Web特集
2009年01月06日
シリーズ: 揺れるライン塗装
工場ルポ 粉体塗装機を導入、溶剤塗装との併用 生産性向上で人的効率高まる マツバ
同社は昭和46年、発電機メーカーの協力工場として、発電機、溶接機の巻線製造業として創業。昭和49年には鋼製家具メーカーの協力工場となり、プレス、板金加工を主力としたパーツ加工会社として業容を拡大してきた。これまで棚板自動ライン、小型モーター自動巻線機を導入し、塗装に参入したのは昭和60年。月産10万m2の焼付自動塗装ライン(メラミン塗装)を導入した。これにより塗装のみの需要も拡大。現在、塗装の9割がスチール家具部品で占める。
今回の粉体塗装導入には協力工場である発注元の要請が契機となった。「環境問題から粉体化への切り替えを勧められており、環境に対する適応も取引要件の重要素となってきた」(有馬哲也工場長)とのことから投資に踏み切った。 ただ導入に際しては、全面粉体化か一部導入か、また水性設備を導入するかの選択が迫られた。その結果、特注色対応が少なくないため色替え効率の点から全面粉体は難しいと判断。また需要動向にも不透明感が見られていたことから、急激な設備投資はリスクが大きいため、段階導入を決断した。
溶剤塗装ラインは前補正、レシプロブース×2、後補正を加えた計4ブースを備え、これに前処理、焼付乾燥炉が加わる。粉体塗装機はこの溶剤ラインの延長線上にあるセッティングブースを30m伸ばし、アウターブースを設置した。
粉体ブースはGEMAの多色対応のマルチサイクロン方式のプラスチックブース(ダイヤモンドブース)を導入。自動ガンにはOptiガンを採用した。塗装機の選定においては、昨年の11月にハンドガンによる試験から検討に入った。複数メーカーとの比較の中から、「コンパクトで扱いやすく、ワークに応じて手元で吐出量や塗装モードを切り替えられる操作性が良かった」というのがOptiガン採用の理由。ブースについては「ポリカーボネート樹脂製の透明ブースは見栄えが良く、クリーンな印象を受けた」と説明。塗料付着が激減し、色替え効率が高まることも決め手となった。 自動ガンは対向5ガン、計10ガンを設置。またガンホースを束ねたことでアウターブース全体にスッキリとした清潔感を与えている。
20年以上にわたり溶剤塗装をしてきた同社にとって粉体塗装の導入に際しこだわったのが作業性。200種以上にも及ぶワークを扱うため、ワークに応じた塗装設定の自由度が高いことが条件となった。 そこでコントローラーにはすべてのエア量をマイコン制御で一定にコントロールし、正確な塗装設定を簡単に再現することができるGEMAのDVC機能搭載の「OptiStar」を採用。制御関係については徹底した作りこみを行うことで、ワークに応じ10種類の塗装レシピを設定した。 アウターブース内は常時20℃を維持し、在庫においても専用の保管所を設けるなど、品質管理にも細心の注意を払っている。
1.5倍の増産を達成
粉体塗装設備以外の前処理、乾燥炉は従来のものをそのまま利用している。溶剤塗装、粉体塗装の並列ラインの全長は300m。前処理から組立、梱包まで一貫ラインとなっており、工程は着荷後に前処理ラインに入り、予備脱脂-脱脂-第1水洗-第2水洗-化成処理-第3水性-第4水洗-純水-水切り乾燥。皮膜処理はリン酸亜鉛処理を施し、各工程はシャワー式を採用している。
塗色はホワイト、グレー、ダークグレーを中心としたメイン色3色。これに特注色が加わる。MRS-M型ダイヤモンドブースの色替時間は、同系色の場合15分以下(作業者2名)、反対色でも25分程度で作業者の習熟度が高まれば更に時間短縮が可能。塗料は全量回収を行い、塗着効率は98%以上に達している。
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この日はロッカーの土台部分の塗装を行っており、平均膜厚は50μm。粉体塗料は発注元指定により日本ペイントのポリエステル樹脂粉体塗料を使用している。
粉体塗装化による効果は、既に人員の効率化という形で効果を生み出している。
同社塗装工場には10人が従事している。これまで3人が塗装を担当してきたが、粉体化にしたことで色替え以外は1人が管理のために常駐するのみとなっている。そのため、その他の人員については組立、梱包に移管することが可能となり、人的効率が高まった。
またスチール家具の需要期は秋口から翌年の年度末までに最盛期を迎える。その頃は毎月40時間程の残業が強いられるが、溶剤ライン時のコンベアスピード2.4m/minに比べ、粉体塗装は3.2m/minと1.5倍の増産効果が得られていることから残業時間の減少が確実となっている。初めての繁忙期を迎えた今、「サブプライム問題による金融不安や建築着工件数の減少により、昨年比で2-3割の減少が予想される」と景気後退の影響が及んでいる。それでも「増産・増量により塗料代やエネルギー使用量は多くなったが、人的効率化はそれらを上回る」と評価する。
生産効率向上のために、日常の作業工程にも工夫を見せる。溶剤塗装の際の乾燥炉の焼付温度は150℃。粉体塗装時は190℃となる(いずれも20分)。温度を下げるより、温度を上げる方がエネルギー使用量は増加するが、時間短縮ができるため、例えば午前中に溶剤塗装を実施し、昼休み中に温度変更(40分)し、午後に粉体塗装をといった取り組みも行っている。導入して間もないため、粉体化による塗装効率については「最盛期を終えた後に結果を出したい」としている。
ホワイト系塗色の品質確保が容易に
稼働して半年が経過した現在、溶剤塗装と粉体塗装の比率は50:50。「来年末までには30:70にまで引き上げたい」と粉体による増産も視野に入れるが、スペースについては既に限界に来ているという。現状ラインのコンベアスピードを上げることも可能だが、そのためには使用する熱風乾燥炉(ガス式)の入れ替えが必要だという。その他、全長300mを支えるライン駆動部の負担が大きくなっているなど、大小合わせた設備改善が必要となっている。
同社に対して粉体塗装の導入は環境、生産性に寄与する一方で、品質面においてもメリットを生み出した。
スチール家具では、最近までシルバーメタリック塗装が多かったが、現在はホワイト系色全盛だという。そのホワイト塗装において、溶剤塗装では膜厚不足による"透け"など塗装品質の確保に難があったのに対し、粉体塗装はターゲットの膜厚が確保できるため、「ホワイト色は本当に楽になった」と評価する。
景気が後退局面に入っていることからあえて大規模な設備投資を見合わせ、段階的導入にしたことは経営判断として奏功した格好となった。その一方で、同社は塗装を軸とした受注拡大も見据えている。
有馬工場長は「塗装ができることの付加価値は大きい。これにより板金仕事も増やしていけると考えている」と意欲を燃やしている。今後は粉体の増産と合わせて水性設備の導入も検討していくとしている。