Web特集
2009年10月28日
粉体塗料・塗装特集2009 世界同時不況が直撃、大幅な需要減 低温硬化、超小口対応で需要喚起
粉体塗料マーケットの成長に大きく寄与してきたのが、鋼製家具メーカーの粉体塗装化の流れ。その鋼製家具分野でも需要は低迷しており粉体塗料出荷の減少に大きく影響している。それでも回復傾向が見られており「80-85%まで戻っている」(塗料メーカー)との見方。その他、自動車部品や家電製品向けでもここにきて底を脱した感があるとの見方が強い。
一方、落ち込みが激しく回復が遅れているのが建設機械分野。数年前から一部の部材で粉体塗装が採用され始めた直後だけに業界にとっては痛手となっている。
更に状況が悪いのが工作機械分野で、「全く戻る気配がない。非常に大きな打撃」と底が見えない。日本工作機械工業会によると、2009年1-8月の受注総額は2,142億5,000万円にとどまり前年同期比では約80%の減少と回復の兆しは見えていない。「工作機械が復活して初めて本当の景気回復」との声も聞かれ、そういう意味でも今年度中は厳しい市況は続きそうだ。
強まる低温硬化ニーズ
こうした低迷する需要に対して塗料メーカーでは低温硬化タイプの改良に注力する。低温硬化による省エネ効果や既存(溶剤塗装用)乾燥炉が使用できるなどをアピールし、溶剤からの切り替えを進めている。
上市されている通常のポリエステル粉体塗料(ウレタン硬化系)の焼付温度は180×20分。現在の低温タイプはHAAタイプ硬化系のポリエステル粉体塗料で160℃が主流になりつつある。一部メーカーでは150℃で硬化可能なものを製品化している。また、エポキシ/ポリエステルのハイブリッドタイプでは130℃-140℃、エポキシ粉体塗料では110℃まで低温化が進むなど各メーカーの開発は活発化している。
通常ポリエステル粉体塗料の硬化剤は国内ではウレタン硬化系が主流となっているが、ブロック剤を使用しているため低温化しにくい。更にブロック剤のε-カプロラクタム自体がPRTR指定物質であるとともにヤニが発生し黄変してしまうといった問題も指摘されていた。
そうした問題を解消できるのがHAAタイプの硬化系で、低温硬化や環境対応ニーズに対応して存在感を強めている。ただ、HAAタイプは低グロスが困難、耐食性に劣るといった評価もあるなど製品化に向けてはメーカーによって温度差がみられる。いずれにしても塗料メーカーとしては塗料設計での開発を継続していく方向性だ。
こうした低温硬化への対応をはじめ、薄膜化、メタリック(ボンディング及びドライブレンド)などの開発・改良を塗料メーカーは続けているが、「粉体塗料の開発については成熟している」(塗料メーカー)との見方が広まっている。ここにきて市場活性化につながる新たな動きが求められている。
超小口対応ビジネスの可能性
そうした潜在需要を顕在化させる突破口のひとつとして一部メーカーで取り組んでいるのが1袋(15kg)から注文を受ける超小口対応だ。フレキシブルな供給体制を組み細分化されたユーザーに対して汎用的な取り込みを期待する。超小口対応の先行メーカーとして、久保孝ペイントや三王が既にマーケット対応しており、今年夏からは新たにナトコも受注を開始した。
久保孝ペイントは常備在庫として、ソリッド171色に特殊模様仕上げ21色を加えた計192色を揃えたカラーカードシステムで小ロット即納体制として展開している。カラーカードの色は基本的にはユーザーの使用頻度の高いものを揃えており、市場ニーズの高い色域を取り込むようにしている。
また、販売店でありながらメーカーとして粉体塗料の製造販売を展開しているのが三王。小口粉体塗料の製造ラインを3ライン備えてオーダーカラーをオンデマンド供給している。
同社が粉体塗料の製造を開始したのは6年ほど前、それまで販売店として小口での需要の高まりを感じつつも安定して供給できないもどかしさを感じていたという。
「顧客に対して、『小ロットだから販売できません』とするのではなく、どうすれば良いかを考えた。そうすると我々でやらざるを得ないという結論に至った」(高橋専務)。販売店でありながら塗料メーカーとして粉体塗料の製造販売に踏み切った。
現在では販売店としての細かなフォロー体制で順調に成長しており、ラインの増設計画を検討中だ。
また、新たに超小口対応をスタートさせたナトコは、小口専用の生産ライン2ラインを新設し、常備色を持たずに要望色を短納期で供給していく方向を打ち出している。
対応樹脂系は同社の持つポリエステル(ウレタン硬化系・HAAタイプ)、ハイブリッド、メタリック、模様タイプなどすべての製品に対応している。
スタート当初はユーザー限定で受注していたが、この程限定という形をやめてオープン展開に切り換え、販売店へのアナウンスも開始した。色数の多いユーザーに対して紹介するとともに、販売店流通での汎用的な広がりに期待する。
「ユーザーさんにとってはスポット色にも対応できるので、粉体化一本を提案していく。販売店さんには小口対応を自社の武器として活用していただきたい」(担当者)。
一方、粉体塗料のマーケットリーダーである日本ペイントは、超小口対応に関心を示すも事業展開には慎重な姿勢。同社では粉体調色システムを開発しており、大手ユーザー数社で採用されている。このシステムは専用CCMで算出された配合通りに、平均粒子径が18-21μmという超微粒子形状の原色を混合することで、簡単に調色することが可能となる。
これにより最低ロット量や納期といった一般的な粉体塗料のデメリットが解消され、「色数が多い場合やスポットオーダーが来るような現場ではその効果が高くなっている」(担当者)。
同社では将来的なビジネスとして、この調色システムを汎用的に展開していくことも視野に入れている。実際に問い合わせもきているが姿勢は慎重だ。
「例えば販売店でこのシステムを活用して15㎏といった少量で粉体塗料を販売するとして、一体どのくらいの需要が見込めるのか。また、当社としては原色を販売する形になるが、販売単価もある程度の量が出ないと割高になってしまうのでそれではユーザーとの思惑が一致しなくなってしまう」恐れがある。
一方、店頭で簡単に調色ができるというメリットはあるが、その反対に販売店は原色を在庫として持つ必要があり、作業の手間もかかってくる。こうした負担を考慮して採算に乗せなくてならず容易にはいかない。
そのため、同社としては「あくまでいくつかあるビジネスのひとつとして考えている」のみで具体的なビジネスモデルは描いていないのが現状だ。
また、小ロット対応専用の製造ラインを新設することについても、「ビジネスアイテムのひとつとしてはあるが、事業としてやるべきかどうか定まっていない」と具体的な動き出しは未定だ。
現在、色数の多いユーザー現場ではメイン色を粉体塗装で行い、特別色は別ラインで上塗りに溶剤塗料で再塗装といった形で対応しているケースが見られる。小ロット対応することで特別色も粉体塗装で行える。そうした新たな需要の取り込みにつながる可能性も出てくる。
既存需要に対応するとともに潜在需要を掘り起こし確保することが求められている中で、超小口対応が潜在需要を喚起できるのか注目される。
また、一部では塗装会社自らが差別化に向けて独自展開を開始している。カドワキカラーワークスはオリジナルの粉体塗装色見本帳「GLOBE COLORS」でカラー戦略を志向。"豊富なカラーバリエーション""試作品などの小口対応"といった独自戦略で受注に結びつけている。
邦和工業では混合分散機、溶融混錬機、粉砕機などの粉体製造装置を導入し粉体塗料の製造をスタートさせた。今のところは技術供与を受けている三王のOEM生産がメインだが、一部では自社の塗装製品にも使用している。試作品の対応も行っており、今後はユーザーの新製品開発にも携わっていき、新ビジネスにつなげたい意向。
設備投資抑制から各社売上高半減
金融危機に伴う世界同時不況は国内外の実体経済を直撃、自動車産業を中心に大幅な需要減退となった。塗装設備もその影響を受け、今年前半の売上高は前年比50-60%と厳しい環境にある。
各設備機器メーカーはメンテナンス、レトロフィット、消耗部品の販売など従来ベースとなっている売上で凌いでいるのが実態だ。「生産キャパシティに余剰感がある中で、本当にメリットがないと僅かな金額でも購入する機運にない」という。
ここ数年、機器メーカーは低エアー量のソフトなスプレーパターンを形成させる方向で塗着効率の向上、付き回り性及び入り込み性を高める方向でガン及びポンプの開発を進めてきた。レトロフィットの提案でも従来機種から新タイプのガンシステムに置き換えることで塗料使用量が10-30%削減可能と謳っている。
「ユーザーの稼働率が下がっている現状で、原価低減、品質向上、環境対応と優先順位がコストの部分に集中している。どれだけ原価低減に寄与するかが判断基準」とユーザーも価格競争の中で生き残りに必死。
昨年度(2008年度)のガンの国内出荷数量は前年比34%減の1,665ガンであった。オートガンが1,174ガン、ハンドガンが491ガン。
各社のマーケットシェアはノードソンが28.2%と2年連続でトップ。次いで日本パーカライジング・アイオニクスが25.4%、ランズバーグ・インダストリー・ゲマ事業部が19.7%、旭サナックが14.7%、ホソカワミクロンワグナーが10.8%、その他が1.2%と推計される。
ガンとブースの塗装機器周りの売上高は全体で24億円程度。今年はそれ以上に厳しいことが予想される。「全体的に製造業は前年比70%まで戻りつつあるというものの、一部の業界を除き荷動きは鈍い」と大手機器メーカー。また「設備投資の回復は早くて来年後半、この1年は我慢」というように塗装機器は辛抱の秋を迎えている。
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