2016/02/09 18:00

雨仕舞から塗装を考える⑤ ~"塗る"より大切なこと~ 原田芳一

―第4章―
外装は"三方"を捉える

前回は、下向きの面に対するアプローチについて述べました。そこで、今回は上向きの面に対し考えていきたいと思います。まず、絶対にしてはならないのは、当たり前ですが、雨水の入口を放置することです。
もちろん、雨水が入り込むすき間や穴は埋めなければなりませんが、お伝えしようとしているのはそういった次元の話ではありません。空を向いている面は、垂直面と同じ納め・仕上げであってはならない、ということなのです。
下向きの面は水を通さなければなりませんが、上向きの面は逆に水を通してはなりません。垂直面である外壁面よりも、更に強固な防水性能が求められます。なぜなら、上向きの面は、水が移動せず留まるからです。

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写真①


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写真②


写真①の塗膜が膨れている原因は、上方のこの部位(写真②)が全く防水されていないからです。おそらくひび割れから浸入した雨水が外壁と塗膜の間に入り込み、塗膜を膨らませてしまったのです。更に悪いことに、外壁は厚膜に仕上げられており、入り込んだ雨水が排出されづらくなっています。垂直面をこのような仕上げにする際には、その上部には必ずより高い防水性をもたせるべきなのです。
このように、空を向いている面に何の仕上げもなされていないケースはまれですが、腰壁や塀の天端 (上向き面である末端)に対し、外壁と同じ塗装をしている物件は多く存在します。

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写真③


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写真④


写真③のようなひび割れにおいては、垂直面では雨水が浸入する危険性がほとんどなくても、雨水が留まる時間の長い上向きの面ではそのリスクが大変高まってしまうのです。そのことを考慮せずに垂直面に伸縮率の高い弾性系の塗装をすると、塗膜が膨れる事故が起きます。
そこで写真④のように、天端にこそ弾性塗料を厚膜になるように、ローラーを変えて(このローラーは1回あたり通常のローラーの4~5倍塗料を付けることが可能です)塗装します。こうして水分の浸透を防ぎ、ひび割れが起こらないようにすれば、そういった事故は高い確率で未然に防ぐことができるでしょう。


さてここで、この考え方を実行する上で、あるポイントを提示いたします。
それは、外装においては「三方」を捉えよ、ということです。すなわち、外壁を基準とし、上を向いている面はより防水性を高め、下を向いている面はより透水性を高めるように心がけることが重要です。そうすれば、雨水によるフクレ、サビ、腐食など、多くの不具合から建物を守ることが可能になるのです。ただ、そこである疑問が生じます。建物の表層には、上記の三方だけではなく、斜め上を向いている面や斜め下を向いている面があります。そのような面はどのように扱えばよいのでしょうか?
結論から申し上げれば、斜め上向きの面は上向きの面として、斜め下向きの面は下向きの面として考えるべきです。

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写真⑤


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写真⑥


写真⑤の物件の斜壁は、垂直面と同じ仕上げになっています。そして、同じようなひび割れの発生が見られましたが、斜壁のみ雨水が浸入していました。設計者が斜め上向きの壁に対し「屋根と同じ」との認識を持っていれば、雨漏りは防げたはずです。
写真⑥は2階の出窓を撮影したものです。この上方から雨水が浸入し、腐食させてしまったのですが、斜め下向きの面にまで、垂直面と同様に防水性を有するフィラーが下塗りされています。もしこの斜めの面にのみ透水性の高い塗料が使われていたら、ここまで被害が大きくなることはなかったのかもしれないのです。
最後に、これまで説明したことを式にまとめました。
防水性能の高さを基準とすれば、上向き面≧斜め上向き面>垂直面>斜め下向き面≧下向き面のようになります。そして、この不等式を守ることによって、建物内部に水分が留まることによるさまざまな不具合を避けることができるのです。
ご参考になさってください。

◇プロフィール
原田芳一氏。株式会社リペイント湘南(神奈川県藤沢市)代表取締役。塗装・防水工事を主体に年間100件以上に及ぶ建物調査を実施。「究極の雨仕舞は、100年住宅を可能にする」をコンセプトに資産価値に寄与する総合改修工事業の構築を目指す。47歳。