2013/01/05 17:11

コーティング用添加剤 WEB連載講座(5) ビックケミー・ジャパン

ビックケミーは、湿潤分散剤、表面調整剤、消泡剤をはじめ、コーティング、インキ用およびプラスチック用途での様々な添加剤を取り扱い、日々新製品の開発に注力し、機能性製品のラインアップの充実を図っています。 一方、お客様から添加剤とは何か?その役割、有用性のご質問をお受けすることも多く、BYK社提供の文献をもとにコーティング用添加剤の物理、化学的基礎をWEB連載にてご紹介いたします。

コーティング用添加剤  少量の添加で ‒ 大きな効果

レオロジーコントロール剤

塗装作業性・使い勝手の大きな部分に影響を与えるが故、流動特性は最も重要な塗料の基本技術のひとつである。レオロジーとは液体の流動特性を表現するための科学的基礎であり、レオロジー添加剤は粘性挙動をコントロールし変更するために用いられる。たとえば塗料を貯蔵すると顔料やフィラーの沈降や再撹拌が困難な沈殿物が形成されるケースがある (図 33 参照)。


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図33:顔料の沈降 (沈殿)

また傾斜または垂直面での塗装時、厚膜部でのタレが発生することがしばしばある (図 34 参照)。


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図34:垂直面でのタレ

低せん断領域を高粘度にすることで、これら沈降やタレを大幅に改善することができる。しかしながら、このようなレオロジー特性は、脱泡/消泡性や塗装面のフロー性には好ましくない影響 (塗膜表面への泡の上昇が遅い、又表面のレベリングが損なわれる等) を及ぼしかねない。「適正」な流動特性とは、常に各々の塗装条件によって、決められることは明らかである。

塗料のレオロジー

流動特性を示す鍵になる要因はη、すなわちフローに対する抵抗である。ほとんどの塗料では、粘性は普遍ではなく、さまざまなパラメータに依存している。塗装の観点から最も重要なパラメータは温度依存性に加え、塗料系がさらされるその機械的応力である。塗料の粘性プロファイルは、塗料が異なったせん断力下で、粘度がどのように変化するかを示したものである。実際の用途から、比較的大きなせん断力の範囲で考慮されなければならない (図 35 参照)。すなわち塗料の製造時(分散、混合、充填)、塗装時 (ロール、はけ、スプレー) では、せん断力は大きくなる(>1000s-1)。一方、貯蔵時や塗装後、溶剤の蒸発、架橋による塗膜の硬化時においては重力のみを考慮していればよく、比較的ずり速度は小さくなる(<1s-1)。
広範囲のずり速度領域でのレオロジー特性は、回転式粘度計によって測ることができる。この種の測定方法では、測定される液体は、静止表面と動的表面の間でせん断される (図 36)。


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図35:代表的なせん断力の範囲

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図36:回転式粘度計

測られるパラメータは、回転のために用いられた力と、結果として生じる回転速度となる。これらのデーターから粘度は計算され、粘度とせん断力の関係は通常、粘性カーブとして表される(図 37 参照)。粘性がずり速度に依存していない場合、最も単純な流動特性が見られる。それはニュートニアン挙動と知られ理想的な液体で起こり、たとえば、水や純粋な溶剤や鉱物油で観察される。相当する粘性カーブは横軸 (ずり速度) と平行になる。ずり速度に依存しない粘性は、どのずり速度で測定 (一点測定) しても同じ粘性プロファイルを得ることができる。


塗料でこの流動特性は、めったに起こることがなく、また技術的観点から望ましくない。最もわずかなせん断応力すなわち重力は、材料を流動させ、すなわち、タレを発生させることとなる。そのような処方をすれば、沈降にも不利に働く。塗料でより多く見られる流動挙動としては、擬塑性流動として知られる疑似塑性流動挙動がある (図 37 参照)。この場合、粘性はずり速度に依存しており、ずり速度の増加で粘性が低下する (せん断力により粘度が低下する)。


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図37:粘度曲線

そのような材料はまた、降伏値を示す。材料は低ずり速度ではフローせず、降伏点に達した後にフローが始まる。塗装技術の観点ではこの流動挙動は有利に働く。すなわち、高いずり速度で低粘性である材料は、製造時・塗装時のハンドリングは容易となる。低いずり速度、たとえば貯蔵時で粘性が高い場合は、顔料沈降を防ぐのに効果的である。同時に垂直面での塗装面のタレ性は大いに向上することとなる。しかしながら、低ずり速度での高粘性は塗装面のフロー、脱泡性には不利に働く場合がある。塑性性流動の材料のあるずり速度における粘度を、ずり速度全体にわたり測定するならば、それは意味がある。反対にそのような材料を、一点のずり速度下のみ測定することはほとんど価値はない。広いずり領域にわたる完全な粘性カーブのみが、その塗料系を十分に示すことが出来る。粘性がせん断に依存することに加えて時間に依存するときは、チキソトロピー流動と呼ばれる。擬塑性流動ではずり速度に応じて違った粘度を示す。しかしながら、このときの粘性は時間に対しては一定である。もし、チキソ性物質が継続的なずり速度でせん断されるならば、粘度はせん断時間の増加と共に減少することが確認される。一旦せん断力がおさまれば、粘度は最初の値にもどる。チキソ性液体の粘性曲線は典型的な「ヒステリシス曲線」を示すこととなる。曲線は「上昇」カーブと「下降」カーブに分けられる (図 38 参照)。測定される粘度はサンプルがさらされるせん断過程に依存するので、あるずり速度における粘度を一義的に決めることはできなくなる。


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図38:チキソトロピー

レオロジーコントロール添加剤

「増粘剤」または「チキソ剤」として知られるレオロジー添加剤は、塗料の貯蔵時及び塗装時に「適確」なレオロジーが生成され、最高の粘性パフォーマンスが得られるようレオロジー挙動を変化させる物質である。これらの化学構造は様々である。水性処方のための標準な増粘剤にセルロースエーテルがあり、これらはすべてセルロースから誘導される (図 39 参照)。


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図39:セルロースはいくつかのシックナーの元となる (セルロースエーテル)

水酸基の置換によりHEC、MHEC、CECのような製品が生み出されている。水中でこれらのセルロース誘導体は水和して、ポリマー鎖のからみ合いと水素結合により非常に粘りけがある溶液を形成する。基本的にそれらは水系を高粘度にする。もし、セルロースエーテルが少量のアルキル基のような疎水部を含むならば、会合型増粘剤を得ることができる。疎水性グループはそれ自身同士、またはバインダー分子と結びつくことができ、厚膜化に貢献するネットワーク構造を作成することができる (図 40 参照)。アクリルシックナー(HASE)、PUシックナー(HEUR)は水性処方用に近年開発され、それらもまた会合型増粘剤である。


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図40:会合型増粘剤

表面にシラノールグループを持った球状のシリカ粒子(焼成シリカ)は、塗料中での水素結合を通して、大きな 3 次元ネットワーク構造を形成する (図 41 参照)。


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図41:焼成シリカの粘度効果

シラノールグループの少ない「疎水性」シリカもまた、少なくともいくつかの親水性グループが存在する限り、用いることができる。有機金属粘土は、有機変性された薄層シリケートである。使用されるシリケートとしてはベントナイト(アルミニウムシリケート)とヘクトライト(マグネシウムシリケート)があり、4級アンモニウム化合物によって有機変性されている。鱗板状の粘土構造の端に沿って、塗料中での有機金属粘土の粘性発現の基となる水酸基が確認できる。その水酸基が水素結合によりネットワーク構造を形成する。塗料中で有機金属粘土を活性化させるには、せん断力によってこの粘土構造体を塊にせず、互いに切り離すことが必要であり、それによりネットワークが形成される (図 42)。


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図42:凝集したオルガノクレー(左); クレーペレットの分散(中央);ネットワーク構造(右)

色々な塗料に簡単に混合できることから、有機金属粘土ペースト(有機溶剤で有機金属粘土をジェル化したもの)はごく一般的に使用されている。
その他に 3 次元のネットワーク構造を形成させるいくつかのレオロジー添加剤(水添ヒマシ油や変性ウレアなど)が市場で用いられている。それらがもたらす粘性や、ハンドリング・副作用はそれぞれ異なっており、最適なパフォーマンスが得られるよう、これらを組み合わせて使用されている。

BYK社(ドイツ BYK-Chemie GmbH, Dr. Wilfried Scholz 著)提供の"Coating Additives"をベースにビックケミー・ジャパン株式会社が翻訳・監修いたしました。
日本語訳総監修 ビックケミー・ジャパン株式会社 若原 章博
翻訳 同社 日野 真司 樋口 公志 横手 涼 菊池 雄 神代 智史

BYK company profile:

BYKは塗料、インキおよびプラスチック業界で使用される添加剤では、世界的なリーディングサプライヤーの一つです。添加剤は塗料、インキおよびプラスチックの製造工程で使用され、製造工程を最適化し、最終製品の品質、外観を大きく向上させます。BYKでは、湿潤分散剤、スリップ性、レベリング性を向上させる表面調整剤、消泡剤、レオロジーコントロール剤をはじめ、 ナノテクノロジーを応用した添加剤、ワックス添加剤等を取り扱っています。