Web特集
2009年04月10日
シリーズ: 揺れるライン塗装
揺れるライン塗装№151(動画付) 粉体塗装導入で受注幅を広げる 林塗装店
世界が100年に1度といわれる金融危機に見舞われ、世界同時不況の様相が深まるにつれモノ作りの現場から不安の声が大きくなっている。工業塗装においても自動車部品、弱電、産業機械関連を中心に軒並み40-50%の大幅減産と厳しい環境にさらされ、打つ手がないといった状況だ。 林塗装店は多品種・小ロット対応が奏功し受注量の大幅なダウンには至っていないもののコスト競争が激しくなっているという。同社の受注製品の70%が照明器具の部品関連で占められており、その点数は500アイテム以上に上る。指先ほどの小さなものから500角のものまで多種多様だ。その他、住宅建材、音響機器(スピーカー)などを手掛けている。
「粉体塗装が多品種・小ロット対応に適するとは思えないが、環境問題から粉体塗装の仕様が増えるとともに、溶剤塗装の2コート2ベークで仕上げているものであれば粉体塗装の1コート1ベークで十分採算に合う。マーケット(照明機器)からの要請とコストダウンの対応から粉体塗装を導入した」と林宏行社長は経緯を説明する。 続いて「我々の仕事は細かい仕事。従来からの溶剤系塗装がなくなることはないと思う。要はニーズに対していかに最適塗装の提案ができるかだ」と明確だ。
現在保有する溶剤塗装設備はマイクロマイクロベル(1レシプロ2ガン)とREAオートガン(1レシプロ4ガン)。更に№2ディスク(1基)の3ステージ(全長132m)で1コート、2コート(もしくは3コート)対応の溶剤系塗装ラインと小物専用の手吹き塗装ラインを有している。
高速色替えマジックコンパクトを導入
今回の粉体塗装設備は従来の溶剤系塗装ラインのセッティングに設けられていたスペースに配置した。「マイクロマイクロベル、REAオートガンそして10分のセッティングを設けて№2ディスクといった構成になっていた。10分間のセッティングの空スペースに塗装ブースを導入し、1ラインで溶剤塗装と粉体塗装を行う仕組み」と林社長は説明する。
不良品対策として粉体塗装ブースをプラスチックシートで隔離し、外部からのゴミ・ホコリの侵入を抑えるよう工夫している。
同社の溶剤系塗装ラインの機器はすべてランズバーグ・インダストリー製を採用している。今回導入した粉体塗装設備もITWグループのスイス・ゲマ社が開発した小型高速色替え「マジックコンパクト」ブースシステムだ。
粉体塗装設備の選定に当たっては品種アイテムの多さから「色替えの速さと回収効率の高い機器を選定基準にした」と林社長が述べるように、実際に導入したマジックコンパクトはブース内の安定した空気の流れによって外部にパウダーを持ち出さない優れたエアーフロー性を有し、またフラップを利用したクリーニングシステムが短時間での色替えを可能にしている。
クリーニングの容易さという点で見逃せないのがブースをPVCの2重構造にするとともに、内壁をシームレスにすることでパウダーの付着を抑える構造にしていることが大きな特長のひとつだ。
色替えは2人で5-6分
現在行っている粉体塗装は照明器具の部品をメインにホワイト系の塗装を行っている。清掃は同系色であることから色替え時間は2人で5~6分と速い。供給系及び回収系・サイクロンは自動洗浄となっており、ブース内のエアーブローの清掃が人手による。
全量回収を基本にしており、パウダーの使用効率は90%以上の高い数値を得ている。「塗料の塗着と集塵能力のバランスがいい」と林社長は感想を洩らす。ただ被塗物によっては凹部への入り込みにおいて静電反発からすけるケースがあり、その場合は補正でカバーしているという。
塗装機器は1レシプロ5ガンを対面に設置。オートガンはOptiオートガンを採用。ハンドガンはOptiハンドガンユニット2台を持つ。
ラインスピードは1.5-2.0m/minに設定しており、1ガン当たりの吐出量は150-200g/min。被塗物の平均膜厚は60-70μmを標準膜厚にしている。
同社が使用しているパウダーはポリエステル樹脂系タイプ。ちなみに溶剤系塗料はアクリル塗料。メインの塗料メーカーはナトコとロックペイント。
また同社の前処理ラインは独立しており、2000㎜の長尺モノに対応可能なシャワー式を採用。化成皮膜にはリン酸鉄を使用している。前処理後被塗物は移載して粉体塗装装置のある溶剤系塗装ラインと2階の小物対応の手吹き塗装ラインに進む。各ラインは塗装ブースと焼付乾燥炉をそれぞれ有する。
なお小物の手吹き塗装ラインは、従来はオイルブース(2台)に天吊り式のロボット塗装で対応してきたが、多品種・小ロット・多色化が進んだことから手吹きに変えたという。
自社開発の生産管理データベース
同社が扱う素材もアルミ(ダイガスト)、SPC、ステンレス、亜鉛鋼板、クロムフリー鋼板とさまざま。加えて被塗物のアイテム数の多さから生産管理の大変さが想像できる。
この煩雑さに対応するため同社では独自に開発した『生産管理用データベース』によって現場でも事務所からでもパソコンから現状の生産状況が把握できるとともに、長年にわたって蓄積してきたアナログデータをデジタル化することで現場での塗装管理を容易にした。
データは流れてくる被塗物ごとに画面で塗装条件が確認できるように設定されている。被塗物形状が写真で確認でき、作業場の温度によるシンナー及び粘度分布が一目で分かり、更に塗料の吐出量、エアー圧などの基本的な設定条件が示されている。したがって現場ではこのデータを呼び出して塗装をする仕組みだ。
特に、過去に不良が発生したものについては写真に注意事項として矢印で箇所が示されているので非常に分かりやすい。「もともと誰が現場に入っても分かるようにひとつの目安としてデータベース化した。職人による勘の世界から数値管理に置き換えていかないと情報の共有化が図られないし、若い人が育たない」と説明する。とはいうもののデータはあくまでも目安。「塗料は生ものなのでそのときの環境によって(塗装条件は)異なる」と塗装の難しさを強調する。
従来の被塗物が徐々にではあるが減る傾向の中で、粉体塗装の導入は受注の幅を広げている。今後、同社としては粉体塗装ニーズの高まりとともに高速色替えの機能を十分活用すべく更なるノウハウの蓄積に努めていく考えだ。
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