2013/01/21 19:58

揺れるライン塗装No.166 ヨシモトポール 鋼材加工と表面処理のノウハウ生かす 

各種ポール専業メーカーであるヨシモトポール(本社・東京都千代田区、社長・由井克巳氏)は昨年創業50周年を迎えた。創業時はコンクリートポールの製造販売業からスタートしたが、ポールの総合メーカーを目指して、鋼管柱の製造も5年後から開始した。以後、鉄の加工技術に加え、表面処理を施す一貫生産体制で差別化を図ってきた。メインの群馬工場には技術開発センターを有し、先を見据え新たな可能性にチャレンジしている。今回同社の群馬工場を取材した。
20121121-6-1.JPG 
本社工場

今年、ヨシモトポールは耐候性と機能性を兼ね備えたフッ素樹脂塗料とともに、1コート1ベーク仕上げに適した塗装方法を確立した。今回開発した二液タイプのフッ素樹脂塗料は同社・群馬工場の336ラインに適応でき、また新製品である面-開口部照明柱に採用する方向だ。同時に遮熱機能を付与したフッ素樹脂塗料や表面張力を利用した着雪対策用フッ素樹脂塗料も合わせて開発した。「長期耐久性能による美観維持と機能性を付与することで差別化を図り、市場へのアピールを進めていく」と技術開発センター長・知的財産室長の塩原秀夫氏。


20121121-6-2.JPG 
技術開発センター長知的財産室長・塩原秀夫氏

一方、本体のポールは長いもので10数メートルにも及ぶ。従って常に安全性が求められる。同時に据え付ける施工期間の短縮といったリードタイムのニーズに対応するため、ボルト接合ではなく上柱を下柱にはめ込んでいく摩擦接合による組み立て式を考案する他、従来の円断面構造から風荷重を考慮した長円断面構造にするなど優れた開発製品を手掛けてきた。「素材の知識とともに新たな加工技術が求められる。冷間加工の機械設備なども整え、自前のノウハウを蓄積してきた」と塩原氏は胸を張る。


また標識柱や街路灯のポールは景観材料としての要素も強く、デザイン性が求められる。形状とともに表面処理が重要なポジションにあり、同社が加工技術と表面処理に力を注ぐ所以はこの辺にある。
しかしながら、市場的に見るとこれまで標識柱や街路灯のポールなどはほとんどが官公庁からの発注であった。公共投資の予算削減や高速道路拡張の時代は終焉しつつあり、そのような中で同社は民需への対応を急いでいる。「社会的環境は同じで、ポールメーカーにとどまらず鉄塔メーカーなども我々の領域に参入してきており、厳しい競争の渦中にある。いかに差別化を図り、かつコストダウンをしていくかが勝負になる」(同氏)と現状の環境を説明する。


20121121-6-3.JPG 
オリジナルの長円断面構造ポール

20121121-6-4.JPG 

荷置場

品種に応じて7ラインで塗装

群馬工場は道路を挟んで事務所棟側の鋼材加工工場(1万2,900坪)と表面処理工場(1万5,600坪)から成る。現状の生産品目は照明・デザイン柱(街路灯)が49%と約半数を占め、信号柱が17%、防災・ネット柱が15%、標識柱が7%。表面処理別に見ると塗装製品(溶剤塗装)は55%と高く、続いてメッキ製品が31%、粉体塗装製品が7%、その他が7%の比率だ。「昨年の震災後、災害時の警報や避難誘導に使用する防災無線のスピーカを装柱する組み立て鋼管柱の需要が旺盛」(同氏)と状況を述べる。


鋼材加工と表面処理は自前で行っているものの溶融亜鉛メッキは外注に出している。溶融亜鉛メッキを施した製品は塗装前にメッキ表面仕上げが行われる。ベルトサンダーによる研磨掛けの下地調整。この研磨工程はさまざまな形状に対応するため人海戦術で行われている。この作業が工程の中で一番大変な工程ということだ。
表面処理工程は品目により7ラインから構成されている。塗装製品の多くは溶剤系塗装(アクリルシリコン系がメイン)で仕上げており、粉体塗装はEVA(エチレン酢酸ビニル系樹脂塗料)の流動浸漬塗装を採用している。


20121121-6-5.JPG 
化成処理ライン

20121121-6-6.JPG 

流動浸漬塗装

粉体塗装の代表的なポールライン(最大寸法9,000mmL×Ф270×600mmH、ハンガー荷重500kg)はメッキ表面仕上げ後に前処理を行う。その工程はアルカリ脱脂-水洗-水洗-表面調製-化成処理(リン酸亜鉛カルシウム)-水洗-水洗-水切り乾燥。各浴槽は12,500mmL×1,500mmW×2,000mmHのサイズで浸漬式を採用。水切り乾燥は130℃×60分に設定しており、時間をかけて水分を除去する。被塗物を230~250℃まで加温して塗装に入る。
ポールの両サイドをパウダーが入らないよう封印・ジョイントし浸漬槽内で回転させてコーティングする。その時間は5~6秒で、膜厚450μm(標準膜厚)の被膜を形成。そしてブロアーで常温まで冷却させて組付け工程に移る。
色相はブラウンをメインに8色。色替えは8色分の流動浸漬槽を用意し、槽ごと入れ替える仕組みだ。


20121121-6-7.JPG 
ハンガー式溶剤塗装ライン

溶剤塗装を行っているハンガー式連続塗装ライン(336ライン)は被塗物の最大寸法12,000mmL×800mmW×15,000H、最大重量700kgに対応したもの。メッキ表面仕上げと前処理は粉体塗装と同じ。このラインはパワー&フリーでロの字形に構成されており、22本のキャリーに1本ずつ横吊にし、塗装エリア2箇所で、下塗り・上塗りの塗装(手吹き)を施す。乾燥炉はバッチ式の焼付乾燥炉で数キャリーまとめて焼付乾燥(100~130℃×40分)を行い、空冷して組付け工程に移る。平均膜厚は35~40μm。
1,000kgを超える被塗物重量の塗装はバッチ式の大型製品塗装ラインで対応している。
またポールの支線の埋め込みアンカー部分を粉体塗装するミニハンガーラインは最大寸法が900mmL×700mmW×850mm、最大荷重500kgに対応した専用ライン。前処理と塗装の一貫ラインとなっており、脱脂-化成処理(リン酸亜鉛カルシウム)-水洗-水洗-水切り乾燥、予熱を行い塗装-焼付乾燥-空冷の工程。塗料はEVAとペット樹脂塗料の流動浸漬によるもの。ペット樹脂塗料の焼付温度が350℃と高温焼付タイプを使用している。年間20,000本の生産を行っているということだ。
その他に、静電塗装ガンで吹き付けるハンガーライン(最大寸法は3,300L×1,700W×600H、最大重量200kg)がある。


20121121-6-8.JPG 
バッチ式の焼付乾燥炉

20121121-6-9.JPG 

ミニハンガー式粉体ライン

モノ作りのノウハウと伝承に注力

製品開発と確性テストを行う技術開発センターはメーカーとして重要な役割を担う。主な試験・測定機器は促進耐候性試験機(サンシャインカーボンアーク)、塩水噴霧試験機、塩乾湿複合サイクル試験機、ヒートサイクル試験機などや各物性測定機器と建柱時の曲げ強度やねじり強度を測定する試験装置。
更に超音波膜厚計、電磁式膜厚計、フーリエ変換赤外分光光度計、マイクロスコープなどの測定機器が整い鋼材加工及び表面処理に求められるデータはすべて自社で検査・測定できる体制が整えられている。また製品検査においてもロットごとに品質チェックを行い、データ取りを行って出荷する仕組みになっているという。


20121121-6-10.JPG 
試験・測定機器

社員教育にも熱心だ。技能の伝承も含め「実技研修を行い、全体的な底上げに努めている。また各種の資格を取得するよう社員に指導している。塗装技能士は1級10人、2級9人の19人が資格を取得している。塗装と同時に溶接関連も技能を必要とする世界。溶接は社内検定を行い、切磋琢磨して技能の研鑽に励んでいる」と塩原氏。
昨年創立50周年を迎えた同社だが、基本的なポリシーは脈々と受け継がれている。「社会資本といった事業領域の中で、安全、環境、景観を重視した製品開発を進めてきた。摩擦接合や長円断面構造、制振装置は安全性に配慮した製品であり、太陽光発電などの自然エネルギーの有効活用や粉体塗装の使用は環境への配慮による。更に都市における景観からデザイン性を考慮した形状や色使いなど非常に多くの因子が絡んでくる。モノ作りのノウハウの凝縮がここにある」と感慨深く述べる。
表面処理設備は導入後20年以上が経過する。今後設備更新を含め、また関西拠点の滋賀工場との位置付け、関連付けを念頭に新たな対応を進めていくことになる。


20121121-6-11.JPG 
同社製造の標識柱及び街路灯