2014/01/20 12:00

揺れるライン塗装No.168 大岩マシナリー 粉体塗装導入で効果大 省エネや生産性向上に工夫

送風機の一貫生産を行う大岩マシナリーの国見事業所(福島県)では2013年6月に溶剤塗装ラインから粉体塗装ラインに切り替えた。回収再利用、厚膜化といった粉体塗装の利点を生かし、コストダウン、品質向上、生産性向上など大きな効果を得られた。粉体塗装導入の取り組みとその効果についてレポートする。

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 大岩マシナリー国見事業所

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㊧藤田健太郎所長と㊨八島亨部長

大岩マシナリーの国見事業所では荏原製作所の汎用送風機及びボイラー用送風機をOEM生産している。設計から材料加工、製品組み立てまでの一貫生産体制をとっており、生産台数は月に3,000~4,000台を数える。工場の敷地面積は約3万4,000㎡で、そこに大型送風機向け生産ラインと小・中型送風機向け生産ラインがあり、その小・中型用の塗装ラインで粉体塗装を導入した(大型向けは溶剤塗装)。


 旧溶剤塗装ラインではいくつか課題があり、例えばワークが複雑形状のためハンガーピッチを大幅に空けなければならず生産性が低かったり、エッジ部の厚膜化が難しくサビが発生してしまったりするなどしていた。
 そこで2007年に塗装ラインの設備更新の検討を開始。一度はカチオン電着塗装に決めたが、ちょうどそのときリーマンショックが起こり、受注が低迷したため設備更新計画を一旦ストップした。状況が改善した2010年に再び設備更新を検討し直した際に、生産性や外観品質などを考慮した結果、粉体塗装の導入を決めた。


 従来、屋外仕様では50μmの膜厚が必要なため2コート2ベークだったが、それを1コート1ベークで済ませられ、しかも作業者の塗装スキルの差による不具合発生のリスク減も期待できる点も決め手の1つとなったという。
 生産部部長の八島亨氏は「ワークの形状が複雑なため、レシプロ塗装だけでは塗着効率が悪く手吹き塗装を併用していた。しかし、塗装作業者によって塗り漏れや基準膜厚が確保できていないなど品質の均一化の徹底が難しかった。粉体塗装ではそうした問題がないと判断した」と述べる。

トリボガン採用、入り込み性重視

 粉体塗装ラインのコンベア全長は約250mで、着荷→前処理→水切り乾燥→粉体塗装(レシプロ+手吹き補正)→焼付乾燥→脱荷という流れ。被塗物の最大サイズはW860×H1,500×L1,200。コンベアスピードは1.8m/minに設定。「最大で1.9mまで上げられるが、1日の生産シミュレーションをしたとき、7時間で終わらせるには1.8mが最適となった」と八島部長。その後、1時間かけて清掃を行っている。


 前処理は予備脱脂→脱脂→水洗(2回)→化成皮膜→水洗(2回)の工程で、化成皮膜は溶剤塗装のときの排水処理を継続して使用できるため、リン酸鉄処理を行っている。また、粉体塗装ガンは旭サナック製のトリボ帯電方式自動ガン「T-3a」を採用。複雑形状なワークに対して何が最適かを判断するため、コロナガンとトリボガンで、凹部への入り込み、凸部の溜まり、補正量が少なく済む、塗り肌感について検証を実施して選定した。


 粉体塗装ブースは専用色ブースと指定色ブースを並べており、専用色ブースではレシプロ2基を対面に設置し、1レシプロにはガンを4台搭載している。指定色ブースでは同様に4ガン搭載のレシプロ2基を対面に設置し、更にハンドガンで補正を行っている。標準膜厚は60μmを確保。

塗料回収と吹き捨てを使い分け

 専用色は1色で粉体塗料は回収再利用しており、この色で約80%を占める。残り20%が指定色で色数は3色。1日2色程度の色替えがあるので、こちらのブースでは回収せず吹き捨てで行っている。当初、指定色でも回収再利用を検討したが、色替えのための清掃時間が1色につき30~40分かかってしまうため生産性が落ちてしまう。そのため、ガンの交換だけで済む吹き捨てで行うことにしている。


 粉体塗料はナトコ製のポリエステル樹脂系を使用、その際、小ロットでの対応力が決め手となったという。上述したように専用色が80%を占め指定色は少ない。しかも1色換算にすると使用する粉体塗料の量は更に少ないため小ロットで購入できる利便性を評価した。3色以外の指定色に関しては溶剤塗装で上塗りを塗って対応している。
 粉体塗料はポリエステル樹脂系でも低温硬化タイプを採用。焼付温度も160℃×20分と、粉体塗装としては低めに設定している。加えて、焼付乾燥炉を山型式にすることで熱が中にこもり省エネに寄与している。


 また、新ラインではハンガー吊りにも工夫を凝らしている。ワークの形状が複雑なため、以前はどうしても空きハンガーが出るなど効率が悪かったが、ハンガー自体の形状を工夫し混合吊りができるように改良した。同社ではラインに流すとき、同形状のものではなく1台分ごとに生産している。塗装が仕上がればその流れでスムーズに次の組み付け工程に進む。そのため塗装済み在庫だけが増えることはない。

粉体導入で清掃時間が3分の1

 粉体塗装を導入したことによる効果として、塗料使用量、人件費、省エネ、VOC量などでメリットが出た。塗料使用量について、溶剤塗装のレシプロは効率が悪く補正が必要な個所が多かったが、粉体塗装では塗着効率が上がった上、塗料を回収再利用するため使用量が削減できた。当然、塗料購入代も削減される。


 人員については、溶剤塗装の時は2人が塗装作業を行っており、清掃・メンテナンス時には3人で水洗ブース水槽内、水流板、ブース壁のスラッジ清掃に約3時間かけていた。一方、粉体塗装に切り替えてからは、塗装作業者は1名が補正を行い、清掃時にはブース内はエアーブローをして外は掃除機で掃除する。時間は1時間。なお、塗装担当は補正1人、ワークの吊り降ろし2名の計3名(以前は4名)。そして、作業者にとっても環境は改善されている。ゴミブツ対策として塗装スペースはアウターブースで囲まれており、ブース内は空調設備が入っているため作業しやすい環境となり、かつて使用していたスポットクーラーから大きく改善されている。


 エネルギーに関しても、脱臭炉の削除、コンプレッサー負荷率低減、定量供給装置によるムダ吹き抑制、山型乾燥炉による熱流出防止、低温硬化粉体塗料使用などにより電気代、LPG代、上水道代などが大幅に削減できた。生産性についてもハンガーの工夫、2コート2ベーク→1コート1ベーク、吹き捨ての採用などで効率は向上した。品質面でも端面が錆びにくくなったなど、「ユーザーの定期アンケート調査結果でも評価は高まった」(八島部長)と粉体塗装のメリットは出ている。


 
大型用でも粉体化検討

 同社で生産している送風機のサイズは小型、中型、大型とあり、今回の粉体塗装導入で小・中型用を粉体塗装化し、生産性、省エネ、コストなど大きな成果が得られた。そのため、老朽化が進んでいる大型用塗装設備でも粉体塗装化を検討している。すべての塗装設備を粉体塗装化することで、更なる改善が期待できる。


 加えて、「経営的な観点からはもちろんだが、工場で働く従業員からも粉体塗装導入の評価は高い。ブース内に空調設備が入ったことで仕事がしやすい環境に変貌した」(八島部長)と作業面でもメリットは大きい。
 その他、治具の剥離設備導入による投資効果を検討したり、ハンガーフックの見直しによる生産効率の向上を図るなど更なる改善策を進める。


 「溶接や製缶といった塗装の前後工程との兼ね合いでも改善すべき点はある。工場の能力を最大限に生かすため、やるべきことは数多くある。ひとつひとつ目標を設定しクリアしていくことで改善を進めていく」(八島部長)。