2011/11/02 18:05

工場ルポ 中立電機㈱・豊明工場 塗装ラインを全面リニューアル

配電盤メーカーの中立電機㈱の板金・塗装部門を担う中立工業㈱(本社・愛知県豊明市、社長・小林富郎氏)は今年3月にS&Bで豊明工場の塗装ラインを全面リニューアルした。メインラインであった溶剤系塗装から粉体塗装に切り替えることで大幅な省人化と生産性の向上を図った。今回、リニューアルした同社の塗装ライン(粉体塗装ライン)を取材するとともに今後の方向性をうかがった。
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中立工業㈱小林富郎社長

配電盤のオーダーメイドにおいて国内トップの中立電機はメインの盤事業を中核にリニューアル事業、FA事業、エンジニアリング事業、パワーシステム・BD事業、特機事業の6事業を擁し事業展開を進めている。「現状、盤事業が売上高の80%を占めており、他の事業は緒についたばかり」と中立電機取締役副社長の中島進氏は控えめに説明する。


同社の盤事業は24kV受変電システムから高圧配電盤・制御盤・分電盤までトータルで対応できるところが強み。米国・スクエアディー社や仏国・シュネデールエレクトリック社と技術提携を図りプラグオンシステム採用のI-LINEインテリア配電盤システムやモジュール化された24kVコンパクト受変電盤、更にはプラグイン分電盤など省スペース、保守点検の省力化などさまざまなニーズに対応している。


国内の配電盤需要は2008年のリーマンショック後、約30%落ち込んだものの2010年度には配電盤、分電盤及び監視制御装置を含めた全体のマーケットは5,936億3,100万円と2008年度比で85%まで回復している。しかし設備投資抑制の影響を受け、低圧配電盤と比べて特別高圧・高圧配電盤の回復は鈍いようだ。
そのような中で、中立電機は今年3月に盤事業の競争力強化を目的に塗装ラインの全面リニューアルを行った。従来の塗装は溶剤系塗装をメインに前処理-電着-中塗り-上塗りの3コート3ベークを標準仕様にしていたが、今回中塗りと上塗りを粉体塗装に切り替えることで2コート2ベークを標準仕様にした。


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大型の配電盤ボックス(製品例)

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電気系統の組み付け(製品例)

合理化に向けた積極投資

豊明工場は鋼板からプレス・板金加工・塗装・組立ての一貫生産を行っている。板金加工はFAシステムの導入によって省人化が図られた。3次元レーザー加工機による裁断、NCタレットパンチプレスレーザー複合機やNCタレットパンチプレス及びベンダー(折り曲げ機)、NCシャーリング、更にロボット溶接、自動金型研磨機などの設備を整え、オーダーメイドに対応した生産体制を構築している。
塗装ラインは前処理からの一貫ラインで全長約300m。前処理と電着塗装は事務所内において集中管理しておりモニターで運行状況が把握できるようになっている。


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クレットパンチプレス

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折り曲げ加工機

また今回、パワー&フリーオーバヘッドコンベアを採用した。乗り換え(移載)のスムーズさに加え、被塗装物傾斜による水切り及び電着塗料の持ち出しを抑えられるといったメリットがある。「従来はラインがぶつ切りになっていて、移載が大変だった。今回は生産の合理化とともに安全性、メンテナンス性を配慮して採用した」と中立電機・生産本部・生産技術部課長の市瀬英則氏。
その前処理・電着塗装ラインは第1湯洗(ディップ)→第2湯洗(スプレー)→脱脂→第1水洗(スプレー)→第2水洗(ディップ)→表面調整→化成(リン酸亜鉛)→第3水洗(スプレー)→第4水洗(ディップ)→純水洗(ディップ)→電着→第1UF(スプレー)→第2UF(ディップ)→純水洗(ディップ)→焼付乾燥の工程。


水洗槽は9トン浴槽、電着槽(27トン)は3ステージにして3タクトで移動する仕組み。特に各工程でディップとスプレーによる洗浄を行うことで洗浄の純度を高めるよう工夫している。
電着塗料は日本ペイントの顔料沈降を抑え、常時攪拌を不要にした省エネタイプのパワーフロートを採用。また前処理・電着塗装での管理は酸度、pH値、温度管理を中心に行っている。


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化成被膜前処理槽

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電着塗装

フルスペックの粉体塗装設備

前処理・電着塗装後、被塗装物は移載して粉体塗装ラインと溶剤塗装ラインに分かれる。粉体塗装は配電盤・制御盤の標準色であるベージュとクリームの全ツヤと5分ツヤの4色に対応。その他のオーダー色は溶剤塗装で行う仕組み。
アウターブースで覆われた粉体塗装ブースはノードソン製の高速色替えシステム「カラーマックス」1基と補正用ブース1基を設置。ブース開口部はMAX高さ1600mm×長さ2800mm×幅700mmまでのサイズが塗装可能。形状記憶装置によりガン距離、塗料の(吐出)ON/OFFを行っている。


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1レシプロ6ガンを対面に設置しての塗装

またブースの構造材は塗料が付きにくい特殊プラスチック製のアポジーを採用。回収はブース内面両サイドからエアを中央に送り、床面に落ちた塗料を中央の溝に落とし、塗料を吸引・回収するツインサイクロンタイプ。
塗装設備は1レシプロ6ガンを対面に設置。今後の箱物への対応を考慮し底面と上面の塗装用に固定ガンを2ガンずつ4ガン配備する。ガンはすべてシュアコートガン。
更にガンコントローラーはiControl System。パネルスクリーンで集中作業が行え、塗装の条件によって5つのモードが選択可能となっており、「塗料の吐出量の定量化が図られ、設定条件の入力、呼び出しが容易。現状、膜厚やワークの種類により7パターンを利用しているが、今後増やしていく予定」と市瀬氏。


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ツインサイクロンによる回収

1ガン当たりの塗料吐出量は50~80g/min。電圧は80kV。平均膜厚は約60μmに設定している。ラインスピード3m/min。現状色替えはほとんど行わず、1日1色のパターンが多いようだ。
また補正ブースはロボット1基と作業者(1名)が付いて行っている。この補正ブースでは回収しないことからコンパクトなカートリッジ式を採用した。ロボットは箱物内面の補正用に導入、通常のパネルは折り曲げ部などの補正として作業者が対応している。


一方の溶剤塗装ラインは水洗ブースにエア静電ガンを使用し1レシプロ4ガンを対面に設置。塗装機器は旭サナック製のSUNAC4000制御システムにエア静電ガンEABを8ガン装備している。塗料はアクリル塗料、アクリルウレタン塗料など。
品質管理は目視による外観チェックと膜厚計による膜厚検査を全品行っている。なお粉体塗料は久保孝ペイントのポリエステル系粉体塗料。溶剤塗料は電着同様に日本ペイント製を使用。


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補正ブース

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溶剤系塗装ライン

エネルギー関連に向け事業展開

粉体塗装の導入によって作業環境の改善とともに、省人化、更には数値管理が行えるようになった。「塗装工場の作業者43人が31人になるなど大幅な省人化が図られた」(中島副社長)ことを強調する。
またラインスピードをUPさせたことにより、生産性は約20%アップ。同時に従来外に出していた塗装品の内製化が進んだという。
「4月から本格稼働に入って徐々に慣らし運転をしてきた。8月の粉体塗装の比率は63%(溶剤塗装が37%)まで高まってきており、次の目標としては粉体の比率を80%まで持っていく計画」(市瀬氏)とコメントする。そのためにユーザーに標準色を採用して頂くようお願いするとともに、箱物の塗装も標準色は粉体塗装に切り換えていく意向を示す。


今後、国内需要は大きな伸長が期待できない中で、同社は盤事業以外の事業の育成に力を注ぐとともに、エネルギー関連に注力していく方向だ。「太陽光発電、風力発電、蓄電池などいずれも電力に関わるテーマ。国内のエネルギー供給が見直される方向にあり、新しいビジネスチャンス。これまで培ってきた盤事業のノウハウを生かし需要創造に結び付けたい」と中島副社長は将来を見越した事業展開を進めていく方針を示す。

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豊明工場前景