Web特集
2009年07月07日
自動車アフターマーケット特集2009 BPケーススタディ
仲間的"顧客囲い込み"に成功 亀山自動車(岐阜)
亀山自動車は10年をかけ脱下請業態に転換してきた。それ以前は10人余りの従業員を抱え、カーディーラーなどからの仕事をこなしてきた。しかし、長期手形などの問題に加え、「顧客の顔が見たい」との思いから、下請専業からの脱却を決意した。26-27年前のことで、直需指向のトップランナーでもあった。
その前後、亀山社長は県車体協に協同化構想を提案している。「将来を考え生産を集約する工場を立ち上げ、会社形式にして共同で運用する」と先を見据えてのビジョンであったが、お山の大将の多いBP経営からの反対で頓挫した経緯がある。現状を見るにつれ、「あのときがチャンスだった」と今でも残念そう。
脱下請には綿密な計画が立てられた。直需を獲るには人間関係づくりしかない。人と人との見える関係から仕事が生まれるとの信念の下、"顧客囲い込み"作戦がスタート。
潮干狩りなど周辺の仲間を誘ってのレクリエーションなど、地域をベースとして仲間関係の輪を広げている。バスをチャーターし、家族一緒の参加で、常識で考える受注活動とは一線を画した。「仕事のことより、まず人間関係」を重視するスタイル。
ここで大切なのは「自分が楽しむこと」。趣味と実益というか、主催者である亀山氏がやって楽しいと思うことで、仲間の輪を広げるのがポリシー。この活動は今日まで続き、最近では海釣りのイベントが多い。釣キチなのだ。
こうしてできた人間関係は亀山氏の人柄とあいまって、ファミリーの感じすらある。こんなエピソードも。20年前に親子でイベントに参加した子供が成人しクルマを持ち込んだ。その人に対し亀山氏は親父のように事故を起こしたことを叱る。これが自然体で、顧客はそうした接し方にむしろ親近感を抱いている。
しかし、直需に手応えが出始めたのは5年目くらいから。この間は当然コストの持ち出しであったが、決してあわてることはなかった。10年計画で転換を考え、ディーラーの仕事を徐々に削減してきたからだ。
現状は亀山社長と事務とフロントを一手に引き受ける奥様、30代の若い従業員含め4人体制。90%以上が直需の形態で、1人当たりのレバレートは1万円前後と高い。高い工賃レベルを維持している秘訣があった。
現場は亀山氏含め3名。こなしている仕事量はその倍以上の生産性を発揮する。20数年前、周囲をあきれさせながらも、銀行借入れで1,000万円以上もする4軸アライメントを導入。60-70万円台の簡便なものは見向きもしなかった。その理由もいたってシンプル。「高速道路網ができ、事故の形態も大きく変化してくる。ボディを正確に修正するニーズが強まる」との判断。先読みが当たり5年間で借金は返済することができた。
BP工場では全国でトップクラスの導入で4軸アライメントは意外な効果を見せる。顧客が作業を見て、技術の信頼性を認知したばかりでなく、通りがかりの人まで注目し、集客のひとつのツールとなる。
生産性の秘密は設備だけではない。同社では鈑金と塗装の区分けはない。分解から車体整備まで全員が1人でできる多能工体制。このため鈑金から塗装へのシフトで滞留時間が生じることもない。仕事は通常夕方6時で終了。繁忙期でもほとんど残業はない。それでも納期はきっちり守る。事故車のすべてが個人プレイで修理されるので、段取りが重要となる。しかも多能工化することは難しいことではないと亀山社長は言い切る。
「初めから全部をおまえにまかせるとの前提で仕事を覚えてもらう。バンパーなどやさしい部分から少しずつ難易度を上げてマスターさせれば、5年間くらいで全部こなせるようになる」。
顧客囲い込みはエンドレス。今では紹介や口コミから入庫。タクシー会社など会社関係からの入庫が30%、70%は一般顧客。フロントをまかされた内助の功もあって、顧客の密着度は抜群。「人との関係から仕事が生まれる。ゴルフで仲間づくりはできない。一緒に食事し、風呂に入り、話すことが大事」という。それには自分の趣味でもある釣ツアーは最適。人間の温もりがなによりも好きなようだ。
直需率98%、輸入車オーナーに訴求 伊倉鈑金塗装工業(東京)
目黒通りと山手通りの交差点から少し路地を入った住宅街の一角にある伊倉鈑金塗装工業(本社・東京都目黒区)は直需率98%と脅威の数字を誇る。
同社の創業は昭和47年。現在33歳の伊倉氏が社長に就いたのは21歳のとき。創業社長だった父親が死去したことから当時大学生だった伊倉氏が2代目として会社を引き継いだ。
ちょうどその頃、伊倉氏はインターネットに出会う。当時は「ウィンドウズ95」が発売されて間もない頃。自社の存在を不特定多数に発信できるインターネットに可能性を見出し、1997年に自社ホームページを開設。以来、一般消費者からの受注を増やしていくことになる。現在、月平均入庫量は約50台。保管用として工場近隣に借りている16台の保管スペースも常時車であふれた状況となっている。
直需率98%というこの高い数字を確保している背景には、徹底したホームページのつくり込みとオリジナリティにあふれるサービス体制にある。
同社のホームページにアクセスすると、落ち着いた見やすいページレイアウトに「鈑金修理・部品交換・塗装」「保険修理」「無料サービス」「各種コーティング」「ディティリング」「オールペン・レストア」「中古車・廃車・事故車の買取」「その他サービス」などの業務内容を目にする。更に塗装に関するメニューを開くと"納得""安心""満足"のコピーの下に仕事に対する同社の考え方や各サービスにおける技術的な説明など分かりやすく掲載されている。
特にサイト全体の特徴的な点として、自社の宣伝に固執していないことがある。「最近こそ売り込み色が強くなっている」と話すが「一般のお客さんに鈑金塗装に詳しい方は少ない。まずは鈑金塗装のイロハから始め、工場選びや修理工程の内容に至るまでお客さんに対して鈑金塗装業者選びのノウハウを伝えることに力を入れてきた」ことで訪問者からの信頼を勝ち得ている。更に別サイトとして立ち上げた社長ブログが伊倉氏自身の思いを伝えるツールとして、相乗効果を働かせている。
ただホームページによる受注といっても不特定多数の顧客をターゲットにしているわけでない。同社が狙うのは輸入車需要。目黒という立地から近隣に輸入車オーナーの存在が多いという条件はあるが「車に対する愛着度が高く、専門業者としての強みが生かせる」というのがその理由。現在入庫の7割は輸入車で占めており、技術対応力を含めこだわりの強い輸入車オーナーへの訴求度を高めることで、安定した入庫量と採算性確保を両立させている。
そのため集客の要であるインターネット検索の上位を確保するためにオーバチュア(キーワード広告システム)を利用しており、ピンポイントで需要をつかむためのキーワード設定にも工夫を凝らしている。
また実際の業務内容にも独自のサービスを盛り込む。同社は損保会社に代わって示談交渉を行う代理業務を行う一方、保険修理特典として、車両保険加入の有無に応じて保険修理適用箇所以外の鈑金修理塗装やポリマーコーテイングのサービス、修理金額に応じたキャッシュバック、輸入車による代車対応など独自サービスで差別化を図っている。特に輸入車の代車サービスは、「わ」ナンバーを取得したことから保険適用を実現。最近ではレンタカー事業の進出も始めている。
その他「カートリートメント」と呼ぶボディ全体の塗装を磨き上げ、ポリマー施工、ルームクリーニング(要希望)を組み合わせた独自サービスを開発。「無理に塗装する必要はない。下地作りで培った鈑金塗装業の強みが生かせる」として、小傷や小さなヘコミなどは磨き工程だけできれいに復元できることから顧客の仕上がり希望、予算に応じた体制を整えた。
同社が今後見据えているのは、インターネットを利用した集客ノウハウの横展開。既にボディショップを集めたポータルサイトがいくつか存在しているが「末端の鈑金塗装業者の本来の姿が伝わっていない」と仲間作りに着手する。ボディショップの新たな方向性を導き出そうとしている。
直需率100%達成、増え続ける顧客 英貴自動車(兵庫)
現在、月間の入庫台数は鈑金塗装120台、車検50-60台、一般整備100台、中古車販売20台、洗車サービス500台の水準にあり、多忙を極める。しかもそのすべてが直需。DRP、自社の保険代理店事業、20年前から実践してきた「地域密着戦略」(川口善玄会長)で築いてきた一般カーオーナーからの直需で仕事のすべてを占める。
昭和40年に川口会長が個人創業、20年前には関西で初めてショールームを備えたBP工場を完成させた。以来、「直需中心の車体整備を事業の中核にしたい」との思いで長期戦略を敷いてきた。
そのひとつが保険事業。現在、国内外10社の損保会社の代理店となっており、現状5,000顧客を抱える。この5,000台はほぼ同社にとっての固定ユーザーだ。
更に地域密着戦略による直需獲得の柱に成長しつつあるのが、3年前からスタートさせた「VIP会員」制度。年会費(排気量クラスにより1万500円から2万6,250円)を支払うことにより、年3回のポリマー加工(英貴コーティング)と無料点検、予約をすれば1年間何度でも利用できる手洗い無料洗車(室内清掃+タイヤワックス含む)が特典としてついてくる。オプションでカーレスキューや3,000kmごとのオイル交換も格安で用意しており、一般のカーオーナーにとっては車にかかる手間からほぼ開放される。
しかも通常1回で2-3万円かかるポリマー加工が年会費のみで4カ月ごとに受けられ、更に手洗い洗車が無料で利用できるとあってかなりリーズナブル。このサービスは口コミを主体に広がり、今やVIP会員登録は700台を超え、更に拡大中だ。
もちろんこれらのカーユーザーはすべて同社の固定客となる。少なくとも4カ月に1度はコミュニケーションが必然的に発生し、顧客にとって同社の存在がとても身近になる。車検時はもちろん、事故などで車体整備が必要になったときも当然のごとく同社に依頼がくる。
加えて、固定客を更に増殖させているのが同社の「品質」だ。この道一筋に40年以上、「他社が直せないキズでも直してみせる」といった技術的なバックボーンが顧客の信頼を生み、「DRPでお客様が直接当社を指定し、仕事が舞い込んでくる」ケースも頻繁にあるという。
「車体整備、車検、一般整備で預かった車はすべてポリマー加工を施しピカピカにしてお返しする。ここまでしてくれるのかと感動され、当社と1回つながったお客様はほぼ固定客になる」と自信を示す。
この顧客満足度を支えるのが同社の31名のスタッフだ。鈑金、塗装、車検整備といった現場部門は新卒から採用し20歳代前半の若さで主任を任され、30歳になれば部長級。職務充実でモチベーションを高める。また、フロント、マーケティング、経理、車販などすべての部門において毎月投票でMVPを選出、会長から金一封が贈られる。若手が主体的に仕事に取り組んでいる姿が透けて見え、非常に活力がある。
その一方で、シビアな側面も併せ持つ。同社では各事業部に月間の粗利ベースで目標管理をさせており、他の多くのBPに比べ営業や資材管理への感度が高い。月末近くになると各事業部では入庫獲得などの電話営業に追われることもあるが、数千台という層の厚い固定顧客層が控えており心強い。
「我々の技術でお客様に感動を与える」といった川口イズムが各社員に共有され、品質、納期、価格対応、カーオーナーが喜ぶ各種サービスの創出、顧客満足の向上につながり、直需での事業基盤がますます強化されている。
地元との接点作りに注力 越野ボディー(東京)
越野ボディーは東京都八王子市に拠点を構え、鈑金塗装だけでなく新車・中古車販売、車検整備、コーティングとトータルカーサービスを展開し、地元に密着したサービスを続けている。
入庫台数は鈑金塗装だけで月に20台ほど。そのほとんどが直需で、その他が保険会社からの紹介。以前はカーディーラーや整備工場からの下請業務も行っていたが、現在はない。「下請けでは見積価格が合わない。フロント業務(立会い)をこちらでできれば適正な見積もりを作れるが、そうでない場合では適正な修理はむずかしい」(越野眞治社長)との考えからだ。
設備は塗装ブース1基、大型リフト、修正機など鈑金塗装設備はすべて完備。塗料は高級塗料のスタンドックスを使用しており、同社はスタンドックスの認定工場のマイスターBPを取得している。
工場は山のふもとに位置するが、そこからすぐそばの都道沿いに展示場がある。ログハウス風のショップとウッドデッキの談話スペースは親しみ感とともに人目を引く存在感がある。
これはすべて越野社長を中心に従業員のお手製だ。知り合いの材木屋から廃材などを手に入れ、加工設備も購入し自ら約1年の製作期間を経て2年前に完成した。
展示場では2-3カ月に1度の割合でイベントを開催。自動車メーカーとタイアップした新車販売キャンペーンや特価オイル交換などの他、契約者にはオーストラリアの無垢檜で製作したベンチをプレゼントするなど地元と密着したサービス展開に取り組んでいる。展示場のウッドデッキ談話スペースには地元の人が立ち寄りちょっとした憩いの場となっているという。こうした地元密着の取り組みを重要視する。
また、八王子駅近くにアンテナショップ「KBショップ八王子」を構えており、生活者との接点作りの役割を果たしている。ここでは同社が地区代理店となっているガラスコーティング「アークバリア21」の携帯電話へのコーティングなどを行っている。作業にかかる10分の間に自動車サービスを紹介するなどして集客につなげている。
越野社長は展示会にしてもアンテナショップにしても一般生活者(カーオーナー)との接点をいかに作るかを常に考えている。いかに自動車サービスにつなげられるかに注力するのは、補修技術に自信があるからこそ。適正な価格で的確な補修を提供できるという自負が越野社長からうかがえる。
「当社は事故車を見たときの事故解析力が違う。例えば事故をしたときのブレーキの入れ方1つで傷の高さや角度などが微妙に違ってくる。ただ修理すれば良いというわけではない。保険との絡みもあるので、修理できるのに部品交換して売上を上げるなんてことはしないし、本来かかった金額を見積もる。その際、きちんと理論を持った自分の規準を説明すれば、保険会社も理解を示してくれるし信頼関係も生まれる。その方針がフロントから工場へと一貫しているのが当社の強み」と越野社長は自信を持つ。
直需で一番重要なのは口コミと越野社長は実感する。きちんと対応することで信頼してもらえ、そこから紹介も増えていく。現在、同社では約4,500人分の顧客データを持ち、それらの顧客に展示会や車検、整備、部品交換を促す連絡をメールなどで行っている。最近では鈑金塗装の受注は減ってきており、逆に車検、点検、コーティングが増えているという。
今後ますます自動車に関するトータルサービスが求められてくる中で、越野社長は「今までやってきたことは間違っていないと実感しているので、もっと多くの方により理解してもらえるようにアピールしていきたい」と述べる。
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