2013/10/22 17:33

実践ボディショップマネージメント(17) 第16章 顧客管理について 伊倉大介

第16章 顧客管理について

前章では、様々な取り組みの土台となる「現状把握」について触れました。今章では顧客の現状把握の側面を持ち、かつ営業上も重要な取り組みとなる「顧客管理」について話をします。

「顧客管理」とは文字通り、既存の顧客に対しての必要なデータを整理し、管理することです。その上、そのデータを何のために蓄積し、それをどのように活用するかを考えなければ、管理する意味がありません。顧客管理は「顧客関係管理」または「顧客維持管理」とも呼ばれています。最近では「アマゾン」や「楽天」など、大きなビジネスを展開している企業は、細かいデータ収集をして、そのデータを活用し、顧客との関係維持やセールスに利用しています。アマゾンや楽天で買い物をしたことがある方は、お気づきかもしれませんが、自分の興味がある商品がオススメ商品として紹介されると思います。これは顧客管理を徹底し、その顧客がなにを欲しているかを分析し、それを営業活動に生かしているからです。では、私たち板金塗装業界において、顧客管理をすることで実現できることはなんでしょう?

まずは集客という視点で考えてみます。新規顧客に工場を認知してもらい、実際に仕事につなげる手段としては「口コミや紹介」と「宣伝広告」の2パターンが考えられます。その中で顧客管理と密接な関係にある広告宣伝について触れます。私たちの工場では主にインターネット広告を利用していますが、1件の成約を得るために4,000円から5,500円の広告費がかかります。広告により新規顧客を獲得し続けるということは相応の経費がかかるのです。それに対して、既存客にアプローチをして、成約を獲得することにかかる経費は電話代やはがき代など、より小さなものとなります。ただし、板金塗装というサービスは「事故があったから」「車をぶつけたから」という事由によって需要が発生しますので、積極的な営業は不向きですし、一人の顧客から頻繁に依頼があることも少ないと思います。そこで、「いざという時に思い出してもらう」ということに目的をシフトします。すると最低限、年に1、2回のアプローチが必要となります。そこで顧客データを活用し、年賀状、クリスマスカード、暑中お見舞い、修理後のフォローの電話など、自工場にあった方法で顧客にアプローチして、「板金塗装修理ならあの工場」という意識を持ち続けてもらうことが重要となります。営業というよりは「関係を維持すること」に顧客データを活用するのです。

また、顧客名や連絡先、車種や過去履歴を管理しておくことは顧客の安心、信頼につながります。顧客目線で考えると、事故の都度いろいろな工場をまわり、違う工場に依頼することは労力もかかりますし、ストレスとなります。各工場がしっかりとデータ管理をすることは、顧客に「管理されている安心感」を得ていただき、他社への乗り換えのない継続的な信頼関係を築く上でも必要となります。

私たちの工場では「顧客カルテ」を作り、既存客一人一人の過去データをファイルでもデータでも蓄積しています。過去にご利用いただいた履歴が一目瞭然となっていて、再入庫前にカルテを引き出して確認します。板金塗装は下地の処理跡や、クリヤー塗装の艶引けなど、時間の経過とともに過去の作業箇所に不具合が生じるケースもあるでしょう。それを再入庫時にフォローするには過去の履歴管理が必須となってくるのです。私たちは作業指示書も残して管理し、再入庫時にも作業者に確認してもらいます。見積書などのお客様伝票の履歴だけでなく、作業指示書も再確認することで、作業者も過去作業をイメージしやすくなります。

更に将来、車検整備や自動車保険、車販などの事業への展開をする上で、蓄積された顧客データは「宝物」となります。特に車検事業においては適正な時期にアプローチが必要なので、車検期日の管理は必ず行っておくことをお勧めします。既存のサービスだけを考えたものではなく、将来の事業拡大を見据えたデータ蓄積をしておくことは、将来においての価値のある営業ツールを作り上げていくことになるのです。

無理のない効率的な顧客管理

顧客管理は日々のデータ整理の積み重ねです。顧客と相対した時に、常に情報を聞き出す必要があります。「面倒くさい」という意識で必要最低限の情報を引き出すだけでは、目の前にある「宝物」を自ら逃している形になります。情報を聞き逃さないようにすることはもちろん、「情報を引き出す」という意識を持つことが大切です。また、新規データの入力やデータの更新は、日々の業務の中でコツコツと続けないと、一時的に事務工数がかかり、継続しないという結果を招きます。それを避けるには、管理業務を仕組み化して、無理なく継続できる体制を作る必要があります。特に顧客管理のソフトやシステムは、蓄積した顧客データから特定のデータや履歴を抽出することが容易にできますし、既存顧客へのアプローチ時期を自動的に整理することもできます。板金塗装見積りソフトでも顧客管理機能がついているものも多々ありますが、機能的には劣っています。正確な顧客データ管理をし、顧客への継続的なアプローチをするためには、必要なデータを正確に管理できる「顧客データ管理システム」を導入し、管理業務を仕組み化することをお勧めします。

プロフィール:

伊倉大介氏(いくら・だいすけ)。1976年生まれ。東京都目黒区出身。 1997年伊倉鈑金塗装工業代表取締役に就任。2003年コーティング事業開始。2007年オークション代行業務開始。2008年廃車受付業務、レンタカー業務開始。2011年BP経営支援会社「アドガレージ」設立、代表取締役に就任。 2013年8月現在、社員12名、修理工場9人体制。