2012/09/01 10:15

コーティング用添加剤 WEB連載講座(1) ビックケミー・ジャパン

ビックケミー・ジャパン

ビックケミーは、湿潤分散剤、表面調整剤、消泡剤をはじめ、コーティング、インキ用およびプラスチック用途での様々な添加剤を取り扱い、日々新製品開発に注力し、機能性製品のラインアップの充実を図っています。 一方、お客様から添加剤とは何か?その役割、有用性のご質問をお受けすることも多く、BYK社提供の文献をもとにコーティング用添加剤の物理、化学的基礎をWEB連載にてご紹介いたします。

コーティング用添加剤  少量の添加で ‒ 大きな効果


はじめに
私たちの身の回りは日常、何らかの方法でコーティングされた素材であふれている。 (図 1)表面コーティングの主な理由は、以下の3点である。
• 光学的外観と装飾性を高める
• 素材の保護
• 付加価値


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図1

コーティングには、長い歴史があり、近年のコーティング処方は多様になっているが、いずれも樹脂・顔料・溶剤の3つの原料がベースとなっている。まず樹脂は、より正確には被膜剤だが、最終的に被塗装物上に固体塗膜を生成するポリマー材料である。次に顔料およびエクステンダーは、不透明なコーティングを生成するために着色および隠蔽性を付与する。そして、有機溶剤や水などの溶剤は、製造時および塗布時にコーティングを扱いやすくするために樹脂を溶解したり希釈したりするのに必要となる。これらを主たる原料としながらも、ほとんどの処方で添加剤が使用されている。添加剤は、通常少量で用いられ、一般的な添加量は全配合に対して、0.01-0.1%程度である。少ない添加量にもかかわらず、液体時と塗膜時に際立った効果を発揮する。添加剤は消泡・レベリング・凝集・沈降等、各種の問題解決に使われる。また、他の素材コーティング剤では得ることのできないスリップ性の向上やUV安定性などの表面特性を与える。このように、添加剤は問題解決に役立つ(図2参照)。以前は、問題発生時のみ、最後に添加することが行われていた。(例えば、顔料分離による色の不具合、別名:色浮き・色分れ)しかしながら今日では、添加剤はほとんど全てのコーティング処方にあらかじめ配合され、添加剤の選定は、塗料配合において重要度を増している。たえず、性能向上が求められ、環境への問題等、添加剤はますます重要になっている。マーケットにおける塗装系の成功の成否が添加剤によって決まる場合もある。添加剤の使用により多様な成果を生むことができるが、非常に特殊な効果の全てをここで論じることはできない。添加剤について説明する文献は少なく、また、書籍のなかでも添加剤の章はかなり短い。塗料添加剤の役目を理解するためには、塗料の製造と塗料の塗布に関する物理学と化学の基本は重要でかつ有用である。


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図2:問題解決として有用な添加剤;消泡剤なしの塗料表面(左)、消泡剤あり(右)

添加剤はその効果により、以下のように分類される。
• 湿潤分散剤
• 表面調整剤
• 消泡剤
• レオロジーコントロール剤
• 光安定剤
• 防腐剤


しかしながら上記の分類で完璧というわけではない。化学構造面からみた分類は、添加剤の区分には必ずしも適当ではない。化学構造は上述の主分類のなかの細分類としての意味がある。実際多くの用途では、添加剤の化学構造はそれほど重要ではなく、添加剤が要求される効果を示すということが重要である。添加剤と他の原料の間に必ずしも明確な区別をつけられるわけではない。なぜなら、樹脂、溶剤、エクステンダーもあるものは、少量であたかも添加剤のように用いられ、塗装品質に影響を与えるからである。

湿潤分散剤

顔料を含む塗料製造において、最も重要なプロセスの一つは、固体顔料を液体のバインダー溶液に、均一に分散させることである (分散工程)。この顔料分散のステップが適切でない場合、以下のような、多様な種類の欠陥をひき起こす。
• 凝集
• 光沢低下
• 色相の変化
• 色浮き/色分れ
• ベナードセル
• 沈降
• 粘度の変動

分散工程

通常顔料はアグロメレート(塊)した状態で市販され、粒子同士が互いに接触し大きなかたまりの状態である (図 3、左参照)。この顔料のアグロメレートは、分散工程を経て、小さな粒子となっていき、一次粒子まで小さくなるのが理想である。アグロメレートとは、顔料の塊で、粒子間に空気と水分を含んでいる。粒子間の相互作用力は比較的小さく、個々の粒子は互いに粒子の角で接触(点接触)しているため、通常の分散機によってほぐすことができる。
分散工程において、機械的エネルギーにより、アグロメレートは破壊され、小さな粒子を作る。


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図3: 顔料分散と凝集

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図4:顔料の濡れ、分散、安定化のプロセス

粒子が小さくなれば表面積が増大し、樹脂溶液との大きな界面を有することとなり、系はこの高いエネルギー状態から、以前の低いエネルギー状態に戻ろうとする。これは、微細に分散された顔料が、凝集状態に戻る事実から理解されるだろう。このフロキュレーション(凝集)は、見かけの構造上、アグロメレートと似ているが、顔料の隙間が空気ではなく、樹脂溶液で満たされている点が異なる。


顔料分散工程は、次の 3 つに分けることができる(図 4 参照)。第一のステップは湿潤で、顔料表面の全ての空気と水分が樹脂によって置換される。固体/気体界面(顔料/空気)は、固体/液体界面(顔料/樹脂)に置き変わる。樹脂は、アグロメレート構造の隙間に浸透することが求められる。第二のステップは分散で、本来の顔料分散工程を意味する。機械的エネルギー(衝撃力とせん断力) を通して、顔料アグロメレートは壊れ、粒子系は小さくなる。そして、最後の第三のステップである安定化で、コントロールできない凝集体の形成を防止するために、顔料分散体を安定化させる必要がある。後で述べるように、顔料粒子は特別な技術により適切な距離を保ち、互いに接触することはない。添加剤は第一ステップ (湿潤) と第三ステップ(安定化) に影響を与えることができる。「湿潤剤」は、樹脂の顔料アグロメレートへの濡れを促進する。「分散剤」は、顔料分散の安定性を良くすることができる。また、同じ製品に「湿潤」と「分散」の両方の機能を持たせることができる。

BYK社(ドイツ BYK-Chemie GmbH, Dr. Wilfried Scholz 著)提供の"Coating Additives"をベースにビックケミー・ジャパン株式会社が翻訳・監修いたしました。
日本語訳総監修 ビックケミー・ジャパン株式会社 若原 章博
翻訳 同社 日野 真司 樋口 公志 横手 涼 菊池 雄 神代 智史



BYK company profile:
BYKは塗料、インキおよびプラスチック業界で使用される添加剤では、世界的なリーディングサプライヤーの一つです。添加剤は塗料、インキおよびプラスチックの製造工程で使用され、製造工程を最適化し、最終製品の品質、外観を大きく向上させます。BYKでは、湿潤分散剤、スリップ性、レベリング性を向上させる表面調整剤、消泡剤、レオロジーコントロール剤をはじめ、
ナノテクノロジーを応用した添加剤、ワックス添加剤等を取り扱っています。