2014/10/04 11:17

添加剤WEB講座 表面への機能付与‐添加剤・技術の新展開(3) シリコンマクロマーを使った表面調整剤の新たな可能性 ビックケミー・ジャパン

「表面への機能付与---BYK添加剤・技術の新展開」をコアテーマとして、 「マイカ・メタリック塗色用添加剤Part.1/Part.2」に続き、 「新技術~シリコンマクロマー~を使った表面調整剤の新たな可能性」をご紹介します。この新技術は、自動車・工業塗装、建築塗料分野はもとより、フィルムコーティング、インクジェットなどの分野へも幅広く展開していきます。

シリコンマクロマーを使った表面調整剤の新たな可能性 ビックケミー・ジャパン株式会社 添加剤技術部 若原章博

はじめに

液滴の表面張力のコントロールは、塗料や印刷インキの分野のみならず、電子材料・電池や表示材料でも重要な要素技術である。液滴の微粒化、基材への濡れ性、液滴の塗り重ね・ダストのなじみなどは、微小液滴、薄膜になるほど、平滑性・レベリング性といった品質にかかわる大きな課題となってくる。ここでは液滴と成膜後の表面張力・特性をバランスさせた新たな表面調整剤について紹介する。平滑性にはレオロジーも大きな要素であるが別の機会に譲りたい。


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表面調整剤の構造と特性

代表的な表面調整剤としてポリシロキサン系(シリコン系)、フッ素系、アクリル系をあげることができる。表面張力の低下能では、フッ素系、シリコン系が大きく、アクリル系は小さい。シリコン系はたとえば水系コーティング液の表面張力を、20数mN/m程度まで下げられる。溶剤系でも同様レベルまで低下させる。それにより下地への濡れ性や、ハジキ防止効果をもたらす。一方アクリル系は実測で0.1ないし0.3mN/m程度の調整幅である。


ただそれぞれに弱点・短所がある。フッ素系はコストに加え、特に水系では起泡性があり、常に消泡の課題がついて回る。また塗膜になった後、すなわち固体表面の表面張力も下がり、その上に塗布する際やリコートしにくくなる。シリコン系も多くは膜の表面張力が下がり、同様の傾向を示す。もちろん滑りやすくしたい場合、撥水性を付与したい場合には、効果的である。アクリル系は表面張力コントロールの効果は弱いとはいえ、ウエット膜の部分的な表面張力の調整・均一化には十分な効果を示す。またリコート性には悪影響を及ぼさない。


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シリコンマクロマーを用いた新規表面調整剤

前項のような液と膜の特性のバランスを取る上で、アクリル構造とシリコン構造を一分子中に組み込んだ表面調整剤がユニークな特性を示す。通常のシリコン系はポリシロキサン骨格の末端ないし途中を有機変性している。有機変性には、ポリエーテルやポリエステル、アラルキルなどが用いられる。分子中のシリコン部分はおおむね30-60%である。一方、今回開発したBYK®-3550は、アクリル骨格にポリシロキサン鎖をつけ、シリコン部分は2-15%と比較的少ない。この構造により従来にはない特性が得られる。


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表面張力と膜のスリップ性の評価例

塗料(アクリルメラミン系)での実験例を図4に示す。図4左は、横軸に添加量%、縦軸に塗料液の表面張力を表す。BYK®-3550は通常のシリコン系の表面調整剤とほぼ同じ程度の低下能を有しているのが確認できる(図4左)。図4右には硬化膜のスリップ性を示す。横軸は添加量%、縦軸は一定加重の分銅を引っ張るときの力(N)でスリップ性を表している。下へ行くほど弱い力で引っ張れる、すなわち滑りやすい方向である。シリコン系は添加量0.02%で劇的にスリップ性が向上している。それに対してBYK®-3550は、0.1%程度まではほとんどスリップ性を変えない。すなわち塗料液の表面張力を十分に下げる添加量領域で、成膜した後は、この添加剤を用いないときと同様な膜特性を保持している。このことはリコート性や付着性のよさにつながる。


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自動車・工業塗装分野への適用

自動車塗装・工業塗装分野のリコートを想定して、溶剤によるワイピング試験を図5に示す。2Kアクリルウレタン塗料で、通常のシリコン系表面調整剤と今回のBYK-3550を比較している。シリコン系の膜の表堅調力は25.8mN/mである。一部をイソプロパノールでぬぐうと、表面張力は27.7mN/mまで上がった。これは表面に配向していたシリコン系表面調整剤が拭い去られたことによる。一方、BYK-3550はぬぐう前で27.4mN/mとシリコン系よりも高く、なおかつぬぐった後もほとんど変化していない。ワイピング部と非ワイピング部に表面張力の差があるとき、その上にリコートすると濡れ性の差が生じ、いわゆるゴースティング・ミミズ・ワームトラッキングなどと呼ばれる塗膜欠陥となる。BYK-3550は表面張力の差が生じず、また表面張力そのものもシリコン系より高いことにより、リコート性はきわめて良好である。


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では本来のレベリング性はどうか。ウエーブスキャン(Wave Scan;BYK Gardner社製)で表面のレベリング性を測定した結果を図6に示す。SW(ショートウエーブ)は細かい肌、 LW(ロングウエーブ)は大きなゆず肌をあらわし、数値は低いほうが良好である。いづれの肌も従来タイプのシリコン系とアクリル系の組み合わせよりも、BYK-3550の方が良好なのがわかる。


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さらに工業用焼付け塗装(アルキドメラミン系)でシリコン系との比較を図7に示す。図7横軸には各種添加剤を、左側の縦軸は棒グラフで塗料液の表面張力を、右側の縦軸は点で成膜後のスリップ性をプロットした。無添加の塗料の表面張力が27.7mN/mで、シリコンマクロマー変性アクリルのBYK-3550、シリコン系のBYK-301、BYK-310、BYK-313、BYK-378はいづれも表面張力を下げている。一方、膜のスリップ性は無添加を標準としてどの程度滑りやすくなるかを相対値で見ている。液の表面張力と傾向は異なり、BYK-3550はほとんどスリップ性を上げない。シリコン系は構造により若干差があるが、スリップしやすくなる。


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建築塗料分野への適用

塗料としては低極性である建築塗装の分野での、特性を次に見てみる。建築で用いられるアクリルNAD塗料の表面張力と膜のスリップ性を図8に示した。無添加と、シリコンマクロマー変性のBYK-3550、シリコン系のBYK-330、BYK-378 を比較した。塗料液の表面張力はどの添加剤も下げることができる。焼付け系と異なる傾向を示すのが、塗膜のスリップ性である。BYK-3550はシリコン系ほどではないが、スリップ性を上げるのが確認できる。これは成膜時の表面への配向性により説明される。ここで用いた建築塗料は、先の焼付け塗料に比べて低極性である。BYK-3550は比較的高極性の骨格を有し、低極性である建築塗料中では、より表面へ配向しやすいと考えることができる。


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では色分かれ効果はどうか。建築塗料では、ローラーと刷毛の色の差、塗り接ぎ部の色の差など、色浮き・色分れも塗装作業性での重要課題である。図9に白とブルーの混色で、塗装面とタレ部の色分れを見た。表面調整剤を添加していない系(図9左)では、ベナードセルが発生し、色分れが見られる。それに対して(図9右)BYK-3550添加によりベナードセルが抑制され、安定した発色を得ている。


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フィルムコーティング、インクジェットなどへの可能性

工業用塗装と建築塗料分野での実験例を見てきたが、BYK-3550の液体への表面張力低下効果は、それ以外のコーティング材、スラリーなどにも期待できる。印刷材料、電子材料などスクリーン印刷、インクジェットなどでの塗布時の微粒化、濡れ性を向上しうる。また成膜後の表面張力の低下が少ないことは、上に塗り重ねる場合や、接着剤やフィルムなどの貼り付けなどへの影響が軽微であろうと予想される。みなさまの御評価をお願いしたい。

About BYK Additives & Instruments:

BYK Additives & Instruments はコーティング用添加剤と試験機器分野では世界のリーディングサプライヤーの一つです。
当社の売上の約85%が輸出によるものです。主な輸出先はヨーロッパ、米国、アジアです。
BYK添加剤はコーティング、インキ、プラスチックおよび紙の製造工程で使用されます。BYK製添加剤は少量で、製造工程を簡略化し、自動車や家具などの最終製品の品質を大きく向上させます。
BYK 試験機器は塗料、プラスチックおよび紙製品の色調、光沢、物理的特性を向上させます。BYK試験機器は日常的な品質管理に使われます。
BYK Additives & Instrumentsは ALTANA(Wesel)のメンバーです。 ALTANA ではスペシャリティケミカルのなかでも高品質で革新的な製品の開発、製造を行っています。
BYK Additives & Instrumentsは世界で約1,200人の社員がおり、そのうちの 25% が研究開発またはテクニカルサービスラボに勤務しています。

ビックケミー・ジャパン株式会社 沿革

1966年、日本での塗料・インキ用添加剤の販売を開始しました。1980 年、BYK社(本社在ドイツ、Wesel市)の日本支社を開設し、1984 年12 月にビックケミー・ジャパン株式会社を設立。日常の販売活動、技術サービスの他にパブリックセミナー、新製品発表会、添加剤入門講座等を定期的に開催し、業界の皆様に最新の技術、製品情報をご提供しています。1999年には、テクニカルサービスラボを兵庫県尼崎市に開設し、より一層お客様に技術サービスに努めながら、ご要望をドイツ本社での製品開発に反映する体制を強化しました。今後もグローバルなネットワークを活用し、大阪、東京、名古屋営業所、尼崎テクニカルサービスラボの4拠点から、皆様の新製品開発、問題解決のお役に立つコーティング用ならびにプラスチック用添加剤、試験機器を提供してまいります。
また2006年4月よりエカルト社(ドイツ)の日本における代理店業務を開始し、音羽テクニカルサービスラボ(愛知県豊川市)開設後はエフェクトピグメントによるソリューションを提供しています。
URL http://www.byk.co.jp