Web特集
2010年04月12日
シリーズ: 揺れるライン塗装
揺れるライン塗装№156 西大寺塗装工業所 美肌品質のあくなき追求 設備更新直後、需要半減の危機克服へ
岡山県内には約50社のコーターが存在するが、西大寺塗装工業所のような専業は少なく、メッキ処理などを複合した工場が多い。市場の特色として三菱自動車関連の集積が高く、ここからの仕事が中核を占め、同社も金融危機以前は自動車関連が仕事量の約50%を占めていた。
代表取締役の岸彰徳氏は2代目。塗料メーカー、塗料販売店でのキャリアを有し、同氏がリターンして5カ月ほどで父親である創業者が亡くなってしまう。2代目とはいえ事実上ゼロからの出発に近く、「父親の薫陶を受けることはなかった」と語る。
塗装技術へのこだわりには独自のものがある。環境対応から粉体塗装の導入を計画する中で、粉体塗料を徹底的にチェック。20年前のことだ。評価のポイントは外観品質であった。
「いろいろな粉体塗料をチェックしてみたが、溶剤系を上回る外観品質が得られないことが分かった。それなら溶剤系で走る方が良いと決めた」
外観品質への徹底したこだわりは塗装技術の証と考えているためだ。コーターである以上、仕事を選べるわけではない。どんな被塗物に対しても高いパフォーマンスを発揮できる技術が生命線。そのためユーザーとは品質に関して妥協ない打ち合わせをするようにしている。決して受け身で仕事をしないのが岸氏のモットーといえる。
「よくユーザーから"お前のところはコストが高い"と言われる。しかし顧客が求めるスペックの品質を確保するために我々がどのような努力や工夫をするかを伝えることで本当の品質の作りこみができる」という。
こうした企業姿勢がユーザーに伝わり、同社はほぼ100%が持ち込み。金融危機前には広い駐車スペースに材料があふれ、車がとめられないほど。フル稼働に近い状態。西大寺塗装工業所に持ち込めば難しい仕事もこなしてくれるとの高い技術評価を誇っている。
リスクをチャンスに
設備の老朽化と増大する仕事量に対応するため、2006年から設備の新設計画を検討し始める。上塗りラインの能力アップと電着ラインの2本目の新設、また近い将来の計画として粉体塗装ラインの導入のための用地を手当てしていた。
計画に基づいて着手したのが2008年の5月で、5月の連休と8月の盆休みというつかの間の休止期間を利用して設備を更新。ラインを長期にわたり中断する余裕はなかった。
「上塗りラインの全面改造が第1弾。前処理と塗装ブースを新規にした他、可変式のレシプロを導入しました。塗装機メーカーの協力でなんとか休日を利用しての更新ができました」
ところが9月にリーマンショックが起こり、局面が一変する。当然のことながら電着ラインの新設は見送られ、粉体塗装ラインは設計図面の段階で中断。岸氏が「天国から地獄へ」と表現するように、2008年後半から2009年にかけて仕事量が激減する。ボトム時には仕事量が半減。派遣社員4人を1人に減らし、ワークシェアリングを実施する。午後3時に仕事を終了するような日が続く。
しかし昨年5月を底として、今年1‐3月までに60‐70%の水準にまで戻してきた。三菱関連の仕事が復調してきているためだ。自動車関連以外の建設資材も戻し気配にあるが、医療機器はまだ厳しい状況。新規ユーザーの開拓でしのぐ状況にある。
設備投資と不況が重なり経営的に楽ではないが、岸氏は「設備更新していなければもっと大変な状況になっていた」と言う。上塗りラインの更新による経済効果だけでなく、デフレに対応した品質の作り込みに不可欠な投資との判断のためだ。
「ユーザーのコスト管理レベルが大きく変化した。細かくコストチェックされるだけではない。コストに含まれるべき設備償却費などが考慮されることはなくなった。目先のコストで計算されるので、我々の方が今まで以上に生産の工夫をしていかないと利益が出ない。ということは技術能力をアップしていく以外ない。そのために今回の設備投資はリスクとは言えない。むしろチャンスだったと考えている」
美肌品質を更に向上
新設の自動静電塗装ラインはオーバーヘッドトロリーコンベアー駆動で全長は260m。プロセスは脱脂皮膜‐水洗‐水洗‐水洗‐市水‐エアブロー‐水切乾燥‐自動静電‐補正‐セッティング‐乾燥‐検査‐梱包。
前処理や塗装ブースをすべてステンレスとして、耐久性向上とメンテナンスコストの削減を実現。前処理に関しては脱脂・皮膜というフルスペックをワンコート皮膜で処理するシステムに切り替えた。これにより排水量の減少とボイラー熱源の省エネ化を実現。
塗装ブースはウォーターカーテンブースを導入、ブースピットの水量を大幅に抑制。ブース内の風速循環の安定により塗料飛散の防止やメンテナンスの削減につなげている。
塗装ラインに関しては1997年にマイクロベル塗装を導入している同社だが、スーパーマイクロベル4ガン(ランズマックス)、デュアル静電4ガン(ランズマックス)に加え補正用のREA静電ガン3機、メタリック専用に同2機を配備。
スーパーマイクロベル導入のメリットとして「当社がこだわる外観品質のレベルアップができ、仕上がりの美肌感がとてもよくなった」と指摘。しかも可変全自動レシプロによる安定した塗装品質を更に高めた。「自動設定で形状認識させ、可変ストロークを設定。特に低ストロークに安定感があり不良率が減少、直行率を高めることができた」
スペックの大半は2コート1ベーク。使用塗料はハイブリッドタイプのメラミン樹脂塗料とアクリル樹脂塗料、一部フッ素樹脂塗料でカバー。品質的にワンコート仕上げも増えているため、塗料に関しては塗料メーカー(神東塗料、大日本塗料)と協議し、配合の工夫をしている。目指す水準は25‐30μmの膜厚でタレやワキが起きないレベル。
ユーザーからの支給塗料は一切なく、指定色についても自社で調整する徹底ぶり。塗料と設備の両面で自社ベストを追求するスタイル。このスタイルから独自の塗りやすさが生まれる。
同社の品質の高さは粉体塗装の屋外物件のテストで実証されている。同社のハイソリッドタイプのメラミンアクリル樹脂塗料の塗膜が耐候性で粉体塗膜を上回る結果が出て、ユーザーなど関係者は驚くといったケース。これについて「塗料そのものの耐候性は粉体塗料が上回っていることは事実。しかし塗装技術を加味すればメラミン系でも粉体に匹敵する耐候性を付与することは可能」との考えを示す。
今回更新の対象とならなかった電着塗装ラインにも独自の工夫が目立つ。溶液管理の半自動化で自動的にカチオン電着塗料が補給される。また小さな工夫だが、通電性を阻害しないハンガーの開発など、現場的発想の知恵が随所に生かされている。
コンパクトな電着塗装ラインの割に重量物・大物の被塗物の塗装が可能。ブロックキャリアー方式を導入しているため、省スペースでありながらフレキシブルな適用性がある。しかもできるだけフラットな美観仕上がり感を得るため、塗料管理とともに4段後水洗を実施。エッジに関してはレオロジー性で後添加して対応。
「ライン塗装のプロとして、厳しい市場環境に対しては技術・品質で応えていく努力をし、ユーザーの要求にこれからも応えていきたい」
<塗装設備導入の動き>
1960 西大寺塗装工業所創立
1969 (有)西大寺塗装工業所設立
1972 自動焼付ライン操業(160m、2ブース)
1985 カチオン電着塗装ライン操業(135m、トロリーコンベア)、排水処理設備稼働
1990 自動焼付ライン操業(280m、3ブース)
1997 カチオン電着塗装ライン新設・操業(ブロックキャリアー方式、フルディップ、電着塗料の鉛フリー採用)、マイクロベル塗装機の導入
2008 自動塗装ラインの全面改造(前処理/フルステンレス・ワンコート処理、塗装ブース/フルステンレス2ブース・省エネタイプ、自動レシプロ/可変式2レシプロ×2ベル・2REA)
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