Web特集
2010年08月17日
シリーズ: 地域力
地域力(第5回) マルハ外装(広島) 地元指向で"職人魂"磨く オンリーワンのプロ目指す
マルハ外装は本社を東広島市に置く。この地域の住民は大半が他地域からの流入で、膨張する広島市のベッドタウンと学生用アパート群、そして地元民の混在から成る。住民の流動性が高いのが特色。
そもそも元請化の発想は「下請けの場合、仕事量に乱高下があり、工事単価の下落など不安定要因が大きい。安定した受注にするには地域に根ざした元請スタイルにしたかった」という。
元請シフトは3年前。まず本社の半径500m圏にある約600戸にポスティング。その後周辺の住宅団地を含め配布したパンフレットは1万枚に達した。全社員が空き時間を使い配布したが、当初2週間は1件の問い合わせも注文もない状態。
新興地域とあって訪販がターゲットに動いており、顧客のガードは固い。それでもパンフレットのポスティングの際には直接会って地元の専門工事業者であることを説明する努力を続けた。それでもドアを開けてくれるケースはほとんどない。
また現場見学会を折を見て開催。施主の了解を得て塗装の実際を見てもらう試み。足場に乗ってもらって雨戸の塗装など一般の人には分かりにくい箇所を丁寧に仕上げるプロの仕事の技術に理解を求めた。この見学会は通常午前10時から午後3時と密度の高い内容で、とことん専門工事のプロだからできる塗装品質をアピールした。
同社は社長以下、職長・職人の14名構成。営業専任はいない。営業活動は時間外ないし雨の日に行われた。効果の見えない営業活動に全員が取り組めたのは徹底した社内コミュニケーションにある。
同社ではペア(2人1組)で仕事をする。毎朝の朝礼は各ペアの行動予定の確認に始まり、全社的な情報の共有化までトップが指示を出すのではなく、相互にテーマを出し合って話し合うスタイル。しかしそこにはトップのぶれない信念が根底に流れる。目の前の顧客の立場に立って仕事をする。そして何よりも「他のやっていないことをやろう」とのコンセンサス。
廿日出社長のプロの仕事へのこだわりは半端なものではない。見積もりから工事、アフターサービスまで、専門工事業者ならではの目配り、気配りがある。それはとにかく徹底している。例えばこんな具合だ。
施主からはチェックしようのない箇所――。屋根の入り隅の塗装は足場を外す前に実際に見てもらう。それができない施主(高齢者)にはチェックシートに写真を添付する。それも数十枚の写真を載せる。仕事が終了すればその現場に入った職人が手書きのお礼状を書く。施主と職人との交流こそが施工の信頼を支えている。アフターサービスは工事後1カ月、2カ月、半年、1年と担当した職人ないし職長が顔をつなぐ。手間ひまを惜しまない関係作りをする。
こうした地域密着に手応えが出始めたのは今年4月ごろから。ポツポツと紹介による受注が目立つようになる。「3年前に配ったパンフを見て問い合わせをくれる人もいる」(廿日出社長)というように、地元の専門業者との認知が進んでいる。施主からの信頼度も高まっているようだ。
塗り替えだけでなく、リノベーション工事の実績も増えてきた。あるマンションの全面リニューアル、水回りからキッチンの内装までを手がけ、低下していた入居率を100%に引き上げ、施主から絶大な評価を得ている。そこには居住者の目線に立った仕事へのこだわり、廿日出社長のいう「オンリーワンの仕事」への自負が感じられる。
「この仕事にやりがいを感じる。大手企業にはできないスタイル。職人の新しい形を追求したい。常に技術への向上心があって、それを施主に自分の言葉で伝えられる。こうした職人を1人でも増やしていきたい。そして独立してそれぞれのカラーで道を拓いてもらえれば」(同)。
このため、今後社員である職人には経営についても勉強してもらう予定。職人の中から経営感覚を持ったリーダーを育成するのが廿日出社長の次の夢になっている。
◇会社概要:マルハ外装
本社:東広島市西条町下三水730-21、℡082-20-6334、FAX080-420-6335
廿日出氏は大学卒業後、社会での自分の生き方に迷っていたとき、24歳でガン吹き職人に弟子入り。そこで徹底して職人魂を吹き込まれることになる。「なにしろ初めて経験する世界でしたから驚きの連続でした。一番インパクトがあったのは仕事へのこだわり。誰からも評価されない仕事でも手を抜かない、むしろ仕事を突き詰めていく姿勢、手仕事の素晴らしさ、そして日々の精進」と今でもそのときの感激を隠さない。ここが原点となって妥協のない仕事への姿勢が生まれた。人づくりへの情熱も、肌で感じた職人魂が廿日出氏を突き動かしているようだ。
« 前のWeb特集 | Web特集アーカイブ | 次のWeb特集 »