Web特集
2009年10月15日
シリーズ: 揺れるライン塗装
粉体2ブースでフレキシブルに対応 回収・再利用でトータルコストダウン スターメタル(粉体塗料・塗装特集2009から)
景気の先行指標である工作機械業界の受注回復が遅れている。今年8月の受注額は前年同月比71.3%ダウンの321億円であった。最悪期は脱しつつあるものの依然として受注水準は低い。特に国内は受注の60%を占める自動車関連が余剰能力を抱え設備投資を抑制していることが大きく影響している。
スターメタルは工作機械メーカーであるスター精密のグループ会社として自動車、IT関連向けのNC旋盤の外装部の板金加工及び精密機械製造をメインに手掛けている。同社は今年の3月に旧社名のオーエスメタルが機械ユニットの組み立て会社である東新精機を吸収合併して現・スターメタルと社名変更をしたばかり。
「これまでオーエスメタルが手掛けてきた板金製造は設計、切断、プレス加工、溶接、塗装を一貫生産で行う。また東新精機の持つ機械製造の鋳物や機械部品と電気配線を伴う融合製品の製作を統合することでユーザーニーズにフレキシブルに対応できるようになった」と竹内正則工場長は説明する。
昨秋以降の急激な需要減にあって同社の工作機械の部品受注量は前年比30‐40%のレベルにある。「景気の底は打ったようだ。一時期の最悪な状況は脱したと思う」と竹内工場長。
回収と吹き捨てで効率生産
今年の合併に先立つ1年前の2008年3月に旧オーエスメタルの塗装工場が刷新された。板金工場の拡張と合わせ設備投資で約1億円をかけて粉体塗装ラインを立ち上げた。「生産能力の増強と環境問題への対応を目的に粉体塗装システムを採用した。当時は旺盛な需要に対処するとともに品質の向上、納期の短縮、更に作業環境の改善を含め溶剤系塗装からの切り替えを図った」と板金製造部部長代理の前島正義氏は経緯を説明する。
新設の粉体塗装設備はランズバーグインダストリー・ゲマ製を採用。ブースは国内開発の清掃性を考慮したポリカーボネート素材のプラスチックブース(ダイヤモンドブース)2基を直列に配置し、回収・再利用と吹き捨てに対応した。
回収ブースは1レシプロ3ガンを対面に設置し、メイン色であるライトグレーをカートリッジ式で回収する仕組みを選択。一方の吹き捨てブースはブルー、グレー、ダークグレーの3色を手吹き塗装で行っている。
「メイン色のライトグレーが全色の70%を占めることから1色を回収・再利用し、他の3色は吹き捨てにすることで生産性の向上を狙った。現状の回収・再利用ブースの塗料使用効率は90%と高いレベルにある」と前島氏は胸を張る。
粉体塗装機器の供給システムは標準装備のパウダーセンターにOptiコントローラー、Optiガンを装備したOptiコントロールシステム。またハンドガンは市場評価の高いOptiFlex。
現状の塗装条件は、オートガン1ガン当たりの吐出量100g/min、ラインスピード1m/minに設定。被塗物の最大寸法は幅1200㎜×高さ1600㎜×長さ2500㎜まで対応可能。なお粉体塗装ラインは(塗装ブースと焼付乾燥炉合わせて)全長120m。
塗装の平均膜厚は80μmを狙っている。「膜厚によって模様の大きさが変わるため当初の模様を得るためと形状によって膜厚がばらつくので平均膜厚を80μmにしている」(前島氏)という。ちなみに粉体塗料はポリエステルタイプで日本ペイント製を使用。
回収再利用で原価低減を達成
塗装ブースをアウターブースで覆うことでゴミ・ブツの持込を抑えるとともにアウターブース内を温湿度管理することで品質を安定させている。「粉体塗装によって作業改善が図られ環境改善が進んだ。また外装部品の塗装はハンマートン仕上げであるが、従来の溶剤系塗装では熟練を要したが今回は素人でも容易に塗装ができることから不良率の低減に寄与している」(前島氏)と粉体塗装のメリットを強調する。
更に粉体塗装導入でトータルコストダウンを可能にした。塗料のイニシャルコストは上がるもののメイン色の回収・再利用によって塗料代はほぼ同等となる。それ以上に廃棄物の大幅な低減がコストダウンの大きな要因。
また「生産量は従来の1.5倍を想定して設備レイアウトしたが、昨年の最盛期には月100台強をこなした」という。受注量が増えれば増えるほど量産効果が利き、かつ小ロットにも対応できるフレキシブルな設備仕様となっている。実際、同社の扱う塗装部品点数は1台当たり(NC旋盤)100アイテム以上に及ぶ。これを1台ごとにセットにして塗装を行う。そして塗装品、板金モノ、機械ユニットのカテゴリーで数セット単位にしてスター精密に納入しており、納期のタイムリー性が図られている。
今回、粉体塗装工場は新設したが、前処理ラインは旧来のものを利用しており、前処理ラインと粉体塗装ラインはセパレートな使い方をしている。「一品モノや規格サイズに合わない大きな被塗物は従来の溶剤塗装に使用していた手吹きブースとバッチ式の乾燥炉を利用しており、「バッチ式の焼付乾燥炉は2800×2880×5800(㎜)までの寸法に対応できるので重宝している」ということだ。
前処理ラインはアルカリ脱脂‐水洗‐化成処理(リン酸亜鉛処理)‐水洗‐水洗‐水切り乾燥の工程。処理工程はディップ式を採用。水切り乾燥時間を120℃×10分に設定してあることから約10m3の浴槽に10分タクトで移行していく仕組み。化成処理も10分の浸漬に合わせて濃度、温度管理を行っているという。
被塗物の形状によっては袋状のものもあり、水の溜りや空気が残ってしまうケースがある。その際被塗物の架台を遥動させるなどのさまざまな工夫を凝らすとともに、常に細心の注意を怠らない工程管理が行き届いている。
同社の塗装部門は社内外注のスタイルをとっている。塗装の専門性を考慮すると、同社のような社内外注もひとつの選択肢ではあると思う。「品質・管理といった点では当社がきちんと行い、協力してユーザー満足度を高める方向にある」と説明する。
新規事業の育成
同社は自社の技術を宣伝するためにさまざまな展示会に出展するなど機会あるごとに自社をアピールしている。
工作機械の外装板金にとどまらず、電装複合製品、駐車場案内板、医療用機器の回収ボックスの台座及びノベルティ関連製品とバラエティ豊かな商品開発を行っている。
「開発した商品を展示し、当社の一貫生産ラインによる品質、コスト、納期などユーザーニーズに対応した商品供給が行えることを訴えている」と竹内工場長。現在の工作機械の部品製造に次ぐ事業の育成のために商品開発にも力を注ぐ。
特に今年3月の合併効果で両社の持つ技術ノウハウを生かせれば相乗効果も期待できる。設計からレーザー加工、曲げ、溶接組立、塗装と一貫した管理の下にモノ作りが行えるところが同社の強み。
塗装においてもオーダーメイドの塗装依頼があれば対応していく。「量産から多品種小ロット品まで自社の設備が利用できるものであれば受注していきたい」と積極的だ。 (粉体塗料・塗装特集2009より)
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