2012/06/26 16:55

揺れるライン塗装No.164 オオヤマ塗装 大型部材に特化した新工場が稼働 

金属塗装の専門業者であるオオヤマ塗装(本社・群馬県藤岡市、社長・大山哲司氏)は昨年秋に藤岡市金井に新工場(金井工場)を建設、今年から本格稼働を始めた。投資金額は土地・建物と設備を合わせて4億4,000万円という規模。また年明け早々の2月に本社・藤岡工場の粉体塗装設備を更新し、生産効率を高めた。今月社長に就任した大山哲司氏に設備投資の目的をうかがった。
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新工場棟

オオヤマ塗装はこれまで高崎工場(高崎市)と藤岡工場(藤岡市)の2カ所に分かれて塗装を行ってきたが、生産の効率化を目的に2工場を新工場に集約し、跡地を売却する予定であった。しかし、昨年秋口から受注量が伸びてきたことから急遽藤岡工場を残すとともに本社機能を移管して本社・藤岡工場とし、新工場を加えた2拠点体制で新たなスタートを切った。

同社は1971年に現会長である大山寛樹氏が創業。群馬県下では比較的新興の塗装業者として事業を始める。「当然のことながら家電・自動車の部品関連は既存の業者がガッチリと押さえており、入る余地はなかったと思う。それ以外の建材を含めた大きな被塗物に絞り、事業展開を行ってきた」と大山哲司社長。 高崎市内で長さ6,500mmの長尺ものの塗装を行えるところは同社に限られる。もっと長いものを塗ってほしいとの声は強く、「これは他社との差別化に結びつく。それに寸法形状の大きなものや長いもの、更にかさばるものは海外には行かない。特に昨今の円高はユーザーの海外生産を促しており、国内の空洞化が懸念されている。そのような中で、我々のような中小・零細企業が生き残るには何か特色を出していかないと難しいと思う」と同氏。

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代表取締役 大山哲司氏

省エネ・省スペースに対応した新工場

新工場(金井工場)はまさに生き残りを懸けた社長の思いを具現化したものだ。鉄骨平屋建て延べ床面積2,665m2。旧高崎工場と藤岡工場を合わせた面積より2割ほど広い。新工場では街路灯、ガードレールや重量物の箱物などをメインに塗装している。
最大寸法は長さ8,000mm×高さ2,300mm×幅1,200mmに対応。またベルトコンベヤーへの重量負荷は600kgまで可能となり、鉄骨の塗装もできるという。ライン全長は240m。まっすぐ100m行ってターン(コーナー20m)して100m戻ってくる壮大な循環ラインだ。行きは前処理となっており、予備脱脂-本脱脂-第1水洗-第2水洗-表面調整-リン酸亜鉛処理-第3水洗-ノンクロム処理(アルミ皮膜処理)-第4水洗-第5水洗-水切り乾燥(130~180度)の工程。前処理はシャワー式を採用。
戻りは塗装と乾燥炉から成り第1ステージがエポキシ塗料による下塗りで、スプレーガンを用いた1レシプロ2ガンを対面に設置。第2ステージは粉体塗装で1レシプロ2ガンを対面に設置(藤岡工場から移設)。第3ステージが溶剤塗料の上塗り塗装となっており自動静電ガン(補正あり)で仕上げている。第4ステージが赤外線パネルヒーター(36枚)。第5ステージが熱風乾燥炉(230度まで可能)から編成されている。


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新工場の前処理工程

前処理は温度管理、濃度管理を厳格に行っており、リン酸亜鉛処理の処理剤は低温タイプを採用し、蒸気ボイラーを使用せず槽外ヒーター(温水ヒーター)によるノーメンテナンスにした。「温水ヒーターは耐圧容器の規格外であり、間接式なので結露が発生しない。またほとんどスラッジが出ない」と大山社長。更にアルミ皮膜処理槽(4,200L)はタンニンベースにチタンを配合したノンクロム処理剤で、既に同社でも実績を有し、住宅用のフェンスなど建材への対応を図ったもの。前処理材はすべてケミスター製品。
そして今回の新ラインの大きな特長である赤外線パネルヒーターはダイニッカが輸入販売しているサンキスサーモリアクター。ガスを熱源にする触媒反応タイプで熱風式の5~6倍の速さで昇温。かつ溶剤塗料、粉体塗料及び水性塗料でも使用可能というものだ。


「従来の赤外線ヒーターと比べてパワーが大きい。6m進行する間に160度まで昇温する。そして熱風式乾燥炉との併用によって省スペース化が図られた」という。通常であれば80~90mほどラインが長くなっていた。「それと一番大きなメリットは粉体塗装の仕上がり外観が良くなったこと」と説明する。


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下塗りのエポキシ塗装ブース

水性塗装と粉体塗装に対応

一方の本社・藤岡工場は自動車部品のクラッチブースターやエアマスターのピストン外部を水性塗装で仕上げている他、パチスロの筐体、ソーラー発電のコンディショナー及びベットなどを粉体塗装で行っている。
水性塗装を行っている自動車部品の前処理はリン酸鉄。それに対して粉体塗装製品の前処理はリン酸亜鉛処理となっており1本のラインで各々前処理と水性塗装、粉体塗装を行っている。
ライン全長は210m。前処理工程は脱脂-第1水洗-第2水洗-表面調整-化成処理(リン酸鉄・リン酸亜鉛)-第3水洗-第4水洗-純水洗-水切り乾燥(150度×15分)を経て水性塗装-粉体塗装-焼付乾燥(水性:140度×10分~230度×10分、粉体:180~200度×20分)。前処理はシャワー式。
自動車部品の水性塗装は関西ペイントの水性メラミン塗料を旭サナック製の自動エア静電ガン4ガンを使用して塗装(乾式ブース)しており、ブラック1色。「塩水噴霧120時間レベルの1次防錆的な塗装仕様。水性塗料は湿度と温度の変化によってタレ、ワキが発生する。特に冬場は粘度が高くなることから生塗料を35度まで加温し、希釈して20度・40秒の粘度で塗装を行っている」という。既に4年ほど施行しており、不良率はゴミ・ブツの付着で3%以下に納まっている。


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移設した粉体塗装ブース

粉体塗装はこれまで使用していたゲマ社のCRS-Hブースを新工場に移設し、新たにノードソンの高速色替えブース「カラーマックス・キューブ」を導入した。色相はホワイト、ブラウン、ベージュ、シルバーメタリック(ボンディング)の4色とクリヤー。塗料はいずれもポリエステル樹脂系塗料。
これまで使い捨てで行ってきた。「ひと月に2トンくらいを廃棄していたが、受注単価が厳しくなる中で、省資源化・省エネ化への対応を図り原価低減を進める目的で多色・色替えブースを導入した」と説明する。


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乾燥炉からの出口

高速色替えブースで効率化

導入したカラーマックス・キューブはコンパクトな省スペース対応で高さ1,800mmまで対応可能となっており、形状記憶装置によりガン距離、塗料の(吐出)ON/OFFを行っている。ブースの構造材は塗料が付きにくい特殊プラスチック製のアポジーを床面に採用し、壁面はPVCのWウォール構造。回収はブース内面両サイドからエアを中心に送り、床面に落ちた塗料を中央の溝から吸引・回収する仕組みだ。
塗装設備は1レシプロ5ガンを対面に設置し、補正に1ガンを配備。ガンは最新式のアンコールガン。ガンコントローラーはiControl System。パネルスクリーンで集中制御が行え、塗装条件によって5つのモード選択が可能というもの。「塗料の吐出によって20パターンを利用している」という。


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カラーマックス・キューブ

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1レシプロ5ガンを対面に設置

1ガン当たりの吐出量は60~80g/min。平均膜圧は約60μmに設定。供給器のパウダーセンターはSpectrum。ラインスピードは2.1m/min。
現状の色替えに要する時間は2人で12分ということだ。同ラインでの粉体塗料の使用効率は90%にあり、ひと月の塗料使用量は3トン。
また同社はブラックの半ツヤ専用の粉体塗装ブース(ノードソン製)を有しており、パチスロの筐体への塗装を行っている。同ブースは回収・再利用している。
同社では本社・藤岡工場の生産効率を高める方向にある。「粉体塗装の仕事が増える中で、大きなものと小さなものがセットで入ってくる。現在の水性塗装をコンパクトなラインにして新工場に移設し、そこに新たに粉体塗装ブースを導入することで粉体塗装の幅を広げたい」(大山社長)という。


続けてマーケットの動きとして「コスト競争が激しい中で、塗膜指定が入ると間違いなく粉体塗装になる。特にここ数年は下塗り粉体が増えた。また以前は多少イニシャルコストをかけてもコーポレートカラーにこだわったが、最近は色見本から近似色を選択するケースが多くなり、粉体塗装の採用に結びついている」(大山社長)と状況を述べる。
コストダウン、VOC削減、更に粉体の手離れの良さから本社・藤岡工場を粉体塗装の専門工場と位置付け、より特化した事業展開を進めていく。


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ブラックの半ツヤ専用塗装ブース