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Web特集

2009年07月01日

自動車アフターマーケット特集2009 自動車補修、新成長戦略へ 生活者基点のサービス構築

汎用市場の核である自動車補修用塗料が新たな成長戦略に向け、マーケティングパラダイムを変えようとしている。従来の市場プレーヤーであるカーディーラー、整備・BP専業といった枠組みから一旦離れ、カーオーナーの生活感覚をベースにしたサービス業ビジネスモデルを構築する方向。しかし目標が見えにくい、コストとリターンが不明など、依然ネックが大きい。入庫誘導の主導権は塗料メーカーが握るとは限らない。オートサプライヤーか、はたまた異業種からの参入X社か、まだリーダー企業は見えていない。

自動車アフターマーケットの市場規模は整備需要6兆円に用品販売を含めて約8兆円に達する。しかし整備需要の売上はほぼ横ばいで、平成20年度は前年比1-2%を下回り、用品販売についてもETC効果は一部あるものの、全体としては弱含み状況下にある。鈑金・塗装は事故整備(約1.2兆円)、その他整備(約2.2兆円)にまたがっており、年間の市場規模は約7,000億円台と推計され、この市場にカーディーラー(内製BP)、整備専業、BP専業が参入し、BP専業者はディーラーの下請け構造に組み込まれている。
BP専業者は数人程度の小規模零細業者が90%以上を占め、経営基盤は極めて脆弱で、かつては軒天でスプレー1本で独立できるといわれたくらい流動性がある。カーディーラーや整備業者、中古車販売などから出される事故車の仕事を中心に回っている世界。しかし過去10年間のマーケットの構造変動がBP業者を直撃し、仕事のあるなしの二極化が更に鮮明になってきている。


カーディーラーの内製工場は全国に約800カ所あり、ここで対応できない大ダメージ車などがBP専業者に下請けとして出され、いわばBP業は需給調整の受け皿となってきた。
しかし若者のクルマ離れに加え、生活とクルマとの関わりの変化から、事故需要は長期低迷期に入り、BP専業の待ちの商売は成立しなくなっている。このため直需を指向するBP業者がじわりと増加する傾向。最終のカーオーナー(消費者)にダイレクトにサービスを売る業態への転換を目指す。だがフロントの整備などの課題以前に、職人世界からサービス業への転身で失敗するケースが後を立たない。


過去の事例から失敗要因を抽出すると、以下の3点が課題としてクローズアップしてくる。
1)無理な営業をしてコスト倒れになる。フロントマンの導入、見積もりのシステム化、チラシでの宣伝など、コストを投入した割に直需に結びつかない。
2)現場とのギャップ。現場上がりの経営者の割に現場の従業員とのギャップ(意識差)が意外と大きい。営業力強化と生産性向上がかい離してしまう。
3)消費者マインドを吸収できない。この要因が失敗の最大のファクターなのだが、課題が見えにくい分、対策が遅れている。

欠如した生活者視点

鈑金・塗装需要はメーカー出荷規模で360-380億円ほどと推計される。毎年2-3%ずつ縮小してきている。市場が縮小している要因は構造的なものなので、パラダイムを変えない限り反転させることは困難だ。事故車減少に加えライフスタイルの変化から、待ちの商売から新たなビジネスモデルを構築する時代に突入している。
保険や制度的需要からの自縄自縛を断ち、生活者視点に立ったビジネスモデルの構築は可能なのか。すぐ疑問が浮かぶのはJ-ピット(日本ペイント)、キズ取り屋(関西ペイント)などの失敗。軽鈑金ブームを背景にBPのサービス業化をコンセプトにした事業だが、需要喚起にはつながらず、メーカーの先行投資コストは回収されず、失敗に終わった。


あつものにこりて...というのがしみついているのかもしれないが、失敗から学ぶべき点はあると思う。細かい要因はさておいて、本質的な問題は生活者の意識(マインド)をキャッチしたビジネスモデルであったのか、ここにメスを入れなくてはならない。
クルマが生活と一体化している割にクルマに対して気軽にコンサルティングしてくれる業態が見えにくい。カーディーラーは「新車を買わされそう」、整備工場は「直すため以外には行きにくい」、BP工場は存在すら認知されていない(整備とBPを区別する生活者がどれくらいいるのか)。


結局知人のつてで紹介してもらった業者に相談するケースが多い。クルマ離れというが、その一方でボディーコーティングビジネスは伸長、その他のディテイリング分野も元気だ。クルマに関する潜在的ニーズは整備・事故需要に限定されることはなく、開発の余地があることを示している。

塗料メーカー戦略変わる

塗料メーカーの戦略が大転換する気配がある。工業用需要の大幅な落ち込みから、改めて汎用市場の重要性がクローズアップしてきている背景もあるが、むしろ汎用市場は、メーカーがイニシアチブをとれるマーケットとの認識からの事業戦略が発動されようとしている。
BP業者の盲点である生活者マインドを刺激し、待ちの事故需要から脱した需要創造的ビジネスへの方向。生活者が潜在的に求めているニーズ、そこからのサービスを起点として鈑金・塗装の可能性を探る。


ディテイリング分野の中で、カーファッションのカテゴリーがあり、徐々に市場性を高めている。クルマの内装のリモデリングから、ボディーのカラーデザイン化など多様。10年近くなる保有期間から、クルマのデザインの陳腐化に加え、もっと自分らしいクルマへのカスタマイズニーズが顕在化しつつある。しかしニーズがダイナミックにならないのはサービス業として致命傷ともいえる価値との価格と一致がなく、消費者からの信頼性が得られにくい事実がある。
「いまさらオールペンの時代がくるとは思えない」というのが塗料メーカーの共通感覚。オールペン需要の有無が問題ではないのだ。成熟化する市場の中で、すべての商材はファッション化している。モノとしての機能中心から、モノから発する自己表現性、モノから離れた"可愛らしさ"、テイスト感など、ファッション化の波はクルマにも押し寄せていると見るべきではないか。


新車にない、補修でしか出ないボディーカラーの世界があってもよい。オールペンでなく、クルマのファッションの決め手としてのモチベーションを喚起するために。マーケット戦略は「化粧品業界をベンチマーク」(関西ペイント・小林正受氏)との言明は他山の石とするものではなく、モノビジネスからの離脱の意味合いから、正しく認識されるべきなのだ。

工場診断は有償化に

BP工場に対する環境対応圧力が社会的に強まっている中、塗料メーカー各社の市場開発の柱として工場診断がクローズアップ。この事業の戦略的優位がシェアを大きく左右する可能性がある。
工場診断のメリットとして環境負荷の低減と同時に、生産性の改善によるコスト削減効果の両面がある。またオートサプライヤーにとって新規顧客を開発する戦術として注目されるなど、急速に拡大していく勢い。
その一方で課題も浮上している。工場診断のレベルと効果の検証の必要性がある。現状実施されている工場診断は実質無料サービスのため、メーカーとオートサプライヤーとクライアント(ユーザー)の間で踏み込みが弱い。新規開拓で診断コストをカバーする発想はユーザーにとっても安易な感覚を生みはしないか。


むしろ工場診断はフォロー(検証)を含め長期スケジュールを組む必要性から有償化が望ましい。ユーザー側に自腹を切るくらいの自覚があった方が、診断-改善がスムーズにいくし、気が楽になると思う。サービス対価に見合った診断内容に高めることが急務。

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