2013/04/15 09:43

揺れるライン塗装No.167 エヌエスオカムラ 津波被害から新工場立ち上げ 

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工場外観
岡村製作所グループのエヌエスオカムラ(本社・岩手県釜石市、社長・佐藤省一氏)は東日本大震災の被災により生産停止を余儀なくされた。しかし、昨年5月に新工場を立ち上げ生産を再開。新設した粉体塗装ラインは徹底した数値管理を行うことで、生産性の大幅向上、品質アップを実現。不良率は0.05%を切るレベルを達成した。今回、同社の新ラインを取材した。

エヌエスオカムラは1991年、岡村製作所、新日本製鐵(現・新日鐵住金)、関西岡村製作所の共同出資により岩手県釜石市に設立。鋼製家具メーカーである岡村製作所の東日本の生産拠点として、オフィス什器、書架、ラック製品などを製造している。
そんな中、突然大きな災難が降りかかる。2011年3月に発生した東日本大震災による津波の被害を受けて、海岸近くに位置していた工場は全壊し、生産停止を余儀なくされた。幸いに従業員130名は全員無事であった。

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製造部技術課課長・新沼伸一氏

その後、8月1日に工場立ち上げを発表し、2012年5月より新日鐵住金の釜石製鉄所構内に事務所及び工場を移転、新設し生産を再開した。生産品目も以前のままで生産数量も落とさず新工場で生産していくこととなった。新工場は敷地面積2万2,048m2、建物面積1万2,212m2。従業員は、高齢、または他地域への移住により退職者が出たため、130名から105名に減った。
生産再開が決まり、生産量も前工場の規模をそのまま引き継ぐ形で計画を立てた。新工場では従業員も減少したこともあり、新工場設立の際にはコンパクト化、生産効率の向上を目指して設計を進めた。
製造部技術課の新沼伸一課長は「今回の新工場立ち上げでは可能な限りの情熱を傾けた」と当時を振り返る。

水性・粉体2ラインを1ラインに
同社の塗装ラインは操業当初は水性塗装の2ラインで塗装を行っていたが、2007年からは水性塗装1ラインを粉体塗装に変更し、水性塗装と粉体塗装の2ライン体制としていた。そして、今回の新工場ではコンパクト化を図り粉体塗装1ラインに決定。「工場全体でみて、塗装を中心としたレイアウトにした。塗装ラインに向かう形で板金、加工工程が組まれている」(新沼課長)。塗装ラインは前処理からの一貫ラインとなっており、ライン全長は448m。ライン速度は4.8m/min、ワークのかけ降ろしの機能からこの速度となっているが、コンベア能力としては7.5m/minまで可能。ワークサイズは高さ3,000㎜×奥行き600㎜。ラインは朝8時~夜3時までの2直体制で稼働している。

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オフィス什器・ラック

前処理設備はケミコート製で、リン酸鉄処理を行っている。処理工程は湯洗→脱脂(予備)→脱脂→水洗(2回)→化成処理→水洗(2回)。焼付温度は160℃×20分。粉体塗装は水処理ブースが不要なため、前処理設備はクローズドシステムとし環境に配慮した。
また、塗装設備は日本パーカライジング製の粉体塗装ブース及びガンを採用した。塗料自動定量供給装置は「ジャストフィード」、静電塗装ガンは「GX8000シリーズ」、塗装ブースは「ツイン・ディバイドマルチカラーブース」を採用した。

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ロール成形ライン

「機能比較を検討した上で日本パーカライジング製に決めた。決め手となったのはリアルタイムでガンから出ている粉(粉体塗料)の量を管理できるシステム」(新沼課長)。
同社の吐出量は150g/min前後(250gまで可能)。一般的にガンの吐出量やエアー量を設定し、それが正常に稼働している前提で塗装を行っているが、実際には吐出状態に異常が発生している場合がある。ここで問題となるのは、その異常が品質不良となって現れるのが焼付乾燥後ということ。そうなったら手遅れでリコートにまわすしかなく、生産性のロスとなる。

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着荷工程

それを防ぐために同社では現状把握にこだわった。リアルタイムでのガンからの吐出状態の管理を実施。静電容量の変化量を計測することでガンホースから出ている塗料の量が分かり、設定値と実測値がリアルタイムで表示される。「実測値を正しく把握することで、問題が起きたときの必要なアクションをすぐに起こせる」(新沼課長)。

1日に40回ほど色替えを行うため、塗装ブースは高頻度に色替えに対応した短時間色替えシステムのツイン・ディバイドマルチカラーブースを採用した。このブースは2つのブースが並んでおり、片方のブースで塗装作業している一方で、もう片方のブースではオフラインで清掃が可能となる。そのため、ハンガーの取り外しが不要で、塗装休止時間の1分間分の空きハンガーで済む。

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シャワー式前処理工程

また、塗装はロボット2基が前補正を行い、レシプロ2基を対面に設置し、1レシプロに10ガンが装備されている。そのブースが直列で並んでいるため2ブースで計4レシプロ・40ガンとなっている。加えて必要な場合は2名がハンドガンで後補正を行える。
塗料はエポキシ/ポリエステル樹脂系のハイブリッドタイプがメイン。耐候性が求められる製品にはポリエステル樹脂系を使用している。塗料は重量単価のみでなく複合単価で採用先を決定した。「特に歩留まりや粒径分布を考慮した。品質に関してもコンタミ具合を試験し、休憩時間でも乾燥炉はそのままのため、耐黄変性強度も重視した」(新沼課長)。
塗料は回収を行っており、歩留まりは85%。塗料使用量は15トン/月。標準色は11色、白系が60%。膜厚は50~60μm(黒色は30μm)。

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ロボット塗装機

数値管理で生産性・品質を追求
どこの塗装ラインでもゴミ・ブツ問題は大きな課題。同社でも品質不良の要因の半分がゴミ・ブツだった。新工場ではゴミ・ブツを防ぐために空調管理を徹底した。
塗装ブースはインナーブースとアウターブースで囲われておりゴミ・ブツの進入を防ぐとともに、建屋、アウターブース、インナーブースの気圧を定量管理し、圧力バランスを取ることで気流を発生させない状態を保っている。

また、製品不良の約3割の要因が乾燥工程の脱臭装置で発生するヤニの問題となっていた。ヤニの付着を防ぐため、脱臭工程時にはワークは流せず、約20分に相当する空白ハンガー(50本)が必要であり、それは生産性の大きな損失となっていた。

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粉体塗装ブース

そこで、以前は脱臭のために燃焼したガスを炉内に戻していたが、新工場では燃焼したガスを炉内ではなくダクトに戻す設計とした。そうしたことで炉内にヤニの付着がなくなった。「炉内の壁面は全くヤニが付着しておらず、建設時のままの状態」(新沼課長)。結果として、ヤニ不良ゼロを達成。更に空白ハンガーの必要もなくなり、生産性は十数%も向上した。
加えて、生産性を向上させる上で、同社ではハンガーに吊っているワークの面積を連続的に測る仕組みを作った。「時間当たりのハンガー数は決まっているので、どれだけの面積を吊れるかを追求した」(新沼課長)と数ではなく面を重視した。面積が増えるということはそれだけ塗装することができるとの考えだ。
具体的には、ハンガーに吊ってあるワークを連続的に側面から画像処理しデータ化する。それを観察することで効率の悪い吊り方、そしてその要因を探り改善を図っている。この取り組みを行った結果、吊り数を増やすことができただけでなく、異部材を組み合わせることが効率的であると判明したり、斜めに吊ることで重なりを防ぐといった干渉条件の回避が可能となったりして大幅な生産効率アップにつながった。

また、同社ではコンベアラインのコンベアの状態についても管理している。コンベアの挙動を測り波形をパターン化しており、長期的なスパンで監視し変化の把握に努めている。
こうした取り組みは同社のメンテナンスの考えとして、コンディションベースメンテナンス(CBM)をモットーとしているため。メンテナンスには壊れてから行うブレイクダウンメンテナンス(BDM)、定期的に行うタイムベースメンテナンス(TBM)、そして状態保全に努めるCBMがあるが、同社では究極とも言えるCBMを行うことで故障を未然に防ぐことに努めている。
このように塗装ガン状態管理、ゴミ・ブツ削減、ヤニ削減に取り組んだ結果、不良率は大きく低減できた。2010年当時でも0.7~0.8%程度と優れた数値だったが、現在は0.05%を割るほどまでに抑えられている。1日に約2万点の品物を塗装する中で不良製品は実に10個以下しかないことになる。足元では更に改善し不良ゼロの日も実現し始めている。

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工場レイアウト