2011/09/09 10:58

揺れるライン塗装No.160 マルシン・松伏工場 建材分野の粉体塗装化に対応 

建材製品の塗装を手掛けるマルシン(本社・埼玉県草加市、社長・近藤有氏)は環境保全への対応としてこれまでの溶剤系塗装から粉体塗装への取り組みを強めている。特にここ数年、ビルの内外装やアルミサッシが建設業界の環境対策の意向から粉体塗装を指向しており、同社は前処理のクロムフリー化を含めて実証試験を進めている。
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松伏工場前景

20年以上にわたってビルの外装アルミ建材の塗装はPVDFタイプの溶剤塗装が行われてきた。しかし、ここ数年大手ゼネコンは、欧米の建材塗装に高耐候性ポリエステル粉体塗料が採用されていることに加え、メタリックなどの外観に注目。AAMA(米国建築製造協同組合)の規格(2064)に則り国内でも実績を上げ始めている。しかも再開発が進む大崎ソニービルの外装や日本橋の三井住友銀行本店のアルミサッシなどビッグプロジェクトに採用され一躍脚光を浴びている。塗装は海外(タイ、中国など)で行われ、国内に持ち込まれた。
マルシンはビルの内外装、エクステリア製品及び広告看板製品など比較的大きなワークで、かつ美観や耐久性の求められる被塗物を手掛けてきた。


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取締役松伏工場長・後藤善光氏

同社は本社である草加工場と松伏工場を有する。草加工場はリン酸亜鉛処理による金属一般の装飾金物の塗装を行い、主力の松伏工場はクロメート皮膜処理によるアルミ・ステンレス製品全般がメインとなっている。使用塗料は熱可塑形フッ素樹脂塗料、熱硬化形フッ素樹脂塗料、熱硬化形アクリル樹脂塗料、ウレタン樹脂形塗料など。
松伏工場の建屋面積は4017m2。1階にクロメート皮膜処理ラインと水洗ブース(10基)、フラットコンベアー(全長51m)熱風乾燥炉及び固定式熱風乾燥炉(H3.0m×W2.5m×L7.2m、H2.0m×W2.0m×L4.0m)を2基置く。1階は重量物かつ単品ものに対応している。
前処理は12槽からなる浸漬式でクロメート皮膜処理一式(H2.0m×W1.3m×L9.0m)が導入されている。工程は脱脂-エッチング-第1水洗-第2水洗-スマット処理(硝酸)-第3水洗-第4水洗-化成皮膜(クロム酸クロメート)-第5水洗-第6水洗-第7水洗(純水)-湯洗(純水)-熱風乾燥炉というもの。水洗は水道水によるオーバーフローで1~2分。純水はイオン交換装置によって第7水洗は50μs/cm以下で管理。純水湯洗は10μs/cm以下で管理している。


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前処理ライン

また同工場ではクロムフリーへの対応を図っており、ジルコニウム系のクロムフリー化成皮膜槽及び実験水槽を設け(第9水洗→クロムフリー化成皮膜→第10水洗)実証試験を進めている。「現在、日本シービーケミカルのクロムフリー処理剤を使用して実証試験を行っている。既にラボでの評価は済み、処理劣化などトータルでの処理剤の維持性能の評価を進めている。1年間検証しクロムフリーの性能を探りたい」と取締役松伏工場長の後藤善光氏。


建材製品が多い中で、表面処理は下地処理がすべてといってもいい。「この下地処理のノウハウが当社の強み」(同氏)と胸を張る。朝昼の1日2回処理濃度のチェックを行うとともにpH管理、温度管理などの定められた項目を厳しくチェックし、作業内容も細かく示されている。また仕上がった皮膜の見本板との照合などきめ細かな管理体制を敷いている。


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クロムフリー実験槽

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ブラストマシン

遠赤外線ヒーターで品質向上

2階はロットのまとまった被塗物の塗装を行う。昇降機を中心に140mのチェーンコンベアが環状に回る。ラインスピードは1.0~1.5m/min。工程は着荷-下塗り塗装-熱風循環乾燥炉-上塗り塗装-セッティング-焼付(赤外線+熱風循環乾燥炉)→放冷→脱荷。変量生産に対応したフレシキブルなライン構成となっており、最大被塗物は板物で幅2,500mm×長さ11,000mmまで対応可能。


下塗りは2年前に導入した摩擦帯電式オートガン4ガン(旭サナック製)をレシプロに装着して片面塗装を行っており、補正に1人が付く。ブースは従来の乾式ブースをそのまま使用しての塗装。「液体の(塗装用)レシプロに摩擦帯電ガンを付けて塗装している。付き回り性に優れ、薄膜で均一な塗膜が得られる」とコメントする。
建材の下塗りとしてエポキシ塗料を使用していることから粉体塗料もエポキシタイプを使用。まだまだ液体の下塗りが多い中で、ユーザーの理解が得られればエポキシ粉体塗料を使用していくということだ。


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中二階に設けられた検査室

上塗りの液体塗装は自動塗装装置(SANAC4000)に1レシプロ4ガン(エア静電)を装備するとともにハンドガンで対応している。また粉体塗装はコロナガン10ガン(ゲマ製)を整え、自動塗装装置を後方に移動させて手吹きで塗装している。
今年1月に焼付の熱風循環乾燥炉に桂精機製作所の遠赤外線乾燥システムを導入した。熱効率の向上と製品の品質安定を目的に熱風循環乾燥炉の前段(入り口)の両側面に1本5.5mの遠赤外線バーナーを上段、中段、下段に6セット設置した。バーナー(チューブ)の表面温度は320℃。直接物温を上げることで短時間に昇温し、塗料をメルトさせ、続いて熱風循環乾燥炉内でフロー、硬化させることで良好な塗膜が得られる。


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下塗りの粉体塗装

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上塗り塗装(自動塗装と手吹きで対応)

「遠赤外線乾燥システムは熱風循環乾燥炉と違って風による循環がないのでゴミ・ブツの付着がなくなり、不良率の低減に結びついている。またガス式でCO2やNOxの排出が少ないといったメリットもある」と後藤工場長は導入効果を説明する。
炉内の温度管理及び風力・風向は定期的に専任を配してデータ取りを行っている。このデータの蓄積が品質管理や新たな被塗物への対応の基礎データにもなっている。
また粉体塗装導入に際し、冶具に付着した塗料の剥離にハンガー型ショットブラストマシンを導入する他、粉体塗料用の倉庫を設け、クーラーと除湿機を備え室温25℃以下、湿度60%以下の環境を保つことで粉体塗料のブロッキング対策を施している。2年前の本格的な粉体塗装の導入に際しての投資金額は約3,000万円。

固有技術を武器に自社製品化へ

同工場は建材をメインに手掛けてきたことから評価試験器の充実に努めてきた。AAMAに対応した鉛筆硬度、クロスカット、衝撃試験(デュポン式)、色差計など。また2年前にクォリコートジャパンが設立され、欧州の品質管理への対応からマンドレン(折り曲げ試験)、インパクトテスター(落体強度試験)、耐切削穴あけ試験及び碁盤目試験など13項目に対応した試験機器を整える。その他、沸騰水試験など耐久性の各試験に対応することでユーザーからの信頼を得ている。「塗膜の物性と密着性を中心に評価を行っている」と後藤氏。


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今年導入した赤外線バーナー

アルミ建材のサッシにおいて粉体塗装の採用が進んでいる。「ビルの多くの部材が粉体塗装に置き換わっていくだろう。サッシの室内部分は汎用粉体塗料で十分もつ。外部は高耐候性ポリエステル粉体塗料もしくはフッ素粉体塗料が採用されていくものと見ている。特に高耐候性ポリエステル粉体塗料はメタリックなどの意匠性が出せるので表情が豊かになる。一方のフッ素粉体塗料は、耐候性では液状のPVDFフッ素樹脂塗料同等かそれ以上の性能を有するが、レベリング性や色調が限定されることからまだ改良の余地があると思う」とコメントする。


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脱荷時の膜厚などの検査

同社は今年都内ホテルの屋上ルーバー4000m2をフッ素粉体塗料で塗装して納品した。建材でフッ素粉体塗料が採用された唯一の実績であろう。
同社は品質管理の高さと前処理における自社のノウハウを生かし建材製品や特注品に対応してきた。しかし、建築物件が減少傾向にあり、アルミ建材は海外での生産に移る中で、建材以外の電気機器、車両、更に大型のサイン関連などへと事業領域を広げていく方向にある。「小ロットで高いスペックの被塗物の受注を図るとともに鉄やアルミといった複合部材への対応も強化していく。一方で、これまでの下請的な立場から自社の商品化を進めていく。塗膜メーカーといったメーカー的な発想で固有技術である表面処理のメリットを生かしていく」(後藤氏)。