Web特集
2010年08月20日
流通特集2010 各社動向
原点からの巻き戻し 日本ペイント
日本ペイントはこれまで「パワーファクトリー」や「カラモニー」など汎用の流通を変えるコンセプトや事業を先行的に実施してきた。
「今後も、積極的に市場を創造していく考えに変わりはないが、更に市場構造や生活者ニーズの変化に合わせた事業の変革を実施していく必要があると考えている」(担当者)
打ち手の1つとして、今後はカラモニー事業を再構築していく。具体的には、原点に帰り、カラモニーの基本である、地域に密着し生活者の立場に立った提案、サービス提供を構築する。もちろん、生活者に対して施工の信頼性を高める努力を継続する。
「本来、ペイントは生活と共にある商材。日本の場合、ペイントの存在感が薄く、生活者から活用と魅力が見えない形になっていた。カラモニーはその課題を克服すべく新しい提案をしながら、生活を楽しくする情報を発信していく」(担当者)。
そのためにも、カラモニーショップでは情報のフィードバックによるサービスの向上や店舗パワーのアップが課題となる。ここから得られたノウハウを全カラモニーショップで共有し、ショップ機能を更に充実させていく。
また流通スタイルも創造していく必要がある。従来の取引先、ビジネスを大切にしつつも、市場追随型の対応から新しい需要創造型の売り方、システム展開、マンパワーの発揮に注力する。こうした中で得られたノウハウを集約し、新しい戦略を立てていくことで既存流通のモチベーションをも刺激していこうとしている。
既存の流通システムに関しては、機能分担を明確にし、メーカー・販売店がお互いに市場競争力を強める方向での連携を進める。機能分担は地域性や個々の販売店の個性に応じてさまざまな組み方が想定される。
「市場の厳しさを直視すると、我々メーカーも特約店も単なる売り買いの関係で市場を動かすことはできない。そこにあるニーズではなく、潜在化した需要を一緒になって顕在化させる方法論が不可欠になる。従って連携は双方向的なものとなる。一体化したプレゼンスが必要である」(同)。
今後は、生活者から選択される"ニッペブランド創出"も重要であり、そのための流通システムに変えていく必要がある。ブランドとは、言うまでもなく商品やサービスを含む価値を体現したもの。選ぶのは末端の生活者。信頼性の高い品質を作り込む必要がある。商品を売る力よりも、市場との信頼関係作りができるか否か、この一点に同社の流通システムの成否がかかっている。「最大の危機は最大のチャンス」は言葉通り受け止めたい。
同社はこれまでの流通政策を抜本的に変えていく。その方向性については明らかにしていないが、既存の製・販・装といった枠組みを超えた形でのサービスを含む供給体制に向かう。いわば21世紀版ニッペシステム。成否を握るのは戦略の一貫性と遂行力だ。
ダイレクト指向強める 関西ペイント
関西ペイントは13次中期経営計画の中で国内については、更なる収益性の強化を明確に打ち出している。一方で建築市場は、リーマンショック後の経済危機の影響で大きく落ち込み、ますます価格競争が激化、むしろ収益性の悪化が懸念される分野だ。
しかし、リーマンショックがもたらした市場環境は皮肉な幸運(?)と言えるかもしれない。建築塗料を第2のコアにというトップの号令がこれまでは十分に機能していたとは言い切れなかった。というのは、自動車をはじめとする工業用塗料の販売比率が高く、輸出による成長もあった。ところが、国内市場はダイナミックに縮小した。建築市場は成熟市場、しかし輸出依存の市場ではない。しっかりと市場の中を見渡せば、必ず見落としている市場があるはずという視点で市場を見つめ直すきっかけとなった。化粧品業界は常に自らトレンドを創り、顧客創造するパワーを持っている。要は変化する事情に柔軟に対応してチャンスを見い出すパワーがある。
ここから同社が引き出したポイントは次の3つにまとめることができる。最終の生活者の視点からのダイレクトマーケティング、2点目は材料技術や品質だけではなく、機能を売る方向、そして3点目は新たな製・販・装の連携強化であった。このスタンスにぴったりの製品として「アレスシックイ」の展開に力を入れる。
なぜアレスシックイなのか。その商品コンセプトに環境・健康・安全というメッセージ性を込めることができることがある。しかしこれは差別化要因ではなく、当たり前のコンセプト。重要なのは「漆喰」というなじみのあるコンセプトを、イメージアップした形で塗装領域に持ち込んだところにある。しかも建築の空白域であった内装用での塗装復権(シェア奪還)の先兵としての役割を付与した。
ダイレクトマーケティングはメディアを使った宣伝と、塗装教室がセットになっている。アレスシックイの宣伝は生活者に向けてダイレクトに実施。その効果はいろいろな形で顕在化。接点のなかった潜在ニーズを浮上させる。それ以上の効果は塗装教室。その反響は同社の予想を超えるものであった。
生活者は塗料や塗装との接点が基本的にゼロ。当然、知識についても白紙の人ばかり。確かにホームセンターでペンキを買って自分で塗る人はいる。だがそれが定着していない事実がある。ところが塗装教室で基礎知識が得られるとほぼ100%ペイントファンになることが判明した。
しかも同社の塗装教室の狙いとして、プロの塗装技術を見せる場を設ける点。消費者に「プロの技術は違う」と思わせる=塗装業者の技術が顕在化する。そこに信頼関係が生まれると仕事も頼みやすい。塗装教室はお見合いのようなもの。塗料販売店での塗装教室の落とし込みに入る。「塗料販売店の役割はお見合いの仲人のようなもの。お見合いのセッティングとその場を盛り上げるコーディネーターとしての役割を果たしてほしい。そこに新しいビジネスの芽も育まれる」(担当者)。
色彩、クロスオーバーする力 明豊(茨城)
明豊(本社・水戸市、社長・金子要氏)は3年前「ファンタジー」事業を立ち上げ、独自のビジネスモデル作りに着手した。そのコンセプトは色彩提案力を活用した業域を超えた事業形態確立にある。
「色彩は業界の枠にとらわれずに横展開できる武器になる」(金子社長)との発想から、本社(水戸)と下妻の両拠点に人員を配置。カラーシミュレーションをフル活用した展開。色彩に加え素材感や機能性塗料による付加価値提案を一体としたシミュレーションを行っている。こうした発想から独自のアイデアによるツールの開発も積極化。「見える化」することがポイントと考えるからだ。
円形立体型の磁石付きカラーパネルの他、最新バージョンとしてカラーサンプルを差し込める長方形ホワイトボードを設計・開発した。「塗料の生命線である色のバリエーションの豊かさや質感を見える化する工夫の一環として開発した。アイデアは社員の意見から」(同)という。
同社は事業形態としてはオートサプライヤーの性格が強く、売上の主体もその分野。しかし新しいビジネスモデルはオートサプライヤーの枠を超えていく。そのため重視しているのがマンパワー。5-10年後の明豊について社員にアンケート、これにトップの方向性を加味した業態作りが始まっている。人づくりの面でもオートサプライヤーの人材の活性化を目指す。
「まずはオートサプライヤーとしてのノウハウを学んでもらうが、それにとどまらず建築用、工業用のノウハウもマスターしてもらうスタイル」を目指す。このため職務シフトも意識的に行うことで幅広いノウハウが身に付く。こうした効果を、BPへのルートセールスの中から改修物件の受注につなげ、新しいサービスの開発につなげてきた。
「別に万能選手を育てたいわけではない。得手不得手ということがあるのですから。しかし市場の先を見る目線、ユーザーニーズを多角的に捉える視点はレベルアップしてもらいたい」
新業態作りのもうひとつの鍵は異業種連携にある。塗料に関わらず、防水、フィルム、タイル、設計事務所など業界を超えるネットワーク形成の主体となる方向。ここで最大の武器は色彩提案力という。
「色彩を中心としたデザイン力はこれからの社会の中で本質的なニーズとなる手応えがある。塗料の色彩表現力を発揮させるための方法はいろいろある。むしろいろいろな商材を扱える我々流通業者の強みの1つ。カラーバリエーションと質感を見える化するファンタジーは当社の方向性を示す。でも将来どんなビジネス形態になるかは分からない。常に時代と共に変化していけるフレキシビリティが大切。エコ・安全・省エネをコンセプトとして作り込みたい」と意欲的。
色彩力を通じてクロスオーバーしていくパワーを発揮する方向に定形はない。「不確定だからこそ面白いし、感動を与えられる」(同)。
改修展開本格化、流通改革に着手 大日本塗料
国内市場の成長拡大が見込めない中にあって、大日本塗料は自社の強みを生かした需要開発を積極的に行う。
「リーマンショック、政権交代を経て需要構造は変わった。販売構造の改革に着手し、付加価値化の高い提案営業を強化していく」(取締役一般塗料部門長・廣谷良則氏)と説明。新築需要にウエイトを占める重防食、建材分野においては、これまでで得た実績や知見を武器に改修市場での深耕を図る。
生産から配送に至るまである程度計画的に進行できる工業用や新築物件と異なり、改修市場は機動力、小回り力が求められる。「塗料産業のすべてが小ロット、多品種化している。当社としては特約店との協業は欠かせない。相互の役割分担、機能分担をより明確にしていきたい」とコメント。現在、全国の関係会社の調色場所を含めて15カ所を擁する調色拠点においてもサービス向上の視点から特約店の補完的役割に期待している。
またこれまで受注センターに集約していた受注機能は、工業用塗料を除く一般塗料において最寄りの営業所が受注を担当。「緊急性を要するニーズに対応するため」。一昨年前に導入した基幹システムSAPもディーラーからの販売計画情報に基づき生産効率の改善に寄与。「改善できた分は還元していきたい」とディーラーと一体となった機能向上を図っている。
2年前からは戸建て改修を見据えた新規事業部を設立。施工体制の整備と新規製品を差別化にプレハブメーカーへの提案営業を強化している。
需要分野の選択と集中図る 神東塗料
神東塗料は、業務全体の効率化を図るべく、基幹系システムの全面入れ替えに着手している。「現在のシステムはカスタマイズを加えながら20年以上使い続けてきたことから、維持管理に多大な労力を要するシステムとなっている。世代交代も進み、よりスリムなシステムを構築することで、社内における維持管理を含めた業務の効率化を高めていく」(担当者)と説明。来年のスタートに向け準備を進めている。
配送業務においては、都市圏に限って当日出荷対応時間の長さで他社との差別優位性を有する同社。「業務の効率化と顧客対応力は二律背反する部分がある」としながらも、増える少量多品種ニーズへの対応力を高めている。
一方、調色センターは全国7カ所に配備し、いずれもJIS品調色の対応済み。更に同社は、約20年前から主要製品の調色に共通原色を採用しており、小ロットニーズへの対応力を備える。
これらの業務基盤を強化していく一方、流通経路の集約化も課題に挙げる。「かつては戦略上、取引口座を拡大させてきた経緯があるが、当社の強みを生かすため、より販売店との密な協業を図っていく必要がある」と指摘する。
その背景にあるのが、需要構造の変化。あくまでも材販スタイルを貫く同社にとって、掲げるのは需要分野の"選択と集中"。
工業用においては電着塗料、粉体塗料の強化を図る一方、建築分野においてはマンション改修、工場メンテナンス分野に絞り込むことで、存在力を高めようとしている。
コンサルティング能力が求められる 加藤塗料(三重県)
加藤塗料では建築汎用、自補修用、工業用とそれぞれ分野別ニーズへの対応力を強めることで自社の存在感を高めていく。
建築汎用分野では製品アイテムが増える中で、流通機能として細かな対応が求められている。塗り替え工事現場で塗料が不足となれば、素早い調色スピードや物流スピードがそのままサービス力となる。調色機能は販売店の1つの差別化ポイントだが、メーカーでも細かな調色サービスを行っており「どちらが短時間で出せるかで競争となっている」(加藤利一社長)。
また、現在の塗料販売店では踏み込んだ形でのユーザー支援が求められているという。例えば自補修分野でみると、一昔前であれば塗装デモなど技術的な支援がサポートだったが、今では作業効率や工場での効率化に寄与するサポートが求められている。部分的な技術サポートから全体的な経営に関わるサポートに要求は高まっている。
同社ではそうしたニーズに対応するため社員の専門性の強化を進めている。営業は業種ごとに担当を分けて、その分野でのスキルアップを図る。特に自補修分野や工業分野ではより広く深い知識での対応が必要となっている。
「コンサルティング能力が求められている。工業用のユーザーではベテランの指導者の退職により工程管理で課題を持つところもある。そうした現場で提案や指導ができれば、それは販売店の大きな強みとなる。そういう意味では人材育成がそのまま会社の成長につながる」と加藤社長。
需要創造への道筋を探す 大和塗料(東京)
建築用を主体に塗料卸売りとして東日本エリアを幅広くカバーする大和塗料。卸売業本来の役目として品揃えの更なる充実、豊富な在庫、クイックデリバリーといった物流力に加え、情報力にも磨きをかけ「得意先に役立つ存在」としての体制づくりに注力する。
一方で、「活動エリアが広い分、市況のマクロな動きが結果的に業績にも反映。建築塗料をめぐる構造的な需要縮小の波をひしひしと感じる」(松本徹社長)とマーケットへの危機感を募らせる。
そのような中、需要活性化へ向けた同社なりのアプローチを始めた。「塗料という商材は、色彩はもちろんのこと、さまざまな機能開発など細分化した市場ニーズに適合させる要素を持ちながら汎用的な売り方を脱却できていなかった」と自らも含め業界の在り方を省みる。
需要活性化のためには「最終需要家である生活者に塗料の魅力を再認識してもらう作業が欠かせない」との考え。このため社内にマーケティング部隊を発足させ、生活者を含めた川下のニーズを探索、それに対して自社の持ち得る商材や情報をどのように組み合わせ、加工すればニーズの核心に届くのか、トライアンドエラーの中から"新たなカタチ"を見出そうとしている。
「需要縮小を看過しているわけにはいかない。まずは自ら汗をかき、需要創造への道筋を見出したい。塗料流通業の新たなビジネスモデルを構築し、そのカタチを市場に還元することが活性化にもつながる」と先を見据える。
収益改善に着手、共通原色を採用 トウペ
経営改善計画(平成21年度-22年度)を進行させているトウペ。平成21年度決算は、利益面こそ目標には届かなかったものの営業黒字を達成。平成22年度決算では売上高147億円、営業利益4億5,000万円を見込む。
これまで手掛けた収益改善策としては、一部の特殊品を茨城工場に残し、三重工場に生産を集約。その他、継続再雇用制度の凍結、不採算品の廃止などに着手した。また営業拠点においては、1年間で広島営業所、四国営業所、神戸営業所、新潟営業所の廃止に踏み切るなど、固定費削減を実現する一方、ディーラーとの協業の重要性が高まっている。
また2月には、CCM(コンピュータ自動調色)及び共通原色システムを導入した。原材料費や製造コスト削減に期待する一方で、1缶調色にも対応するスピード化を実現。全国4カ所の在庫拠点にカラーセンターを配備した。溶剤系、水性製品を対象に順次対象品目を増やす予定で、少量多品種ニーズに対応する。受発注業務の効率化については、受注センターの構築も視野に入れている。
内需において強化すべき需要分野として捉えるのは改修需要。「建築塗料分野という大枠でなく、より分野を細分化していくことで強みを発揮していきたい」(担当者)とコメント。重防食分野では、いち早く実績を得た弱溶剤フッ素樹脂塗料の拡大を図る一方、建築分野においては親会社となった古河機械金属のグループ企業が保有する工場などの改修需要に期待している。
ユニークな物流業務改革 アオキ塗料(群馬)
建築用塗料を主体とした従業員5人の社店。塗料販売店の業容として最も典型的なパターン。しかしながら決して家業ではなく企業としての経営効率を追求する。
2年前、塗料販売業にとって負担が大きい物流業務の改革を行った。町場の小口需要がメインでありながら、現在販売量の3分の1以上でメーカー直送を利用している。「多種少量、現場の広域化、短納期化が強まる中で自社便対応だけでは極めて非効率」(青木清社長)との考えから。
その手法がユニークだ。同社が採ったのは顧客に近接する配送会社のターミナル留めとし、顧客に直接ターミナルまで取りにいってもらう方法。当然、当初は難色を示された。
これに対してメーカーに送り状ナンバーの確認を徹底、自社で配送会社に問い合わせて荷物をトレースし、入庫予定時刻を確認。引き取り書式を整備し、顧客が荷物をスムーズに受け取れるようマニュアル化した。今では「いつくるか分からない荷物を待ってイライラするより余程まし。不在置きも解消された」と評判は上々。自社業務の効率化と顧客満足の両立を果たした。
同社の業務改善は「ISOの精神」に則って行われている。「5段階評価で1、2のもの(欠点)を洗い出し3レベルに押し上げ、全員が行えるよう標準化する活動」がすべての業務に対して行われている。この考えは商品戦略、販売戦略といったマーケティング活動にまで及ぶ。「企業としての足下を固める上で当然のこと」とキッパリ。
ペイントショップとして需要を創造 ナガヤ塗料(愛知)
ナガヤ塗料はペイントショップとして、塗料・塗装の専門拠点としての立場の確立を目指す。そのため「生活者へのPR、印象付けを強化していくための事業を進めていく」(長屋偉人社長)方針だ。
建築汎用分野では、塗料メーカーが工事を請け負うケースや塗装業者への直接販売などを行うケースが目立っているが、それでも長屋社長は「流通機能として販売店が必要なのは変わらない」との見方を示す。
同社でも在庫、物流といった従来からの機能として細かなサービスを行っている。その一方で同社が強化している活動は「自社での需要創造」、そのための生活者への対応だ。
「その地域の生活者が塗料に関する疑問や質問をどこにするのか。そこに需要創造のポイントがあり、当社ではそこへの接点作りや対応を重視し、強化している」と長屋社長は述べる。
その背景として業界のシュリンク傾向や建設・土木業界のデフレ傾向が存在する。量ばかりを追っていてはコスト・サービス負担が重くなっていくばかりで、経営的にも明るさは見えない。
そこでは同社では塗装業者への住宅塗り替え市場への支援事業を進めている。地域にチラシを撒き認知活動を進め、店舗では塗り板の陳列やカタログ図書館、アイデアペイントやデコラティブペイントの例示などで紹介。
元請への支援事業の一環として塗装業者に勉強会を定期的に開催。材料紹介にとどまらず、営業支援やツール関連などまで踏み込んで連携を強めている。
人材のレベルアップで利益改善 板通(栃木)
北関東を拠点とした大手工業用ディーラーの板通。リーマンショック以前に比べ売上は20%強ダウンした。「設備などスポット案件の回復が遅れており売上は前年並みだが、利益は大幅に回復している。経費節減というより、社員の利益重視の行動が徹底されてきたため。地力が上がっている」(板橋信行社長)と自信を示す。「人がいちばん」を基本理念に掲げ、社員教育、コミュニケーションに格別力を注ぐ同社。厳しい経営環境下で危機意識を共有、利益向上という成果として表れている。
既存取引の「深耕」、新規開拓・新地域・新業種・新商品への「展開」、それらの「統合」による相乗効果の追求といった基本路線に変わりはないが、その精度を高める活動に熱が入っている。
その1つがマーケティング委員会の設置。販売の最前線で活躍している社員が中心メンバーとなり部門横断的に組織。各々のフィールドの情報を持ち寄り、融合させて新たな需要開発につなげる。そこに制約はない。「食品まで扱い始めた」と、風通しの良い社風から柔軟な発想が生み出され「展開」に広がりが出る。
今月中旬、社員からの発案で同社にとって17年ぶりとなるフェアを開催した。環境対応がメインテーマだが、「中小企業は省エネやCO2低減が具体的にどのようにコスト削減つながるかが見えないと動けない」と、顧客の現場視点に立った機器や材料を紹介。「500名ものお客様に来ていただき、当社ならではの情報提供に概ね満足していただいた」と自信を深めた。
新業態、リテールストア設立 西井塗料産業(福岡)
西井塗料産業は4月、新会社「BMジャパン西日本株式会社」を設立、本社ショールームを改装し、ベンジャミンムーアのリテールストアとなる「FUKUOKA Flagship」をオープンさせた。
同店は、BMジャパン(本社・東京都、社長・庄司園子氏)が今春設立した「AOYAMA Flagship」に次ぐ、国内2店目の拠点。大手ディーラーが過去にない業態を始めたとして、内外の注目を集めている。
新会社設立に際し、西井一史社長は「かつてニューヨークで高級ブティックの隣にペイントショップが並んでいるのを見て、塗料が生活に深く根付いていることを感じた。その頃からいつかリテールマーケティングをやりたいと思っていた」とコメント。マクドナルドがファーストフード文化を作ったように、生活者に訴求する新業態によってペイント文化を創出したいとの構想を持つ。また運営においても、これまでの調査から「業界で培った経験やノウハウを生かそうとすると失敗を招く」として、在籍するスタッフの女性4名は塗料の未経験者を揃えた。
顕在ニーズが皆無に等しい中にあって、需要創出のポイントに掲げるのは、いかにして"臭い""汚い"というイメージから"楽しい""きれい""安全"というイメージに転換できるか。
「ペイントに1万円、2万円と惜しまずに払う顧客がいることは分かっている」。当面は、壁装材関係など企業向け営業を強化する一方、市街地への出店も含めた仕掛けを準備している。
フルサービス業態に磨き 富田商店(埼玉)
塗料販売事業とガソリンスタンド経営を含めた石油製品販売事業を手掛ける富田商店。ネット通販やキャッシュ&キャリーといった新業態が活発化しているのに対し、「小ロットユーザーやDIY、セミプロを対象にまだまだ伸びていくだろう。その中で当社としては、ガソリンスタンドで例えるならフルサービスの販売店として差別化を図っていく。今後、販売業態の2極化が進んでいくだろう」(富田浩正社長)と話す。
1日2便の配送、掛売り、調色、品揃えといったこれまで販売店として当たり前とされているサービス機能が、2極化によってより顕在化する可能性がある。
亜 そこで同社はもう一歩進んだサービスを強化するため顧客への情報提供に力を入れている。今後一層重要性を増すと思われる環境対応への取り組みも含めて、顧客の差別化向上に寄与したいとの思いがあるためだ。
その端緒として同社は4月、会員制研修会「月灯りの会」を設立した。毎月1回、平日夜に開催することから名付けられた同会は、会費制による有料研修会。受注力の向上、経営者個人の資質や経営力向上を図ることを目的とし、同社の取引先11社が参画した。
一方、組織体制の強化にも努めていく方針。「収益バランスを維持するためには、間接部門である内勤人員の活力は無視できない。営業の補完的な役割に期待している」と話す。今後も営業スタッフを増員させていく意向を示しており、"攻めの経営"を明確に打ち出している。
地域密着で需要と供給のループ 富士塗料興業(宮城)
次期成長戦略の柱として「建築塗料部門の強化」を掲げる。売上の8割を工業用需要で占める同社。しかしながら国内製造業の海外移転は加速化、「海外対応を強化」(星合邦生社長)して需要を守る一方、「企業としてはあくまでこの地(仙台)で成長、存続していく。このため地域需要で成り立つ事業基盤をつくる必要がある」との想いが建築塗料部門強化の背景にある。
そのような同社に追い風が吹いている。現在、同社が立地する仙台卸町で「人に愛され、人が集まり、人が住めるまち」を掲げ、流通団地の新たな姿を描いたプロジェクトが進行。街並みをリニューアルし、住宅を誘致、入居企業が協業して「卸町ブランド」の価値ある商品やサービスを市民に直接提供するなど、これまで分断されていた地域生活者とのつながりの中から、街や企業の活性化を図ろうというもの。
その中で同社は塗料販売、塗装工事部門を受け持つ。イメージとしては「卸町ブランドの塗り替え工事」といった具合。「地域への愛着心、信頼と安心感を媒介にした需要と供給のループ」を期待する。
こうした動きを念頭に置き、施工部門を立ち上げ施工技術のスキルと実績を積み上げてきた。また材料に関しても他にない高機能塗料をPB化、施工システム化するなど、ブランディングへの準備を着々と進めている。
建築塗料部門の強化といっても従来の枠組みの中で進めるつもりはない。地域に根付き、地域の生活者とつながったスタイルの構築を目指す。
廃塗料リサイクルが好調 ベータレックス(神奈川)
廃塗料のリサイクル事業を展開するベータレックス(本社・神奈川県横浜市、代表者・入江裕二氏)が好調だ。昨年8月に静岡県富士市に処理工場を開設し事業をスタートさせたが、早くも今年4月には島田市に処理能力3倍(16.6トン)となる工場を新設・移動し事業を進めている。
マーケットでは「予想以上の反応」(開発事業部、取締役事業部長の長谷川昇平氏)で毎月受注量が増えており、早くも単月黒字を達成している。
同社では従来焼却処理されていた廃塗料や廃インクを中間処理工程で独自に開発した安定固化剤を使用することにより、中間処理後はセメント原料や再生土としてリサイクルされる。熱量は4,000キロカロリーで1,000キロカロリーまで調整が可能という。
好調な要因として長谷川氏は「今までの処理単価が高すぎた。ロットがまとまれば従来比で半値のコストで処理できる」と事業の新規性がインパクトを与えていると指摘する。更にリサイクルという環境に配慮している点がISOなど会社として省エネ・環境配慮活動をしている企業に評価されている。
同社ではダイレクトメールをひと月に1,000-3,000通関連業者に送り、反応のあったところに営業をしている。現在では建築塗装業者や工業塗装業者、造船塗装業者などユーザーは400社を超えている。静岡県内では数缶からの回収も受け付けるなど細かな対応も強みだ。「効率よくルートを回ることで小規模から大手ユーザーまで対応する」として、更なる事業拡大を図る。
塗装教室の有効活用 向山塗料(山梨)
昨年同社は本社から倉庫までの施設すべてをリニューアル。倉庫屋根には遮熱塗料の塗装とともに、太陽光発電装置を装備。クリーンなエコ拠点として生まれ変わり、大きくイメージアップした。
しかし経営環境は依然厳しく、成長の方向を見い出すことは難しい。扱う商材を拡大すればコスト競争のドロ沼を覚悟しなければならないし、施工事業を本格化したが古い感覚の地元塗装業者の抵抗もある。
その中で同社が戦略的方向性として追求しているのが地域密着。県内で建築汎用シェアの過半を押さえる強みを更に深めるためには生活者との関係作りは将来の展望を拓くカギと考える。
「アトムサポートさんの支援を受け第1回目の塗装教室を開催したところ大きな反響があり、販促の有効な手段としてばかりでなく、当社の地元での認知度の向上や固定客作りになるとの手応えを感じました」(向山社長)。
以降、現在まで3カ月に1回のペースで開催し、今年の5月までで計7回開催した。塗装教室は社員がインストラクターとなり、自前で開催するパターン。インテリアペイントをテーマにしている他、トタンの塗り替えなど工夫を図る。
今後の課題は集客ではなく、無関心層に対する魅力度アップや開催頻度にある。「月1回のペースにすると社員の負担も増えるので、調整が必要。しかし塗装教室からいろいろなチャンスが見い出せることは確実」(同)と新たな企画を練っている。
人材を活力に販売業に徹底 高山商店(兵庫)
関西圏において建築塗料トップディーラーに位置する高山商店。わずか5年間で、プロタッチ事業部開設(2004年)、東大阪営業所開設(2005年)、鉄鋼塗料事業部開設(2008年)と事業分野並びに商圏の拡大を図っており、存在感を高めている。いずれも戦略的拡大というよりも事業継承的意味合いが強く、そのことも存在感を高める要因となっている。
高山一男社長は「ディーラーとして当たり前のことしかしていない」と在庫、調色、配送といったオーソドックスなスタイルを貫く。また工事請負についても「当社がやるべき業態ではない」と愚直なまでに塗装ユーザーに特化した販売に徹底している。
一見、派手さのない経営スタイルに見える。しかし一方で、人材投資については徹底した取り組みを見せている。
「毎年1人は採用したいと考えている」という同社の従業員数は100人弱に及び、過去最高のマンパワーを誇っている。収益改善のために人件費及び採用の抑制を図る同業他社に対し、人材への積極投資が同社を成長に導く原動力となっている。
高山社長は「販売店としてローコスト経営は難しい。コスト優位性においても最終的にはメーカーに勝てない」とコメント。営業、配達の効率化についても「不適期な顧客の要望に対応するためには分離するとコストが上がる」として、営業は配達を兼務。
ユーザーへのきめ細かいデリバリーを徹底することで、現場情報力を高めることにもつながっている。
独自モデルの創造に着手 フジミ(神奈川)
横浜営業所のスクラップ&ビルドが8月中には完成。オープニングは9月中旬を予定する。「老朽化が進んでいたのでリニューアルした。この機会を生かしショールームスペースなど新たな情報発信の機能を装備していく」(清専務)と、新たなビジネスモデルの構築に着手する。
同社は小田原を拠点に東京までヨコ展開し、汎用・工業用を中心に強力なネットワークを形成。リーマンショックを受け、新たな機能の創造をテーマとしている。その一環が横浜のショールーム。
「周辺地域は緑が多く残る一方、住宅や集合住宅の集積、大規模団地もあり、生活者を含め集客の余地がある。ショールームは開かれた形でプロの塗装業者と生活者の交流スペースとして活用していきたい。イベントや塗装教室の開催も企画し、自分たちもお客さんも塗装を通じてワクワクする感動を共有できる形に作り込む」(同)。
また従来の顧客に対しては共同して工事需要を創造するコラボレーションをスタート。取引のある工場などの塗装工事の掘り起こしで成果を出しつつある。更に同業3社との共同仕入にも拍車がかかってきた。
「中国での副資材調達ルートの開拓、共同仕入によるメリットの活用を進める」との効果ばかりでなく、3社で同時扱い商品の販売レースが社員を刺激。「社員にとって売る力の尺度ができやる気につながっているので、3社間の良い意味のライバル意識を高めていきたい」と話す。
生活者基点にシフト ヤブタ塗料(神奈川)
創業100年を超える老舗でありながら、その発想と行動は柔軟だ。「ここ(小田原)は首都圏にありながら、需要環境は地方経済と同じ。パイが限られており塗料販売だけで伸ばすには限界がある」(薮田直秀社長)との考えから、工業塗装(加工)、建築塗装(工事)、更にはEコマース(ネット販売)など、新しい事業にチャレンジしてきた。
このうち、数年前から取り組んできた住宅塗り替え工事で実績が出始めてきた。「タウン誌や自社ホームページでの告知など、オーソドックスなPRだが来店者、引き合いが増加し、コンスタントに発生している。強いて挙げれば、当社ならではの"塗膜化プロセス"へのこだわりに反応しているのでは」とコメント。この成功事例を携え、エリアの広域化も視野に入れる。
ネット販売も軌道に乗った。自社サイトでの運営ながら経営に十分貢献する売上を確保。商品戦略と見せ方、アドバイスへの安心感がファンを増やしているかたちだ。「最近、ネット販売で内装用の艶消しが売れている。こうした動きを店頭販売にも連動させ、例えばクロス用の塗料をキャンペーンするなどマーケティングにも活用できる」と相乗効果を追求する。
「需要不足を根本要因とする市況悪化の中で注文待ちの商売はもはや成り立たない。自ら需要創造に動くべき」との考え。このため「最終需要家に響く材料、使ってみたくなる材料」の探索と訴求方法の考案にはことのほか熱心だ。生活者基点ビジネスへのシフトを進める。
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