Web特集
2010年06月25日
シリーズ: 塗るということの規範
塗るということの規範(5) 中嶋徹
(前回の続き)アメリカから移入された「ドライ・ウォール工法」と呼ばれているものも、天井を含めた石膏ボードを用いた乾式壁の大壁工法です。日本でも石膏ボード下地の塗装仕上げや壁紙仕上げの下地処理は一般的に行われていますが「ドライ・ウォール工法」とは考え方も施工方法も異なります。
湿式工法とは、モルタル壁や土壁などのように現場で仕上げるときに、水などを使用する施工の方法を言います。これは古来より為(な)されてきた壁づくりの方法として伝統的な工法です。その意味で石膏ボードなどによる乾式工法は、近代的、工業的な工法と言うことができます。
しかし近年、建物の断熱方法の問題で湿式工法が見直されてきています。環境への負荷や建物の耐久性や室内汚染の問題も関わり、従来の内断熱工法ではなく湿式外断熱工法への取り組みが広がっています。
準じて仕上げ材においても乾式系のものと湿式系のものがあります。塗装や左官など現場で「塗るということ」を固有の行為として、施工の過程で水や溶剤を使用し、乾燥や硬化という自然的な時間を内在して仕上がるものを湿式の仕上げ材と呼んでいます。そして既に工場などで仕上がったものを現場で取り付けたり、貼り付けたりする壁紙や化粧合板などは乾式の仕上げ材と言います。
仕上げの方法的な意味から、壁紙(wallpaper)などについては「Wall
coverings」(ウォール・カヴァリングス)とアメリカなどの市場では呼ばれています。また壁紙については「Wall hangings」(ウォール・ハンギングス)とも言われています。
「貼るということ」によって壁を紙で覆うという意味で、方法的には「Covering」(覆うこと)を意味します。塗装や左官の湿式仕上げでは「Wall Finishing」(ウォール・フィニシング)と呼びます。「Finish」(フィニシュ)は「終わり」を意味する言葉ですが、過程(工程)という時間的な経過を経て、その「終わり=Finish=仕上がり」という言葉の変位があります。壁紙は既に製品としては工場で仕上がって現場でその状態の変位を見ることはありませんが、塗装や左官については「塗るということ」によって、乾燥や硬化という時間的な状態の変位を経て現場で仕上げていくことになります。
しかし塗装や左官においてもその仕上がりの状況あるいは結果については、「塗るということ」と「貼るということ」の方法こそ異なりますが、壁の表面を「覆う」(cover)ということでは意味は同じです。
「cover」という言葉には「覆う」「包む」「蓋をする」「隠す」などの意味がありますが、「...一面を覆う」という意味から「cover wall with wallpaper」(壁一面を壁紙で覆う)は‐「壁に壁紙を貼る」という意味になり、「cover wall with paint」は(壁一面をペイントで覆う)‐「壁にペイントを塗る」という意味になります。(つづく) ※執筆2007年
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