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Web特集

2010年07月05日

シリーズ: 塗るということの規範

塗るということの規範(6) 中嶋徹

(前回の続き)「cover table with cloth」(食卓一面を布で覆う)とは、「食事の用意をする」という慣用句ともなります。「cover」には「一面に塗る」という意味が辞書に掲げられていますが、「覆う」という意味から派生する言葉の意味で言えば「塗るということ」であり「貼るということ」ことになります。その意味で壁紙だけでなく、塗料や左官材、化粧合板、タイルやシートなどを含めた壁装材と呼ばれている仕上げ材は、「Wall coverings」と言えます。


市場で壁装材と言えば、概ね乾式の内装仕上げ材の範囲を指し、特に壁紙に限定したものになっています。左官材や塗料は湿式ということで分類されていますが、乾式もしくは湿式という方法を除けば「Wall coverings」というカテゴリーが壁紙だけという市場の認識は改めなければなりません。塗装はその対象範囲が広く「Wall covering」ということで言えば建築塗装と呼ぶ領域がそれに該当することになります。


しかし建築の内装として自立した主張が塗装の側からなされていないのがこの国の現状です。1960年代以降、工業化住宅や乾式化工法が普及してほぼ半世紀、室内装飾という領域では壁紙が主役状態です。壁紙を含めた新建材による内装の乾式化の中で室内装飾あるいはインテリア・デザインに関わる問題が市場のトレンドになり、この国の市場で塗装がそのテーマに積極的に関わったスタンスはかつてありません。それが市場から塗装あるいは左官がセグメントされて、隔離状態になった理由と言えます。


近年、市場の多様化や嗜好動向の変化、環境問題的な反省そして塗料や塗装の側の内省から内装領域へのアプローチやアピールが行われるようになってきました。「色材」としての位相からカラー・デザインが語られるようになってきたのも、その流れの1つと言えます。しかし、端緒は外装の塗り替えでのアプローチであり、内装領域ではまだ足の踏み場をも示せない状況にあります。また克服できない領域への接近は、一方で挫折も生み出しています。


「色材」というアプローチによって塗料に「カラー」が求められる傾向は増えつつありますが、それが塗装によって「デザイン」にまで昇華されアピールされるまでには至っていません。「カラー」による「美観」という塗料の機能論を越えないからです。「デザイン」とは、塗料や塗装の使用価値や経済的価値を越えたところで語られる問題であり、「塗るということ」がいかに自由かつ固有のスタンスによって、アイデンティティーに充ちたオリジナリティーに溢れた「仕上げとしての塗装」を開示することができるかということです。


そして何よりも大切なのは、そのことを怠らずに持続してきたかという、私たち自身のスタンスなのです。私たちの挫折は、私たちが手をこまねいてきたツケの大きさと言うことができます。(つづく)

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