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Web特集

2010年12月13日

シリーズ: 塗るということの規範

塗るということの規範(21) 中嶋徹

欧米では「Decorative Painting」に関わる職責として、自らをペインターとは紹介していません。先述した業者が「Designer」とアピールするように、彼らは自らを「Designer」「Artist」と自称しています。それなりの理由があると思いますが、彼らがそれなりにデザインやアーティスティックなスタンスを踏襲しようとしていることだけは見定めておいた方がいいでしょう。それは恐らくビジネス(business)としてではなく、自らの職業(occupation)としてのスタンスを定める自分自身に対するプライドでもあるのです。


「ハウス・ペインター」は一般の住宅の内外装を塗るという、日本的な戸建塗装の意味ではありません。戸建塗装と呼ばれているステージは先ほどの範疇で言えば、「protective coating」であり、「decorative painting」ではありません。このような「ハウス・ペインター」の系譜的な流れにおいて、従来通りの範疇で建築塗装ということであれば「to decorate」でもありますが、メインとなるのは「to protect」であるのが現状です。それが現在の市場の範疇での建築塗装になります。あえて言えば「protective coating」の市場分野の中で住宅や建築を専門としている塗装職の呼称として「ハウス・ペインター」であるということになります。


そして「protective coating」のカテゴリー化が進展すれば、「ペインター」という従来型の塗装職ではなく、「コーテイング・エンジニア」という専門的な「技術者」というスタンスを持つことになります。また「decorative painting」は「ペインティング・デコレイター」というある種、工芸的な「アルティザン」という規範に位置することになります。ただこれには現在の塗装職の規範が純化されモデル化されなければなりません。ある意味では新たな規範と高度なイメージと自由なそして固有なスタンスが前提になります。「塗るということ」が変貌するこの世界の新たな位相に佇むことができるとするならば、改めて私たちは「塗るということ」の行為が携えている、自由かつ固有なスタンスに立ち返って、「塗るということ」のアイデンティティに充ちた、そしてオリジナリティに溢れた世界を構築していくしかたどるべき道はありません。

「Painting」(塗るということ)について、私たちの歴史はほぼ明治時代以降の時間ですが、さすがに欧米では中世以来の時間が脈打っています。イギリスには歴史的に知られているところでは、1268年にペインターの組織が存在していたと言われています。そしてもうひとつ、ステイナー(Stainer)という組織が1283年には存在したことも確認されています。ペインターは金属や木などの彩色を専業とした職でしたが、ステイナーは布やガラスなどの着色を専業とした職でした。(つづく) ※2007年執筆

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