2011/11/13 17:48

揺れるライン塗装No.162 ムベア・サスペンション・コンポーネント・ジャパン ムベアスタンダードの生産ライン

サスペンションのコイルスプリングやスタビライザーなど自動車用バネの総合メーカー・Mubea(本社・独Daaden)は昨年、埼玉県行田市にコイルスプリングの生産会社「ムベア・サスペンション・コンポーネント・ジャパン」(代表取締役製造・営業担当Andrezej Wojcikowski氏、代表取締役管理担当・眞山正樹氏)を設立した。東日本大震災により一次的に中断を余儀なくされたものの準備が整い、稼働を始めた。国内においては7年前に開発・セールスを行うムベア・ジャパンが設立されているが、今回の生産部門の立ち上げによって国内自動車メーカーへの対応が確立した。同社のコイルスプリングの粉体塗装ラインを取材した。
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工場前景

独・ムベア社はエンジン用バルブスプリングやホースクランプの実績において世界№1のシェアを誇る他、サスペンション用のコイルスプリングでは日本発条に次ぐ№2のシェアを持つ。また同社は世界に33拠点(16製造拠点)を擁しワールドワイドな展開を進めており、2010年の売上高は9億2,000万ユーロ(約1,000億円)とここ数年2ケタ成長を維持している。 同社は成長著しいアジア圏への拡大を戦略的に進めており、インドに次いで中国と日本で同時期に生産拠点を立ち上げた。国内の生産拠点である行田市の工場はもともとショーワのボート事業の埼玉第2工場。ショーワの事業再編に伴いボート事業が浜松の浅羽工場に移管することになり、ムベア・サスペンション・コンポーネント・ジャパンが賃貸することになった。

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副工場長・石渡泰世氏

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グループリーダー・高澤幸一氏

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中山健太郎氏

「7万m2の土地の半分を使用し、約20億円を投資して設備を導入した。サスペンションはムベアにとって大きなウェイトを占めており、2008年のサスペンション用コイルスプリングの生産量は450万本であった。とりわけ急成長を遂げるアジア圏でのシェア獲得が目的でインド、中国、日本と相次いで生産工場を建設した」と同社副工場長の石渡泰世氏は述べる。
しかし、国内の自動車生産は人口の構造的な問題と為替変動のリスクから現地生産が進む中で減少傾向にある。「日本の自動車メーカーは国内実績を重視する。日本で採用したものを海外生産でも採用する。従って海外でムベアのサスペンションを日系メーカーに採用して頂くには日本で生産し、実績を上げることが求められている」(石渡氏)と事情を説明する。7年前に設立したムベア・ジャパンはドイツ、北米に次ぐ開発拠点との位置付けだ。

冷間成形によるコイルスプリング

同社のサスペンション用コイルスプリングは冷間成形で生産しているのが大きな特長。通常は熱間成形で行われており、高温加熱してバネ成形(コイリング)を行い、焼き入れ・焼き戻しといった熱処理工程を経る。
それに対し、冷間成形は常温で加工でき、低温焼鈍しによりバネ特性を出すというもので、熱処理が容易で品質安定性に優れるといった特長を有す。「高温の熱処理を必要としないことから省エネ、CO2削減に貢献するとともにコイルスプリングの径やピッチを自由に変えられる」(石渡氏)といったメリットを強調する。
コイリングラインの概略はデコイルマシンによる冷間成形後、テンパー炉で低温焼鈍しが行われコイルの歪みを取り除き、続いてコイルのへたりを防止するホットセッテイングを経て強度を高めるために一度冷却され、ショットブラストのような小さな鋼球を高速でコイルスプリングの表面に打ちつけて疲労限度を高めるショットピーニングを行い、レーザー刻印の工程。
すべてムベアが定めた設備を使用し、管理もムベアが定めたマニュアル通りに行われる。また移載・セットはロボットで行われ、完全自動化が図られている。


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コイルスプリングのサンプル

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コイリングライン

ムベアスタンダードですべてを管理

コイルスプリングの塗装はエポキシ樹脂系粉体塗料が採用されており、これは世界のスタンダードのようだ。特に防食性が求められることからエポキシ系を使用している。「バネが折れるのはサビが原因」というようにコイルスプリングは自動車部品でも重要部品の扱いとなっている。
ムベアが使用する塗料、前処理剤はすべて本国で承認された品質のメーカー指定となっており、塗料はアクゾノーベル製のエポキシ粉体塗料。前処理剤(化成)はセメタールのリン酸亜鉛。
塗装ラインは前処理ラインから粉体塗装ラインまでの一貫ラインとなっており全長420m。600mmピッチのラインスピード2.4m/minに設定。


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前処理ライン

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コイルスプリングの粉体塗装

前処理ラインは脱脂-第1水洗-表面調整-化成処理-第2水洗-第3水洗-第4水洗-純水洗-水切り乾燥(90℃×30分)の工程。各水洗槽はスプレー式となっており、化成処理はディッピング式を採用している。「スプレー式のノズルの位置、口径などすべてムベアスタンダード。また脱脂、表面調整、化成の各槽の温度管理は自動コントロールとなっている」とグループリーダーの高澤幸一氏。前処理ラインは次期投資を見越し、既に2ライン用の装置を導入している。

高回収の粉体塗装ブース

粉体塗装ラインはアウターブースで覆い、ワグナー社のスーパーキューブ1セットを設置。1レシプロ3ガンを対面に配置し、手前左右に角度を持たせた固定ガンを1ガンずつ備える。ガンはHiCoat-C4オートガン。
更に塗料の回収効率を高めるために、ブース内の床面を段違いの2段構造にし、壁面からと段違いからの2段階でエアパージをかけて対面のカートリッジで回収する仕組み。「2段階の水平気流(エアパージ)で塗料を回収する仕組みはうまくできている」と高沢氏。これは独・ワグナー社がムベアの依頼に応えて工夫したもので、ムベアの生産工場にはワグナー社の粉体塗装ブース及び機器が導入されている。


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工夫を凝らしたブース床面

1ガン当たりの吐出量は75g/minに設定。定期的に吐出量を実測している。またさまざまなコイルスプリングが流れる中で「ガン距離を一定にして吐出量で膜厚調整を行っている」と中山健太郎氏。規定膜厚は30μm以上となっており、「平均膜厚は50~60μmを狙っているが、コイルスプリングの形状から薄くなる部分もあり、その薄い部分を基準に膜厚調整すると100μm以上付着するところが出てくる」という。塗着効率は30%程度と決して高いわけではないが、黒1色なので回収効率を高めて効率よく運用していく考え。
焼付乾燥は200℃×45分(30分キープ)と温度を高めに設定している。乾燥炉の断熱材を厚さ200℃にすることで熱効率を高めている。その他、冶具やオーバーコンベアーのスカート、更には塗装後のハンガーに付着した塗料を高周波で解しブラシで取り除くなど通電不良を避けるための処置がきちんとなされている。またコイルスプリングを吊す冶具は使い捨てとなっており、その都度本国から送られてくる。


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熱効率を高めた焼付乾燥炉

重要部品としての厳しい品質管理

塗装後に脱荷したコイルスプリングは加重測定しマーキングを行い外観チェックによって良品と不良品の選別が行われる。「品質のバラつきを抑えるために前工程(加工工程)の段階で工夫を凝らし、直行率を高めるよう事前に対策を施している」と石渡副工場長。微に入り細を穿った管理と工夫は96年の歴史で培ったノウハウといえる。
性能評価ではバネの反発性能や軸ズレ量は全量検査する他、破壊テストの耐久性能はロットごとに抜き取りでチェックを行う。「メーカーによって耐久性能が異なる。リクエストに応じて数十万回の圧縮を繰り返し、その後にへたりや折れ具合の破壊テストを行う」と厳しい性能試験を繰り返した後、良品のコイルスプリングがサスペンションに組みつけられることを強調する。
ムベア・サスペンション・コンポーネント・ジャパンは社名通りサスペンションのコイルスプリングの生産を行う目的で設立された。「コイルスプリングは車のグレードによって仕様も異なり、今年だけで90種類に対応している。試作も含めると150~160種類に及ぶ」(石渡氏)とコメントする。
「海外ではホンダ(UK、US)などに採用実績を持つが、国内はゼロベースのスタート。数社に採用が決まりつつあり、2012年には140万本の生産を計画している」と石渡氏。


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検査識別ライン