2014/03/05 14:56

添加剤WEB講座 表面への機能付与‐添加剤・技術の新展開(2) マイカ・メタリック塗色用添加剤Part.2 ビックケミー・ジャパン

「表面への機能付与---BYK添加剤・技術の新展開」をコアテーマに、 「マイカ・メタリック塗色用添加剤Part.1/Part.2」 、 「新技術を使った表面調整剤の新たな可能性 インクジェット、コーティング用」、 「付着性向上」の連載企画です。 前号は、「マイカ・メタリック塗色用添加剤Part.1」 湿潤分散剤、レオロジーコントロール剤をご紹介しました。 (前号Part.1 から続き)

マイカ・メタリック塗色用添加剤 Part.2 添加剤技術部 若原章博

ワックス

ワックスは表面の保護や艶消し効果、ブロッキング防止などを目的として塗料に用いられるが、ここではアルミ・マイカの配向に関して説明する。図15に主な合成ワックスを示した。これ以外に半合成によるものとしてアマイドワックスがある(写真2参照)。図15に戻る。図下の名称はBYK社の商品名であるが、CERAFAK®、CERATIX®は溶剤系のワックスディスパージョン、AQUACER®、AQUATIX®は水系のワックスエマルジョンにつけられている。これらはいずれもワックス主成分が粒子状で、溶剤あるいは水への分散体である。溶剤系は加熱溶融させたワックスを、冷たい溶剤中に希釈・冷却することでディスパージョンにしている。水系では乳化剤を用いて、ワックス主成分をエマルジョン化することによってワックス添加剤をえている。


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特性面ではCERAFAK®、AQUACER®は系の粘性にほとんど影響を与えないもの。CERATIX®、AQUATIX®は末尾にtixがついている通り、チキソトロピックないし擬塑性流動を与える。ワックス成分は図15に示したように、ポリエチレン、エチレン酢ビニル、アクリル酸エチルなどを用いている。一般的にワックスの塗膜への機能特性は、その融点と極性で論ずることができる。低融点ならスベリ性を与える、高融点であれば逆にスリップ防止、低極性なら撥水性などであるが、本主題のメタリック・マイカ塗色への特性については、後に述べる。


溶剤系ではアルミの配向にCERAFAK®のタイプが、単独もしくは他のレオロジーコントロール剤との併用で用いられてきた。水系ではAQUACER®タイプ、つづいてAQUATIX®タイプが拡大しつつある。ここではAQUATIX®-8421での例を写真3に示す。上の写真はシルバー色を表面から拡大したもの。下の写真は同塗膜の断面である。左はレオロジーコントロール剤を用いない系、右はAQUATIX®-8421を配合した系である。レオロジーコントロール剤を用いないと、塗着後のウエット膜の流動に伴いアルミフレークが偏在化し、塗膜表面から見れば白黒濃淡となったムラが現れ、また断面を見れば深さ方向での局在化が観察される。


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実際の塗料には何らかのレオロジーコントロール技術が盛り込まれているので、写真3左に示すほどの偏在化は見られないであろう。もう少し詳しくワックスの効果を見るために、断面を拡大してみたのが写真4(倍率一万倍)である。樹脂マトリクスの部分にクラックのように見えるのがワックス成分である。それぞれつながってマトリクス中でネットワークを形成し、アルミフレークを保持している様子がわかる。


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図16にはレオロジーワックスのメタリックベースコート中での粘性発現と配向効果の模式図を示した。ワックスの機能を最大限に引き出すためには、ワックスディスパージョンを事前攪拌したのち、塗料あるいはアルミスラリーに添加するのを勧める。若干の熱(40度程度)をかけた方が、よりワックスが膨潤し効果的である。製品として供給されるワックスディスパージョンはワックス粒子間の相互作用により、見かけゲル状であり、攪拌が不十分であると、塗料に入れたときにゆるい凝集状態のままであることがある。この凝集はその後のプロセスで、たとえばサーキュレーションなどでシェアー・熱が加えられるとほぐれ、サーキュレーション前と比べて粘度が下がることがある。それによりマイカ・アルミの沈降や、凝集物によるフィルターの目詰まりなどが発生する。塗料の希釈・塗装のサイクルが早ければよいが、ライン塗装で週末の休止や、サーキュレーションが長い、配管中の圧力損失部分が多いなどの条件下では発生しやすい。レオロジーコントロール剤の種類と粘性、マイカやアルミペーストの粒度(分布)と濃度、顔料による粘性などの組成要因も組み合わさっている。


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ここで分散剤によるマイカ沈降防止のメカニズムを考えてみる。図17に、コントロール凝集のタイプの分散剤による、マイカ・アルミフレークの沈降防止の模式図を示した。ワックスや他のレオロジーコントロール剤とは異なり、分散剤はマイカ・アルミに吸着する。吸着しながら分散剤同士の相互作用(水素結合)により、ネットワークを形成し、沈降を防止する。攪拌(せん断)によりネットワークが一時的に断ち切られても、分散剤自身はマイカ・アルミに吸着しているので、それらが凝集することを防いでいる。攪拌がとまり、せん断力がなくなれば、分散剤同士のネットワークを形成しなおす。他のレオロジーコントロール剤は直接的にマイカ・アルミに作用できないのとは異なる。


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2C1Bなどクリヤーをベースにかける際に、ベースコートのワックスがクリヤーの仕上がりに影響を与える可能性がある。ベース自身の肌はもちろんであるが、ベース上へのクリヤーの濡れ性も、とりわけクリヤーが薄膜であれば影響は大きいであろう。(ここではクリヤーによる「モドリ」については考えない)
ワックス添加剤もその組成が、すなわちワックス自身の極性が異なると、ウエットオンウエットで塗装されるクリヤーのベースへの濡れ性の差が生ずる。一般に下の面が高極性の方が、その上に塗るクリヤーの濡れ性はよい。それによりクリヤーをかけた肌(薄膜)が影響を受ける。図18には、ベースに用いられるワックスの極性と仕上がりへの影響度を示した。


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表面調整剤

最後にマイカ・メタリック塗色の仕上がりに関して、クリヤーの因子について添加剤から考えてみる。弊社ではシリコンマクロマーを用いた新規のBYK®-3550を開発したので紹介したい。図19にクリヤー用の表面調整剤の特徴をまとめた。アクリル系は平滑性には有効だが、液の表面張力を下げないのでハジキ防止には効果がない。一方シリコン系は表面張力を下げるので、ハジキ防止や濡れ性向上には有効であり、表面の撥水性やスリップ性を付与することができる。ただリコート時のゴースティング・密着性など各種問題を抱える。そこで両者の併用が一般的であるが、たとえば耐ハジキ性を上げようと、シリコン系の添加量を増やすと、リコート性への影響が顕著になるといった問題が顕在化する。


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こうした課題の解決を目指し、弊社ではシリコンマクロマーを用いた新たなクリヤー用添加剤を開発した(図20参照)。従来の標準的なシリコン系添加剤は、シリコン骨格を有機変性(ポリエーテルやポリエステル)している。それに対してシリコンマクロマーを用いたBYK®-3550はアクリル骨格をポリシロキサン変性したものである。シロキサンの比率は前者が30-60%に対して、BYK®-3550は15%に満たない。


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塗料液中ではシリコン部分の活性能により表面張力を下げ、下地への濡れ性やハジキ防止効果を発揮する。塗膜形成後はアクリル骨格ゆえのレベリング性のよさを発揮する。シリコン部分は少量なので固体膜の表面張力への影響は極めて少なく、スリップ性やリコート性に影響を及ぼさない。たとえば通常のシリコン系レベリング剤では膜表層に局在化し、樹脂とは架橋していないので、溶剤などでワイプする(ふき取る)と、その部分のシリコンは拭い去られる。その結果、ワイプ部と非ワイプ部の間で表面張力が異なり、リコートの様に次の塗料を塗ると濡れ性の違いから、ワイプ部に筋状の模様が生ずる(ゴースティング)。これに対して、シリコンマクロマーを用いたアクリル骨格のレベリング剤BYK®-3550では、固体膜の表面張力には影響を与えないので、ゴースティングは見られない。なお表面の平滑性は、BYK Gardner社のWave Scan による測定データを、図21でご覧いただきたい。ちりちり肌を示すSW、うねりを示すLWともにきわめて良好である。汎用の添加剤の組み合わせ(アクリル系とシリコン系)と同等、もしくはそれ以上である。
なお図22にトップコート用の表面調整剤を載せた。アクリル系レベリング剤を中心に表示したが、撥水性や易洗浄性などの特殊機能を表面に付加するタイプも上市している。詳細については別の機会に譲りたい。


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まとめ

以上、アルミ・マイカなど光輝材;Effect Pigment使用塗色の、諸特性改善への添加剤からの提案を試みた。分散剤によるフレーク顔料のほぐしと安定化、レオロジーコントロール剤ならびにワックス添加剤の選定、新規開発のクリヤー用表面調整剤の紹介などに、御興味をお持ちいただけたであろうか?ここに載せた実験データなどは限られているが、弊社BYK Japanでは、兵庫県尼崎市の添加剤ラボと愛知県豊川市のECKARTラボの二つの実験設備を、塗料設計者のみなさまへのオープンラボと位置づけている。御活用いただければ幸いである。
URL http://www.byk.co.jp

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当社の売上の約85%が輸出によるものです。主な輸出先はヨーロッパ、米国、アジアです。
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BYK Additives & Instrumentsは世界で約1,200人の社員がおり、そのうちの 25% が研究開発またはテクニカルサービスラボに勤務しています。



ビックケミー・ジャパン株式会社 沿革

1966年、日本での塗料・インキ用添加剤の販売を開始しました。1980 年、BYK社(本社在ドイツ、Wesel市)の日本支社を開設し、1984 年12 月にビックケミー・ジャパン株式会社を設立。日常の販売活動、技術サービスの他にパブリックセミナー、新製品発表会、添加剤入門講座等を定期的に開催し、業界の皆様に最新の技術、製品情報をご提供しています。1999年には、テクニカルサービスラボを兵庫県尼崎市に開設し、より一層お客様に技術サービスに努めながら、ご要望をドイツ本社での製品開発に反映する体制を強化しました。今後もグローバルなネットワークを活用し、大阪、東京、名古屋営業所、尼崎テクニカルサービスラボの4拠点から、皆様の新製品開発、問題解決のお役に立つコーティング用ならびにプラスチック用添加剤、試験機器を提供してまいります。
また2006年4月よりエカルト社(ドイツ)の日本における代理店業務を開始し、音羽テクニカルサービスラボ(愛知県豊川市)開設後はエフェクトピグメントによるソリューションを提供しています。