Web特集
2011年01月12日
シリーズ: 塗るということの規範
塗るということの規範(25) 中嶋徹
(塗ることの行為について)それは、例えば3回コームを入れたから仕上げということではないのです。「行為」は自分の意思が着地するところを探してやみません。着地したところが「Finish」(仕上がり)になります。ペインターがその意思の着地に向かう時、取られるべき「行為」は1人のペインターがいきなり塗ってコームを引いた上に布をかぶせて、手品のごとくその布をめくるという「自由な着地」の中でしか可能ではありません。またそれが「塗るということ」が固有に培ってきたスタンスなのです。そして何よりその「行為」は思いつきなどではなく、「経験」に裏打ちされた行為なのです。それがペインターをして「アルチザン」(artisan)と言うことになります。
先に述べた新たな規範とより高度なイメージを「塗るということ」で構築できるとするならば、それは何も突拍子もなく新しいことを創り出すということなどではなく、過去の経験的な行為の中から現在を検証することにあります。過去から顧みた時に私たちが現在に置き去りにした、あるいは喪ったものを確認して、それを未来に継ぐことができれば、「塗るということ」に少なからず関わった「ペンキ屋」として責務の一端を果たすことになると思います。
〈追記〉
日本では厚生労働省管轄の「独立行政法人労働政策研究・研修機構」が職業データ・ベースを作成しています。塗装については産業分類の建設業の中に「建設塗装工」として職業記述が掲げられています。
「私たちの生活の場である建築物は、大きな超高層ビルから小さな一戸建の住宅まで、非常に多くの種類が、それぞれの目標に従って建てられています。建築塗装は、こうした建築物が街の景観を美しく彩り快適な室内空間となるよう仕上げたり、日光や雨、湿気、スモッグなどにさらされて傷んだり汚れたりするのを防ぐためなど、多くの重要な役割を果たしています。塗料を塗ることによって建築物の内部や表面に塗膜ができ、これらが汚れや雨を防ぎ、建材が腐食するのを防ぎます。それは同時に建物を美しく保つのに役立ちます。これを手がけるのが建築塗装工です。言わば建築の仕上げであり、建築の美容師です。
最近では塗装の技術や材料が発達して、いろいろな塗料が用意され、塗り方もいくつかの方法があります。
塗装工はまず施主と相談しながら塗装の対象となる建築物の各部分の素材に応じて適切な塗料や色合いを決めた仕様書に基づいて施工要領書をつくります。これは熟練者の仕事と言えましょう。
次に、実際の塗装作業では、塗装面、つまり素地の状態を調べ、洗浄液や手道具などを使って表面をきれいにします。表面を塗装できる状態に調整します。これは塗装の土台となる重要な作業です。(つづく) ※2007年執筆
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