2015/12/16 09:35

雨仕舞から塗装を考える④ ~"塗る"より大切なこと~ 原田芳一

―第3章―
入口と出口を見極める

さて、前回までに、雨仕舞について基本的なことを述べさせていただきましたので、その有用性については一定のご理解をいただけたものと思います。それでは、雨仕舞の考え方を踏まえ、我々塗装に携わる者が、どのようにして外装の改修に取り組むべきかを、具体的に説明していきます。


まず、絶対に行ってはならないことを挙げます。それは、雨水の出口を塞ぐことです。言葉にすると当たり前のように感じられるかもしれませんが、これがわりと奥深いのです。
それについては、2つの要素があると考えます。ひとつは雨水を排出するため、意図的に作成されたすき間を埋めてはならないことであり、もうひとつは、雨仕舞の考えにおける雨水の出口となり得る面に対し、雨水の排出を妨げる塗装をしてはならないことです。
それでは、これらの2点について説明いたします。
まず、設計上、意図して開けたすき間を埋めてはならないことについてです。

20151111-8-1.jpg

このすき間は通気のために設けられています。もしこのすき間を埋めてしまったら、空気の流通が妨げられ、結露が起こりやすくなってしまうでしょう。
それにも増して恐ろしいのは、雨水が排出されなくなることです。もし雨水がサイディングボードの内側まで達するような状態になったとき、このすき間が埋められていれば、雨水は出口を失います。そして、建物の内側に溜まってしまうことにより、塗膜が剥がれ、基材が腐食していくのです。「こんな溝をわざわざ埋めたりしない」と思っておられる方もいらっしゃるかもしれません。でも、こんな感じになっていたら、どうされますか?

20151111-8-2.jpg

このように、新築当時から出口が埋まっていることによって腐食しているところに対し、皆さんはそこにすき間を開けることができるでしょうか?
外装の改修に携わる者は、こういった判断を適切にしなければなりません。
次に、雨仕舞の考えにおける雨水の出口となり得る面に対し、それを妨げるような塗装をしてはならない点についてです。

20151111-8-3.jpg

こういった換気口が軒裏に付いている理由は、申し上げるまでもなく、雨水の浸入を防ぎながら換気を行うためです。水の移動は一部の例外を除き、上から下への一方通行だからこそ成り立ちます。ですから、この換気口は、ここから雨水の浸入は起こらないとの確信の下設置されています。軒裏から雨水が浸入することは、通常ではありえないのです。
では、軒裏や上げ裏といった下向きの面を、膜をつけるように塗装してしまうとどうなるでしょうか?

20151111-8-4.jpg

もしその上部に雨水が浸入するような不具合があったときには、しっかりとした塗膜であればあるほど、この写真のように膨らんでしまいます。 そして、軒裏の内部に水が溜まり、腐食を促進させてしまうことにつながりかねません。下向きの面に膜をつけても、建物をもたせる観点においては、デメリットしかないのです。
従って、下向きの面に対しては「塗らない」ことが最良のアプローチです。しかし塗り替え工事においては、他の部位がキレイになるため、美観を考えれば塗らないというわけにはいかないでしょう。そこで、できるだけ水を通す塗料を用いる必要があります。


余談ですが、塗膜の強度は、それに含まれる樹脂の結合力(結合エネルギー)の大きさによって変わります。分子間の結合エネルギーが大きければ大きいほど、紫外線などの外的な劣化因子に耐えることができます。そこで、一般的な塗膜は、結合力の強さによってそのグレードが分けられています。
ただし、下向きの面に用いる塗料の場合、あまり強く結合してしまうと、水を通さなくなってしまいます。ですから結合力による塗料のグレードを考慮する必要は全くありません。求められるのは結合力や防水性ではなく、耐水性や透湿性なのです。


まとめとして、下向きの面を塗装する際のポイントは、次の2つです。
ひとつは、必ず防水性を謳って「いない」、すなわち透湿性の高い塗料を用いること。もうひとつは、塗装する前に、上部の状態を必ず確認し、雨水が浸入する恐れのある形状なら、解決策を講じた上で塗装することです。
このことを心がけるだけで、施工後に起こる塗膜のハガレや雨漏り、腐食といった不具合や、それに伴うクレームは、高い確率で未然に防ぐことができるでしょう。

◇プロフィール
原田芳一氏。株式会社リペイント湘南(神奈川県藤沢市)代表取締役。塗装・防水工事を主体に年間100件以上に及ぶ建物調査を実施。「究極の雨仕舞は、100年住宅を可能にする」をコンセプトに資産価値に寄与する総合改修工事業の構築を目指す。47歳。