2014/12/05 15:00

揺れるライン塗装No.170 宮越工芸 建材向け塗装設備を刷新 生産性と塗料使用量で効果

宮越工芸(本社・富山県高岡市、代表取締役社長・宮越一郎氏)は今年に入り新型自動静電塗装システムを導入した。高まる塗装品質への対策を目的として新システムを導入した結果、生産性は約10%向上し、塗料使用量は約20%の削減効果が得られた。大型ビル建材品から小物部品まで手広く対応する同社ではこれまで培った塗装ノウハウを強みとしながら、小ロット対応や環境配慮形化成皮膜処理の研究などを強化して存在感を強固なものとしていく。

同社は建材向け製品の塗装で事業の約9割を占めている。その構成比はカーテンウォールなどのビル用建材が3割、アルミサッシなどの住宅用建材3割、エクステリア建材3割となっており、自動車部品など非建材製品向けは1割ほどにとどまる。
現在、塗装工場は4工場有しており、ビル建材用としてビル建材工場と長江工場、住宅・エクステリア建材用として本社工場と第2工場がある。また、本社工場には溶剤塗装ラインの他に粉体塗装ライン設備もある。製品の素材や要求品質グレード、ロットサイズに応じた工場に振り分けられる。生産能力は約13万㎡/月にもなり、国内の建材の塗装専業者としてはトップクラスの能力を有している。


長江工場、ビル建材溶剤塗装ライン


今回、新型自動静電塗装システムを導入したのはビル建材用塗装のメイン工場である長江工場の溶剤塗装ライン。長江工場は敷地面積3万800㎡、建屋面積6,500㎡。前処理設備、塗装設備、乾燥設備が一貫した自動ラインとなっている。搬送も自動のため、着荷から脱荷まで全自動の塗装ラインとなっている。
製品サイズは高さ1600mm×幅5600mm×奥行300mmに対応。同社では建材に関しては、前処理の化成皮膜処理は6価クロム薬剤を採用しており、その工程は脱脂→水洗→エッチング→水洗→スマット除去→水洗→クロメート→脱イオン水洗→水洗の流れとなっている。その後に水切り乾燥工程に入る。搬送はトラバーサーによる自動搬送で時間や温度は自動で管理されている。


塗装設備は自動静電塗装ブースと補正ブースがそれぞれ2つある。塗装ラインの構成は新型自動静電塗装(1レシプロ4ガンが対面に設置)→セッティング→手吹き塗装(対面式)→強制セッティング→手吹き塗装(対面式)→新型自動静電塗装(対面式)→セッティング→焼付乾燥工程という流れとなっている。
現在はプライマー、中塗り、上塗りの3コート1ベークが主流であり、その他にはプライマー、中塗り、メタリック、クリヤーの4コート仕上げも対応。アルミ建材では陽極酸化皮膜仕上げ(アルマイト)や複合皮膜仕上げ(陽極酸化皮膜+クリヤー)が多いが、超高層ビルなどでは高意匠が好まれる傾向があるため塗装仕上げが増えているという。


新型レシプロケータ導入


今回、塗装設備の投資に踏み切った背景として、顧客の要求品質が変化する中、既存の塗装システムが老朽化していたこともあり、品質及び生産性向上を図るため新型のレシプロケータを導入した。
宮越社長は「当社の強みであるビル建材製品の塗装を伸ばすことを方針として打ち出している。そのためには要求品質への対応、コストダウン、生産性の向上を目指す。更に大型ロットが海外生産に流れる傾向が見られる中では柔軟な塗装設備が必要となっている」と設備導入理由を述べる。


実際、ビル建材では形状が複雑化しており、間口が狭くて奥行きが深くなっている部材が多くなるなど従来の塗装設備では対応しにくい場合も。「品質基準が変わっているわけではないが、顧客の要求する品質グレードは上がっている。そのため、例えば奥行きが深い部材の膜厚不足のリスクを回避する意味でも効果的な塗装システムが必要だった」(取締役生産部長・中野義信氏)。
同社が導入した新型自動静電塗装システムはランズバーグ製で、レシプロケータは1レシプロ4ガンを対面に設置している。ワークへの追従性が向上されており、コンベアスピードに対する速度調整も可能で塗着効率が高まった。更に塗装の条件設定値に対する実測値が把握できるため、条件通りに塗装できているかが適時確認できる。


こうした取り組みにより、導入前に比べて生産性は10%強アップ、塗料使用量は約20%ダウン、異物不良率が約50%ダウンするなど大きな効果が得られた。
また、ゴミブツ対策として静電気除去装置を導入した。空間にイオンを放射することで帯電をなくし、被塗物に異物が付きにくくなる。塗装ブース前に設置することで、塗装前の異物付着を防止する。更に「こうした装置を導入することで作業者のゴミブツ対策意識の高まりも期待する」(中野氏)。


クロムフリー、粉体設備を完備


カーテンウォールやアルミサッシでは溶剤塗装仕上げが主流であるものの、近年では環境に配慮した粉体塗装仕上げの採用も増えてきている。そうした動きを見据えて、同社は平成18年に本社工場内に粉体塗装ラインを稼働させるとともにノンクロム皮膜処理設備を導入した。
粉体塗装ラインは前処理設備とは別離したラインとなっており、塗装設備は日本パーカライジング製の「ツイン・ディバイド・マルチカラーブースシステム」2台が直列に設置されている。同システムはディバイド(2分割)機能によりハンガーワークを外すことなく、色変え時に吹き被りの恐れのある空間(1~2m)のワークを空けることで溶剤並みの色変え時間が可能となっている。


同社ではカーテンウォールなどビル建材において実績を有するが、市場では溶剤塗装仕上げが主流となっているため、「建材では溶剤塗装が8割強で粉体塗装は2割に満たない」状況。そのため、粉体塗装ラインでは非建材製品の塗装が多くなっているのが現状。ただ、ビル建材塗装動向を見ると、ふっ素樹脂系やふっ素樹脂とポリエステルの"ふっ素ハイブリッドタイプ"などの開発が進められており、粉体塗装仕上げが増えていく可能性がある。そのため、同社としても塗装現場サイドから実用性などについて研究を進めていく意向を示す。


また、前処理のクロムフリーとしてはフッ化チタン酸系の薬剤を採用している。ビル建材向けでは6価クロムを採用しているため、クロムフリー系は使用していないが、非建材製品では採用が多くなっている。
前処理設備は本社工場内に専用設備を設置し、クロメートとノンクロメートを使い分ける。処理工程は脱脂→水洗→エッチング→水洗→スマット除去→水洗までは同じ工程を組み、ノンクロメートの場合はその後にノンクロメート処理→水洗→シャワー水洗→純水洗という流れ。クロメートの場合はクロメート処理→脱イオン水洗→水洗となる。


なお、建材向け前処理の環境配慮としては3価クロム系の実用化の取り組みを進めている。品質管理面や塗装仕様との相性などを検証しており導入、実用化を目指している。
宮越社長は「建材製品向けをメインとする事業展開は変わらずに強化していきたい。粉体塗装の取り組みも進めていくが、現状を踏まえると溶剤塗装は外せない。大ロットが海外生産に流れる中、顧客のニーズに対応した生産設備で対応力を高める」方針だ。

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宮越工芸 本社外観

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代表取締役社長
宮越一郎氏

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アルミ建材製品

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前処理後水切り乾燥工程

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搬送は全自動式

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溶剤塗装設備

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新型自動静電塗装設備を導入

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粉体塗装設備、アウターブースで囲む

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クロム系・ノンクロム系前処理設備