Web特集
2010年05月17日
シリーズ: 塗るということの規範
連載 塗るということの規範(1) 中嶋徹
「塗料ってなに...?」について、いろんな語り口を参考にしながら「塗料」のパースペクティブ(展望)を見ることにします。
「塗」という漢字は「」と「土」に解して、「涂」(と)が「塗」の音を表わします。「涂」はもともと「濁った水」あるいは「川」を表意していましたが、「土」を加えることで「泥」の意味をはっきりさせて、「川」を表意する「道」と区別して「途」(みち)とも通用します。
「塗」の漢字の意味は、(1)どろ(2)ぬる(3)まみれる(4)けがす(5)みち―となります。「ぬる」の意味から、「どろ」が転じて壁や色を塗るということを示しています。
「料」の漢字の意味は、(1)はかる(2)おしはかる(推量)「思料」(3)おさめる、はからう(4)しろ、たね、もとで「材料」(5)てあて、あてがい「給料」(6)かいば「飼料」など多様な意味を表わします(角川書店:漢和中辞典)。
当然のことですが塗料は「ぬる」「たね」=「塗る種」ということです。「たね」の符丁は「ねた(ネタ)」です。塗装現場で塗料のことを「ネタ」と呼んでいるのは「種」のことです。「種」はもちろん植物の種子ですが、「材料」という意味に転じて「物事を行う手掛かり、拠りどころ、根拠」を指します。そのような意味で塗料という言葉を解き読んでいくと「塗るということの手掛かり、根拠」となるのが塗料ということになります。なぜ...?つまり「種」が撒かれて育まれて「花」が咲き、また「稔(みの)り」となるからです。塗るという行為も「種」を撒いて育むことに等しいのです。塗料は「種」であり、その「種」が孕んで育って「花」が咲くまでに、水をやり雑草を取り害虫の駆除を施し、咲かせる環境も作らないと見事に咲くことも実をつけることもありません。それでは「塗る種」はどんなきれいな「花」や豊かな「稔り」をもたらしてくれるのでしょうか。
インターネットの「フリー百科事典:ウィキペディア日本版」の塗料の記述です。
『塗料(塗料、英語:paintまたはcoating)とは、対象物を保護・美装、または、独自な機能を付与するために、その表面に塗り付ける材料のこと』
これは過去から流布されてきた塗料の三大機能論を踏襲したものです。「材料」(種)が咲かせるのは保護機能と美装機能と独自な機能の付与という三つの「花」です。
では同じ「ウィキペディア英語版」の記述を見てみます。
『Paint is any liquid,liquifiable,or mastic composition which after application to a substrate in a thin layer is converted to an opaque solid film.』(塗料は液体や液化されたものや柔軟な合成物で、薄い層にして基材に塗ると不透明の固い被膜に変換される)。
ここで記されているのは塗料の物性的な内容と塗膜形成についての説明になります。これは言わば「種」から「花」が咲くしくみを述べたもので、「固い被膜」の「花」が咲くと述べてはいますが、どんな「花」かということより、物性的な「種」(根拠)を説いたということになります。
(※執筆が2007年のため現在の状況、表現とは異なる場合がございます)
◇今号より中嶋徹氏による連載をスタートします。塗料の3大特性である"美観""機能""保護"という機能論から離れ、塗るということの普遍的原則(規範)について独自の考察を展開します。ぜひご期待ください。(編集部)
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