Web特集
2010年09月13日
シリーズ: 地域力
地域力(第9回)向山塗料 全社員、インストラクター 生活者との接点「塗装教室」
甲府盆地の夏は暑さが厳しい。山々で占められる山梨県は東京から近い割に市場のローカル性は際立っている。ほとんど工業用需要がなく、汎用市場の性格の濃い地域で、甲州人気質も強く残る。
向山塗料は山梨県トップディーラー。建築シェアで県内の50%強を占める。看板の知名度も高く、地域密着の好条件が揃う。しかし大きな壁が立ちふさがっていた。 これまで顧客としてきた塗装業者の抵抗があった。いまだにディーラーがおおっぴらに塗装工事をとることへの反発がある。「塗装の相談や工事依頼もあるが、ほとんど塗装業者を介する形で対応してきました。今でも基本的には同じ」(向山社長)と語る。
とはいえ市場環境は厳しさを増し続けている。県内の公共工事の減少、民間工事の低迷。新築の大型物件はほとんどない状態だ。仕事を確保できない塗装業者が増え、それが同社の売上を直撃する。ピーク時の20%以上の売上減と経営的厳しさは増している。 そうした閉塞感を打ち破ったのが3年前の塗装教室の開催。アトムサポートとタイアップした塗装教室は大成功。新たな販促方法への手応えは十分であった。 「一般消費者に対してはこれまでもいろいろなイベントを通じて当社をPRしてきましたが、塗装教室という形で定着させていたわけではなく、夏休みイベントなど、シーズン企画が中心。接点をつくり、それを維持する方向がなかなか見えなかった」(同)。
地元でペイントショップ・向山塗料の知名度は高い。かつてはショップ機能を充実させ、店頭調色導入でもトップランナー。カラモニー店の看板で販促したこともある。決して地域密着に手を抜いてきたわけではなかった。 しかも向山会長の徹底したエコ指向は地元でも有名。小中学校で地球環境問題の講師として何度も教壇に立っている。とはいえペイントビジネスとは次元が異なるせいか、エコとペイントショップはイメージ的に合致していなかった。
昨年同社は全面リニューアルを実施。ショップ・事務所棟から各倉庫の内外装を塗り替えた。倉庫屋上には太陽光発電装置、遮熱塗料の施工など、エコ拠点に衣替え。これまでにもリサイクル活動を社員が中心となって実践してきただけに同社のエコ指向は生半可なものではない。 さて塗装教室がもたらしたものとは何か。過去6回塗装教室を開きノウハウを積んできた。2階には30~40人は楽に収容できるスペースがあり、実際の壁を塗ってもらうことも可能。使う小道具も用意され、いつでも塗装教室が開ける状態にある。こうしたハード面よりも、社員への効果が見逃せない。
全社員がインストラクター。ローテーションを組んでインストラクター役を担当させてきたので、「教え方は全員がマスター」と向山社長。しかも社員同士で塗装教室のノウハウを共有化し、もっと工夫して盛り上げたいとの気持ちがある。 塗装教室を通じて入る生活者の生の声は、社員の意識を刺激、生活者にノウハウを教えることを通じ、生活者の思いを汲み取る重要さを感じるようになる。 「塗装工事に欠けているのは安心・信頼。工事単価はその次にくる。塗装工事業者が手抜きをしているわけではないのですが、安心感は工事そのものからは見えてこない。しかも下請の形の工事が多いので、生活者と工事業者の接点は作りようがない」(同)。
塗装教室は欠けている安心感・信頼を構築する有効手段となりうることが実感されてきた。「やはり顔が見える関係が一番でしょうね。ショップを作ってもそれだけでは敷居は高い。塗装教室から生まれる関係性は『また参加したい』との回答に表れています」(同)。 その一方で定期開催に向けては課題も多い。最大の課題はスケジュール調整にある。通常業務に支障をきたさないように日程調整しているが、これでは定期開催は難しい。「本格的にやるのであれば業務の枠組みとして確立する必要があります」という。塗装教室で一方的に社員の負担を高めることはできないからだ。
また参加者の中には毎回参加するリピーターが増え、新規参加者を増やすネックともなる。課題は残るが地域密着へ向けて塗装教室定着への挑戦は続いている。 ◇向山塗料:山梨県甲府市上町2244、TEL055‐241‐6311
社員全員で事に当たる企業風土がある。地域一体となったエコ活動は10年以上の実績がある。このポリシーが独自の塗装教室にも注入されている。向山社長は「もったいないを実践する上で、塗装はベストプラクシス」と強調する。この思いを全社員で伝えることが使命と感じているようだ。若い社長の下でローカル性を超えたビジネスモデルが誕生するかも。「現状に甘んじていても先はない」と方向転換も視野に入れる。
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