2015/10/21 15:01

雨仕舞から塗装を考える② ~"塗る"より大切なこと~ 原田芳一

―第1章―
腐食の原因は構造にあり

前回、構造体を腐食から守ることこそ建物を「もたせる」ことにつながっていくと示しました。
そこであることが明らかになります。塗装の対象である外壁や屋根などの「外装」は、構造体を保護するために存在しているということです。


「もつ」の定義に立てば、外装が劣化することと、建物がもたなくなることは同じではありません。外装がボロボロになれば、オーナーは「もたない」と感じるでしょう。ただ、原則として、保護の優先順位はあくまで構造体の方が上位であり、外装の保護は二次的に考えないと、大事なポイントを見失ってしまうことになります。外装は車でいえば、車内やエンジンを保護するためのバンパーです。バンパーが壊れていても車は走ります。極論を言えば、外装が劣化しても、すぐさま構造体にダメージを与えるとはいえないのです。
我々の業界にも、外装塗装で建物の耐久性が向上したと言い切ってしまう者がおりますが、それは正確ではなく、適切でもありません。


さて、構造体の腐食に最も影響を及ぼすものが水分であること。水分はそのほとんどが雨水の浸入と結露によってもたらされ、雨水の浸入と結露の発生を同時に抑えるには水をコントロールする「雨仕舞」の考え方が重要であると前回お伝えしました。
例えば木材の腐食は、腐朽菌の発生によって起こります。腐朽菌が生きるためには水分が必要ですから、木材に「常に」水が触れ続けることが、腐食の前提となります。逆に言えば、乾いてしまえば腐朽菌は生息できず、木材は腐食しません。


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上の写真の破風板を見て、腐食していると思いますか?そう、腐食はしていません。塗装した塗膜が著しくはがれている"だけ"です。
では、なぜこれほど塗膜が剥がれていても腐食しないのか?それは、このむき出しになっている破風板表面に雨がかかったとしても、下に流れ落ちていくからです。雨が止めば、じきに乾き、腐朽菌は生きていけません。
でも大多数のリフォーム業者は、このように塗膜が剥がれている木部を指し、「劣化が進んでいるので早急に手を打たなければならない」と指摘するのではないでしょうか。


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①は腐食していますが、②は腐食していません。
同じように塗装されているようですが、なぜでしょう?
それは、木枠の下端が水切りに接しているか否かの違いです。①の写真では、水切りの上に木枠が乗っています。窓ガラスの表面に生じた結露による水分が水切りの上を流れ、木枠の下端とのわずかなすき間に入り込みます。狭いすき間には毛細管現象(細い空間を、重力や上下左右に関係なく液体が浸透していく現象)が起こりますので、水を引き込みます。またすき間が狭ければ乾きにくく、いつまでも水分がとどまった状態になります。
そして木材が乾燥する前に再び結露したり雨が降ったりして木材表面を濡らします。そうして繰り返すうちにやがて腐朽菌が付着し、腐食が進行していくのです。


一方、②の写真は水切りの上に木枠を乗せることなく、双方の取り合い(接合部)を意図的に離しています。これにより、木材が小口から雨水を吸い込むことなく、腐食を防ぐことができたのです。
要するに木材が腐食する原因は、その木材が組み合っている形状(納まり)によるところが圧倒的であり、塗装することで腐食を防ぐ効果はほんのわずかでしかないということです。従って、塗装によって木材を保護するといった言い回しには細心の注意を払う必要があり、軽々しく口にすべきではないのです。


ここまで木材に関しては、塗装することによる保護効果は限定的だとお伝えしましたが、外壁においても一般的に広く行われている塗装方法では、完全に水を防ぐことは期待できません。
その理由として、まず1つは完全な膜を形成しきれないこと、もう1つは塗装後に発生したひび割れなどは防げないことです。そして、この2つの理由に共通するのが塗膜の厚みです。


塗布型防水材としてウレタン塗膜防水がありますが、この防水材の厚みは最も薄いものでも1.5mm以上あることが求められます。反面、一般的な外壁塗装の塗膜は、およそ100ミクロン前後といわれています。髪の毛の太さと同じくらいです。100ミクロンとは0.1mmですので、「防水」と呼ばれる膜厚の最低ラインと比べても、その15分の1しか厚みがないことになります。そんな厚みでは切れ目のない塗膜を作ることはできません。また髪の毛の太さほどの塗膜では、ひび割れ程度でも建物の動きを制御することは不可能です。「塗装」は「防水」ではないのです。
次回は、本連載のキーワードとなる「雨仕舞」について説明いたします。


◇プロフィール
原田芳一氏。株式会社リペイント湘南(神奈川県藤沢市)代表取締役。塗装・防水工事を主体に年間100件以上に及ぶ建物調査を実施。「究極の雨仕舞は、100年住宅を可能にする」をコンセプトに資産価値に寄与する総合改修工事業の構築を目指す。47歳。