明、電子デバイス、住宅設備の開発・製造の一翼を担っている。2007年には同社で生産する省エネ、省資源の『Wエコ』が経済産業大臣賞を受賞した。「1灯で2灯と同じ明るさ」の環境配慮型照明器具として2007年度の省エネ大賞にも輝いた。ランプ寿命は従来の1.5倍。タイマーセルコン機能で約35%の省エネを実現した。
省エネ、省資源と同時に反射効率をいかに高めるかは照明器具開発の最大のテーマ。特に同社は塗装の機能塗膜でそれを達成しようと努めてきた。Wエコにも使用されている『スーパーブライトコート』は全反射率95%というものだ。「金属加工、穴あけ、塗装及び組立を一貫で行う中で、板金加工の曲げ技術と塗装に力を注いできた」と新家誠司常務取締役は説明する。
同社は1989年(平成元年)に従来の溶剤系塗装から粉体塗装にメイン製品をシフト。同社福井工場で白色粉体塗装を立ち上げた。その際の全反射率は85%。その後、2000年(平成12年)に全反射率92%のブライトコートを製品化、更に2005年に全反射率95%のスーパーブライトコートの製品化に成功した。
また塗装設備は12年前に定量供給装置を装備した日本パーカライジング製(当時は小野田セメント・アイオニクス)を導入しブライトコートの高反射白色塗装を達成した。
「当時、基準に合致した塗料を作るのに苦労した。とにかく照明器具で粉体塗料を採用するのは初めてのケース。川上塗料さんに最後まで協力頂き、照明器具に使用できる白の粉体塗料を開発して頂いた。このときの全反射率は85%。その後省エネ志向が高まる中で、全反射率92%のブライトコートを開発。更に器具効率のアップを図ったスーパーブライトコートを開発し、全反射率95%を達成した」と新家常務は振り返る。
その他にも塗料の共同開発では光を拡散させる拡散反射塗装や反射板の表面温度が160の高温反射塗装などを開発してきた。「機能塗膜で他社にないものを手掛けることで特長づけてきた」と生産技術部生産技術グループの芦田智猛主事。
省エネ大賞に輝いた全反射率95%のスーパーブライトコートは樹脂、酸化チタンの選定から粒子径、表面処理まで塗料メーカーと協議して達成したものだ。
1日に10回の色替え対応
春日・本社工場は小ロット・多品種の生産工場としてPULL生産方式を導入し、ジャストインタイムで対応している。生産量の60%がオーダーメイドであることから小回りを効かせた生産が求められる。
導入した粉体塗装設備は日本パーカライジング製のコンパクトマルチカラーブース2台を新たに導入するとともに、溶剤系塗装はブースを更新し機器は従来使用していたディスクタイプを移設した。また塗装ブースはアウターブースで覆われゴミ、ブツの持込を抑える設計となっている。
粉体塗装ブースは壁面と床にPVC樹脂パネルを二重構造(Wウォール)にする特注品。回収系を含め色替え清掃のしやすさを追求した同社のノウハウが生かされている。「ワークサイズが最大で高さ1,400㎜、幅500㎜が塗装できるブースサイズなのでコンパクトにし、交互運転で効率よく塗装していく仕組みにした」と芦田主事。
搭載しているオートガンは昨年上市したGX8000シリーズ。「従来タイプのガンはエアー量が多く吹き飛ばしやワークによっては跳ね返りがあった。しかし新タイプのガンはメインエアーとサブエアーをトータルエアー量で制御できるのでソフトなスプレーが可能になった」(同氏)と選択理由を挙げる。また塗着効率、仕上がり外観は従来よりも向上しているという。
粉体塗装、溶剤塗装の並列ラインの全長は180m。前処理からの一貫ラインとなっており、ラインスピードは1.7~1.8m/min。工程は着荷後に前処理ラインに入り、脱脂‐第1水洗‐第2水洗‐表面調整‐皮膜化成‐第3水洗‐第4水洗‐第5水洗‐純水洗‐水切り乾燥のフルスペック。
皮膜化成はリン酸亜鉛処理を施しており、また低温低スラッジタイプの薬剤を使用している。各工程はシャワー式を採用。水切り乾燥は150℃×8分に設定。循環ファンにはインバーターを設置し無駄のない経済的な環境を整えている。
粉体塗装ブースは1ブースに1レシプロ4ガンを縦吊りに対面で設置。形状記憶装置で認識しガン距離、吐出量、空気圧を被塗物に合わせて自動的に切り替える仕組みだ。条件制御に関しては集中制御盤で電圧、電力、吐出量、空気圧及びパルスのON/OFFを任意に切り変えられるようになっている。
また焼付乾燥炉は近赤外線バーナーと熱風乾燥の併用によって短時間で硬化温度まで上げてメルトさせ、熱風乾燥でフローさせることでコンパクトな乾燥炉にするとともに、良好な仕上がり外観を確保。平均膜厚は60‐70μmを狙っており、1ガン当たりの塗料の吐出量は50‐60g/minに設定している。
現在の色替えはブースの入れ替え(自動)にに9分、ブース内、ガン、ホッパーなどの清掃に1人で約15分を要している。また塗色は屋内用のオフホワイト、スノーホワイト、アイボリー系。屋外用のオフブラック、サテン調模様、ミディアムグレーメタリック、ホワイトの御影石調模様、シルバーグレーの8色。メタリックと模様粉体塗料は吹き捨てで行っており、その他の塗料は全量回収・再使用している。生産量の80%がホワイト系で占められている。
メタリックへの対応強化
同社が扱っている照明器具の部品点数は7000点にも及ぶ。同工場では約2000‐3000点。素材も鉄、ステンレス、アルミダイガスト、SPCとさまざま。「従来、アルミダイガスト品は外注に出していたが内製化を進めるに当たり、前処理後にプライマーを塗布して塗装工程に入るライン設計にした」(芦田主事)と説明する。
現在の不良率は0.6%と管理が行き届いている。不良原因は塗色の濃淡、ゴミ、ブツの付着によるもの。通常の品質管理に関してはロットごとに抜き取りで色差計、光沢計、膜厚計による検査の他、色見本との照合を行っている。
また近年、照明器具においてもメタリック色のニーズが高まってきているようだ。「現在、メタリックはドライブレンドで対応しているが、回収・再使用できるボンディングメタリックの検討を進めている」と芦田主事は打ち明ける。現状、ガンヘッドの先にメタリック対応の器具を装着することでアルミのスピット対策を講じている。
この半年の新設工場での塗料使用量はひと月に約3トン。粉体塗料が1トン、溶剤塗料が2トンというもの。「昨年は4トン使用していたが、溶剤塗料を粉体塗料に切り替え、回収・再使用することで1トン減った。更に外注に出していたものを内製化したことで全体として約30%の生産性アップになっている」(芦田主事)ということだ。
同社は今年の10月にパナソニック電工施設照明㈱に社名変更する。松下電器のパナソニックへの社名変更に伴い関連会社はすべてパナソニックを冠した社名に変わるため。パナソニック電工の施設屋外照明事業部の生産会社として新たなスタートを切る。(青木)