Web特集
2010年06月15日
シリーズ: 地域力
地域力(第2回) 伊勢屋テック(大阪府) "御用聞き"スタイルで活路開く
「面積を測って、仕様を組み、見積りする時代は終わった」と松室利幸社長は話す。創業1921(大正10)年の老舗塗装会社が目指す先は、昔ながらの"御用聞き"スタイルの建築総合施工会社だ。
79年前、画家志望の祖父・松室正次郎氏が東京から大阪に戻り、「いせや看板店」を開業した。当時、阪急電鉄の創業者・小林一三氏の目に留まり、宝塚歌劇団の舞台背景画を手掛けるなど、阪急電鉄との関係を深めていった。以後、阪急グループの持つ鉄道、百貨店、不動産の塗装を請負い、ピーク時は売上のほとんどが阪急関連で占めるほどになった。しかし、それらも時代の趨勢により徐々に減少していく。「メンテナンス会社の設立により競争入札が導入され、長年の付き合いというだけでは仕事量が確保できない時代になった」と松室社長は話す。
現在は阪急関連以外にも、ゼネコン、銀行、航空会社、ハウスメーカー、道路会社、住宅リフォーム、官公庁関連と幅広い取引先を有し、業務内容も塗装の他、増改築、マンション修繕、内装工事、インテリア、色彩・景観デザイン、サインデザイン、屋外広告、看板、イベント企画、会場設営、ディスプレイと多岐にわたる。
かつては塗装職人、大工を抱えていた時代もあったが、20年前から常用の職人はいない。工事に関しては、すべて協力業者によるアウトソーシングで行い、従業員15名の内11名が営業、現場監督、回収などの業務に従事している。
その経営スタイルの根底にあるのは、建築に関することなら何でも取り入れるという姿勢。「建築のコンビニ業態を目指したい」(松室社長)との言葉には、多角化による成長戦略というよりも、地域に長く根差していくための"必要な変化"との表現が当てはまる。「特化ではエリア拡大が必要になる。顧客のニーズに対応する多様性を有することで、地域の御用聞き存在になりたい」と老舗ならではの経営哲学がうかがえる。
子供ふれあいイベントを定着
とは言っても建築を取り巻く市場環境は厳しさを増すばかり。過当競争、単価の下落はとどまることを知らず、同社は打開を図るべく、更に一歩踏み込んだ需要開拓を図ろうとしている。
同社では8年前から毎年8月に「いせや夏祭り」と称した親子ふれあい木工教室を開催している。看板工事などで出た廃材を利用し、親子で工作を楽しんでもらおうというもの。昨年は親子連れ200名が集まる盛況ぶりを見せるなど、恒例の地域イベントとして定着している。
イベント開催に踏み切った背景には「住宅メンテナンスを取り込みたいと思っても、まず地域の方に認知されなければ仕事は取れない。これまでの企業顧客相手とは違い、手間も多く、時間も労力もかかるが、スタッフには今が正念場だから頑張れと言っている」と地域住民との関係づくりに新たな展開を見据えている。
イベントの効果は着実に成果に結びついている。昨年、イベント前に半径2圏内に撒いたチラシ3,000枚とイベント開催が奏功して、一気に10件の新規受注が決まった。「塗装会社があることは知っていたが、頼んでいいものか分からなかった」との施主の声からも、住民の意識に確かな変化が見られている。
3年前はわずかだった住宅メンテナンス部門は、売上高1億円にまで成長。更に現在では3億円を目標に掲げ、北摂地域を範囲とした広報紙への広告出稿を開始。また阪急宝塚線に沿って所有する恵まれた立地を生かし、看板広告を設置するなど、沿線住民への認知度アップを図っている。
松室社長(52歳)は41歳のときに3代目社長に就任した。創業80年を迎えた2001年には、伊勢屋塗装工業から伊勢屋テックに商号を変更。建築、内装、リフォームに加え、デザイン・企画部門と事業領域を拡大させる中で「塗装という名が付いていては塗装以外の仕事を依頼しにくい」という顧客からの意見に柔軟に対応した。商号変更は創業以来4回目。時代に対応するためには変化をいとわない老舗の強さがうかがえる。そのためには社員のレベルアップが不可欠と資格取得を推奨している。
◇会社概要:伊勢屋テック
本社:大阪府池田市石橋4‐13‐5、TEL072‐761‐1121、FAX072‐761‐1258。代表取締役・松室利幸氏。
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