2012/12/17 14:38

揺れるライン塗装No.165 パナホーム 集約、一貫生産で合理化を達成

パナホーム(本社・大阪府豊中市、社長・藤井康照氏)は今年4月に本社工場(滋賀県東近江市)に柱・梁・アタックフレーム(耐力壁)などの鉄骨構造部材の加工から粉体塗装の一貫生産ラインを立ち上げた。これまで協力工場で生産していたものを内製化することで、大幅な合理化と生産性の向上を可能にした。今回、内製化に踏み切った同社の粉体塗装ラインを取材した。
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住宅試験センターの前景

同社の本社工場(湖東ファクトリーセンター)は西の生産開発拠点として1969年にオープンした。33万5,000m2の敷地に生産工場の他、研究部門も擁している。この西に対して、東の拠点は筑波工場(茨城県)で、国内2拠点体制で臨んでいる。
本社工場の生産量は「リーマンショック以後、一時的に落ち込んだものの既に2007年レベルに戻っている」と技術グループ・チーフマネージャーの久保田弘義氏は述べる。昨年4月に投入した新工法のHSシリーズが順調に推移している様子。


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技術グループチーフマネージャー久・久保田弘義氏

本社工場では大型パネル構造の住宅商品と、新開発HS構法による住宅の部材の生産を手掛けている。屋根、床、壁をパネル式にし、現場で接合して住宅の骨組みを作ってしまうというもの。「大型パネル構造は900ピッチでボルト留を行っていたが、HS構法は150ピッチにすることで設計の自由度を高めた」と久保田氏は特長を説明する。
またパナソニックとの連携による『創蓄連携』によって住宅におけるエネルギーの自立を目指すなどエコアイデア家づくりを進め、住宅と家電商品によるCO2削減に向けた取り組みを積極的に展開している。

内製化による一貫生産ラインの構築

今回の構造部材の内製化は外注先の設備の老朽化に伴い、敷地面での拡張が困難なことから本社工場(第2工場内)に設備を導入し、本格生産に踏み切った。「外注先から本社工場に運ぶ運賃やリードタイムを考えると、骨組みとパネルを一緒にして現場に配送することでコストダウンと同時に輸送CO2の削減に結びつく。更に集約、一貫生産による合理化と生産性の向上は一層の競争力を高めることができる」と久保田氏。従来と比べ生産リードタイムは3日短縮できるようになった。


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アタックフレームと柱の加工

第2工場の敷地面積は3,000坪を有し、梁切断・穴加工ライン、柱溶接ライン、梁溶接ライン、アタックフレーム溶接ライン、プレス加工ラインなどの機械加工設備に塗装の粉体塗装ラインを擁する。また品種数は多種に及び、構造部材であるからH鋼などの型材は10mを越し、数百キロの重量に及ぶものもある。
同社では20年前から構造部材の3製品(柱・梁・耐力壁)を粉体塗装で行ってきた。他社がめっき及びカチオン電着塗装を行う中で、「密着性、防錆性に優れたエポキシ樹脂系粉体塗料を使用することで、厚膜でかつ防錆性能に優れた構造部材としての特色を出してきた」(同氏)と他社との差別化を強調する。


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着荷

塗装ラインは前処理からの一貫ラインとなっており、ライン全長は300m。ラインスピードは3m/min。
着荷(脱荷)は昇降機を利用してキャリーにハンガーをかけ横吊にする。1ハンガー当たり10本まで可能。この部分をパワー&フリーにして着荷を行い、そのまま横列にストックしながら順次(垂直に移動し)コンベアーラインに移載していく仕組み。
前処理ラインはシャワー式を採用し、脱脂-水洗-化成処理(リン酸亜鉛)-水洗-水切り乾燥の工程。脱脂及び化成処理は温度管理されており、それぞれの処理容量は1200L。水切り乾燥炉を通過後、クーリングゾーンに入り、被塗物を50℃前後まで温度を下げて塗装を行う。


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パワー&フリーからコンベアーに移載

熟慮されたブースと乾燥炉

粉体塗装はシンプルなプラスチックブースを直列に2台設置し、1台は自動塗装+補正、2台目は自動塗装で行っている。
現状の塗料使用効率は96%にあり、3%は微粉として廃棄している」と説明する。
被塗物は柱のようにまっすぐなものばかりではない。H鋼に角管を溶接しているものもあり、前補正して仕上げている。


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前処理ライン
 

今回導入した塗装機器はワグナー社の製品。「工場見学をさせて頂きシステムの考え方がシンプルで、かつトラブルが少ないことが採用の要因」と理由を述べる。また使用しているコロナタイプのオートガンはHiCoat-C4ガン。ソフトなスプレーパターンが得られるというもので、1ガン当たり50g/minとかなり絞った吐出量に設定している。「膜厚は50μm以上を仕様にしているが、平均膜厚は80μm程度になっている」と久保田氏。
焼付乾燥炉はダイニッカが輸入販売している仏・SUNKISS社の触媒反応式赤外線パネルヒーター・サンキスサーモリアクターとLNGによる熱風乾燥との併用で省エネと省スペース化を可能にした。サンキスサーモリアクターは開口部片側に12枚、両面で24枚を使用。「鋼板の厚さもさまざまなことから熱効率が良く、短時間で昇温できる赤外線パネルを使用することで良好な塗装品質を実現した」と胸を張る。


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水切り乾燥炉

同社は20年前から構造部材の塗装に粉体塗装を採用しているが、自社で塗装を行うのは今回が初めて。機器の選定から設備の導入、更に初期の条件出し及び搬送システムとの整合性は自社で行った。「最後の2カ月間は大変だった。特に前処理と焼付工程が難しい」というのが実感のようだ。


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無排水処理システム


トータル管理による更なるコストダウン

琵琶湖は京阪神の水瓶として重要な貯水源。従って滋賀県の水質規制は厳しい。同工場では排水を水切り乾燥炉の排熱を利用して蒸発させる無排水システムを導入し残渣を産廃物として業者に引き渡す。ちなみに焼付乾燥炉の廃熱は赤外線パネルヒーターの出口のエアーカーテンとして利用している。環境に配慮した方式を採用。
このように同工場はエネルギーの再利用や省エネの設備を完備し省エネ・CO2低減に向けた取り組みを積極的に進めている。「現在、パナソニックと連携し温度制御、ボイラー制御、ファンの動力制御などトータルで一括集中制御できる仕組み作りを行っている。このトータル制御によって工場の省エネ、省資源化、更には数値管理によって経営の指標に役立てられる」(同氏)とシステム管理に意欲を見せる。


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自動塗装とハンドガンを装備したブース

また今後、塗料の樹脂系の見直しを図る考えだ。エポキシ樹脂は高値安定にあり、省エネの観点から焼付温度の低温化とともに、エポキシ/ポリエステル樹脂系粉体塗料(ハイブリッド)などの検討を進めていく意向を持つ。「評価では耐久性、防食性においてエポキシ樹脂系粉体塗料でもいける可能性がある。配合比を考慮し、かつ低温硬化のハイブリッドタイプなどによって更なるコストダウンを図りたい」と久保田氏。
同社が目指すのは、安定した品質の確保とコストダウンの実現。そのため、顧客との出会いから引渡しに至る住まいづくりのプロセス(設計~資材調達~生産~物流~施工)において、トータルでSCM(サプライチェーンマネジメント)の革新に取り組んでいる。生産・物流の工程はその核となるものだ。
同社は、今後更にSCMの革新を進め、高品質で省エネ、快適に暮らせる住まいを供給することで、より一層の成長を目指す構えだ。


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自動塗装ブース

 

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赤外線パネルヒーターによる乾燥炉