コーティングメディア・オンライン独自のコンテンツをお届けします。新聞・雑誌の定期購読、単行本ご購入承り中!

Last Updated: 2010年7月 1日 08:54  RSS 2.0
キーワードを入力してサイト内のニュースを検索できます。

Web特集

2008年12月01日

シリーズ: 揺れるライン塗装

粉体塗装導入でCO2約30%削減 固定と色替えの2ブースで効率生産 ガスター大和工場(動画付)

ガスター(本社・神奈川県大和市、社長・中西誠一氏)はこの7月に総工費5億円を投じてS&B(スクラップアンドビルド)で粉体塗装工場を立ち上げた。安全と環境をキーワードに企業活動を進める同社にとって環境問題、特に臭気対策は近隣住民との共生に欠かすことのできない大きなテーマ。今回溶剤系塗装(上塗り)から粉体塗装に切り替えることで臭気問題に終止符を打つとともに大幅なトータルコストダウンを達成した。(※ページの最下部から動画がご覧頂けます)
20080924-6-1.JPG 
本社社屋と工場前景

溶剤系塗装を行っている多くの塗装工場は臭気対策に悪戦苦闘している。特に準工業地帯は近隣が住宅地であることから神経を使う。溶剤臭、乾燥炉からの焦げ臭の苦情が出れば即座に対応しなければならず、その設備がらみの対策費も膨大になる。 給湯器の生産を行っているガスター大和工場も近隣が住宅地であることから近隣との共生を図りながら臭気対策を施してきた。しかし苦情が絶えなかった。 「近隣住民から臭気の問題で苦情が寄せられていた。ここ数年いろいろな対策を講じたが大きな効果はなく、対症療法ではなく抜本的な改善を図る必要があるということで、従来の溶剤塗装から粉体塗装方式に切り替えることにした」と専務取締役給湯生産本部長・佐藤元昭氏は粉体塗装導入の経緯を説明する。

20080924-6-2.JPG 
専務取締役・給湯生産本部長 佐藤元昭氏

昨年の暮れから準備に入り、3月からは撤去工事、塗装を外注に移行。5月から設備搬入、7月から粉体塗装設備で本格生産に入っている。粉体塗装にすることで従来の電着塗装+溶剤塗装の2コート2ベークが1コート1ベークで済むことから大幅なコストダウンを達成した。 粉体塗装の塗料使用効率は97%と従来の塗装の50%からすると大幅に向上している。更に電気は48%、ガスは21%削減され、CO2換算では約30%の低減。特に塗料スラッジなどの産業廃棄物は75%の大幅な削減を達成した。「粉体塗装にすることで年間約6,500万円のトータルコストダウンになる。4億円近い設備投資に対し約6年の償却で十分採算に合う勘定」と佐藤専務。更に塗装膜厚も従来の40μm(総合膜厚)から60~90μmと1.5倍以上になることで防錆性がアップした。

20080924-6-3.JPG 
メイン製品の給湯器

従来の電着塗装の焼付温度は180℃、上塗りの焼付温度が170℃。いずれも排ガスは脱臭炉において700℃で燃焼させて排気していた。しかし上塗りブースからの排気量は膨大なため脱臭炉での対応ができず、そのままで「臭気指数27くらいの排気が出ていた」と生産技術部工機グループマネジャー兼環境技術チームリーダー・土屋順裕氏。ちなみに年間の塗料カスなどの産業廃棄物は約320トンに及んでいた。

高速色替えブースで効率化

今回、導入した粉体塗装ラインの設備は日本ペイントプラントエンジニアリングが受注し、粉体塗装ブース・機器はノードソン製を採用した。塗装ブース全体をアウターブースで覆い、室内の温度30℃以下、湿度50%に空調管理している。また同ラインは前処理からの一貫ラインとなっており、搬送コンベアーは全長300m。ハンガーピッチ450㎜、ハンガースピード2.5m/minに設定。


20080924-6-4.JPG 
前処理ライン

前処理は予備脱脂-本脱脂-第1水洗-第2水洗-表面調整-化成処理-第3水洗-第4水洗-純水洗-水切り乾燥(120℃×10分)のフルスペックでいずれもシャワー式。特に化成処理槽はメンテナンスを考慮し4,000Lの置換槽を別途設けている。
粉体塗装ブースはPP(ポリプロピレン)のプラスチックブース(エンバイロブース)と色替え用にノードソンが誇るカラーマックスの2台を直列に設置。


プラスチックブースは1レシプロ6ガン(シュアコートガン)を対面に設置するとともに固定ガン2ガン、そのうち1ガンは塗装ロボットに装備し箱物内面塗装に対応したもの。一方の色替えブース・カラーマックスは内壁面に塗料の付着を抑えたアポジーをスぺック、色替えの短時間化を図る。ガンは1レシプロ6ガンを対面に設置するとともに固定ガン1ガン(レシプロ装着)を配す。


20080924-6-5.JPG 
固定式のプラスチックブース

固定のプラスチックブースはカートリッジ式を採用。同社のシャドーホワイト1色を全量回収・再使用している。「シャドーホワイトで全体の80%を占め残り20%が特注色」(土屋氏)と説明する。
カラーマックスは特注色対応として導入したもの。色替え時にブース全体を(ラインから)横に自動移動させて色替え清掃を行い、次の特注色に備える仕組みだ。


「現状の色替えは1人で12-13分を要し、パウダーセンター、ブース内、サイクロンと順番に清掃を行っている」と土屋氏。ガンは自動ガンブロー、ブース内は塗料の付着がほとんどないことからエアーブローで軽く吹くのみ。多くはサイクロンの清掃に時間を要す。 
塗料はポリエステル粉体塗料を使用している。
また焼付炉からの排ガスは脱臭炉燃焼させて排気している。


20080924-6-6.JPG 
色替え対応のカラーマックス

20080924-6-7.JPG 

奥がプラスチックブース、手前がカラーマックス

生産計画がそのまま塗装システムに

「今回の導入設備のもうひとつのメリットは、ノードソン社の塗装生産管理システムとガスター独自のホストコンピュータからの生産計画データリンクがある。前日にノードソン社のシステムに計画入力しておけば、あとは翌日オペレータがその生産順番を入れ替えたり、塗り方を選定したり自由にできる。完成実績も自動で記録され、不良が出た場合は、原因項目をタッチパネルで選べば、ロットごとにどんな不良があったかも集計される。塗装の品質管理も容易になった。各機種の塗料吐出量、膜厚、塗装ガンの位置コントロールなどすべてコンピュータで管理できる。従来の季節による塗料粘度調整など経験と勘による人的調整から数値管理が行えるメリットは大きい」と土屋氏。また不良率においても溶剤系塗装の場合は約4%の不良が出ていたが粉体塗装に切り替えることで2%以下となった。


20080924-6-8.JPG 
焼付乾燥炉

また特注色への対応として20-30色に絞り込んで受注を進めていく方向を示す。「特注色の色数は増える方向にあるものの、無制限にすべてに対応するのは困難。準標準色の中から選択して頂くか、どうしてもということであればある程度時間と価格アップになることをご理解頂く方向で進めていく」(土屋氏)考え。
更に同塗装ラインのブースの間口は1,800㎜までの長尺モノの塗装も可能になっている。「今後、燃料電池などの大型の新製品にも対応できる。従来タイプの給湯器であれば1ハンガーに3台吊ることができるので大幅な生産性アップに結びつく」(佐藤専務)とし、早期に20%アップの生産性向上を図る意向にある。


同社は粉体塗装ラインの立ち上げに前後してショールーム『ガスタジオWings』を開設した。ガスを通して快適な生活を提案するモデルルーム。同社はガスを利用したオールエコ製品のラインアップを進めており、2015年までにオールエコを業界標準(デファクトスタンダード)にする方向で取り組んでいる。

住民との対話を重視 地域との共生図る
20080924-6-9.JPG

「臭いがなくなってこんなに嬉しいことはない。長年悩まされてきましたから」。13日に近隣住民を招いて開催した「新塗装設備完成説明会及びショールーム見学会」で近所に住むある婦人は感嘆の声を上げた。

昨年3月、同社は近隣住民から臭いによる苦情が相次いだことから、直接声を聞こうと初めて住民説明会(リスクコミュニケーション)を開催。そこで工場ではどういうものを生産しているのか、排出している化学物質の内容、環境への影響、またそれに対してどういう対策を施しているのか、ありのままの現状を伝えた。

今回の粉体塗装設備の導入は同社にとっても、近隣住民との共生を図るための大きな意味を持つ投資と位置付ける。今回参加した29名の住民と行政関係者10名を前に担当者は「有機溶剤塗料から粉体塗料化することで、塗装ブースでは臭気の原因であるトルエン、キシレンなどの有機溶剤の使用がゼロになった。臭気指数も脱臭炉煙突口で28から粉体塗装化後は15に低減。敷地境界線では10未満と気にならないレベルになった」と説明。更に「粉体塗装ではε-カプロラクタムという有害物質が排出する。しかし脱臭炉で焼き切った後は、濃度検出はされなかった」など、あいまいな表現は避け、専門的なレベルにまで踏み込んだ説明に徹底した。

20080924-6-10.JPG

冒頭の婦人はこうも話す。「臭いが強くて連絡したときはすぐに駆けつけてくれた。いつも誠意を感じていた」。 同社は毎月26日、最寄駅から会社までの道を13年間にわたり清掃している他、市民行事の神奈川大和阿波踊りでは、大和市の企業連としては唯一、また100名規模で積極的に参加している。周辺環境が変わる中にあって、同社は地域との共生を絶えず図ろうと努めている。

ムービーをご覧いただけます

« 前のWeb特集Web特集アーカイブ次のWeb特集 »

Web特集|ニュース|コラム|インタビュー|データルーム|イベント情報|セミナー情報|リンクネットワーク