2012/11/20 17:54

実践ボディショップマネージメント(6) 第5章 私たちのお客様とは? 伊倉大介

第5章 私たちのお客様とは?

前回は集客からアフターケアまでの一連の流れを解説しました。そこで「安心感・満足感」を得て頂くためには、自社のサービスにマッチした顧客が誰なのかを把握し、その顧客に向けた営業活動をしていく必要があるということをお伝えしました。今回は私たち(当社)が顧客についてどのように考えているのかをお話し致します。


まず基礎になるのは「マーケティング」という考え方です。
マーケティングとは(諸説ありますが)一般には「顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである」(アメリカ・マーケティング協会2007) とされています。 
この考え方に基づけば、私たちのすべての活動は「顧客」に「価値を感じて頂ける」ように構成されていなくてはなりません。板金塗装業で言えば、車のキズやヘコミがキレイに直ったという結果だけでなく、問い合わせから始まって納車引渡し・アフターケアに至るまで、お客様が「この工場に任せて本当によかった」と心から感じて頂けるような業務プロセスの設計・作り込みをしていくべきです。


そのためには、「自社の顧客は誰なのか」「その顧客は何に価値を感じるのか」をしっかり検討・把握し、日々の業務を改善していく必要があります。
私たちは具体的に「商圏(顧客はどこにいるのか)」「商品(何を顧客に提供できるのか)」「価格(いくらで提供するのか)」を考え、「顧客層(どんな生活環境でどんな車に乗っているのか)」という視点で情報を分析・検討し、典型的な顧客はどのような人なのかを考えています。そして顧客に対し何を訴えれば成約につながるかを考え、どんなアフターケアを望んでいるのかの仮説を立てます。その仮説に基づいて広告出稿や販促活動、サービスの改善を行い、反響の検証を繰り返しています。以下、個々に解説していきます。


・商圏について
板金塗装業の場合、顧客は「その工場に車を持ち込めるエリアの顧客」に限定されます。このエリアが工場にとっての商圏になります。必ずしも明確に確定できるものではありませんが、過去の顧客情報を地図上にプロットすることで、自社工場を中心にどこからどこまで商圏が広がっているのかが把握できます。これにより、どこに広告を打てば受注につながるかが予測できます。


・商品について
当然、商品・サービス自体にしっかりとした価値を持たなくてはなりません。その上で重要なことは「顧客が何を欲しているのか」です。板金塗装であれば、時間がかかっても高い品質が大事なのか、そこそこの品質で素早く仕上げてほしいのか、アフターケアを重視しているのか、よく検討・把握する必要があります。


・価格について
商品・サービスの中身と同時に価格設定も大事になってきます。安ければ良いと言うものでもありません。適正な利益を頂きつつ、顧客に満足してもらえるような設定を考えなくてはなりません。そのためには感覚的な値付けではなく、社内コストを管理し、適正なレバーレートを算出しておくことが重要です。


・顧客層について
顧客といっても年齢・職業・性別・生活環境・ライフスタイルなどさまざまです。また自動車はその顧客の層を反映し、それぞれの車によって求める好みやニーズは異なるはずです。コスト重視であれば軽自動車、家族であればミニバン、高級住宅街であれば高級車や輸入車、年配の方であれば落ち着いたセダンとそれぞれ乗っている車は異なります。そのため「車の板金塗装」という大枠で自社のサービスを捉えず、それぞれの車に合ったサービスを組み立てていく必要があるのです。

常に考え、取り組む姿勢を崩さない

今回ご紹介した事例はあくまで一例です。当然それぞれの工場によって検討すべき事柄は違いますし、置かれた環境に合わせて完璧なマーケティングを行っている企業は、世の中を見渡してもどこにも存在しないはずです。 
当社もまだまだ十分満足のいく活動ができているわけではありません。お客様にアンケートを書いてもらってデータを集め、クレームの内容を現場につぶさにフィードバックし、リスティング広告のキーワードのテストを繰り返しながら、少しずつ改善するという日々を今も続けています。
私たちの業界に限ったことではありませんが、まずは何よりも経営者が「顧客起点で考える」という姿勢を現場に示し続けることが大切です。「車を直してあげているんだ」という悪しき過去の姿勢を打ち破るには、新しい習慣によって上書きするしか方法はありません。「顧客起点で考え、繰り返し改善する」ことを徹底し、経営者自ら習慣化させていくことこそが、自社をより高みへ上らせる近道なのではないかと考えています。


そして、経営者を先頭に社員全員が自分たちの顧客像を認識し「顧客にどんな価値が提供できるか」を考えていくことで顧客に安心感・満足感を得て頂ける仕事が提供できるようになります。作業現場の職人たちがお客様視点で作業ができれば、直接作業結果として形にすることができるのです。
次回は、この「顧客起点で考える会社」を作るための組織コミュニケーションについてお伝えします。

プロフィール:

伊倉大介氏(いくら・だいすけ)。1976年生まれ。東京都目黒区出身。
1997年伊倉鈑金塗装工業代表取締役に就任。2003年コーティング事業開始。2007年オークション代行業務開始。2008年廃車受付業務、レンタカー業務開始。2011年BP経営支援会社「アドガレージ」設立、代表取締役に就任。
2012年1月現在、社員10名、修理工場8人体制。