2016/04/27 16:23

雨仕舞から塗装を考える⑦ ~"塗る"より大切なこと~ 原田芳一

―第6章―
「取り合い」の盲点

外壁塗膜の劣化を調べる際に、塗膜表面を手でこすり、手についた粉の状況を評価する手法が多く用いられています。いわゆる「チョーキング」の程度を調べるものです。チョーキングとは、紫外線などの影響により塗膜表面の樹脂の結合が解け、粉になる現象です。我々の業界においては、チョーキングの発生を建物劣化の重要なシグナルとして捉えているところがあります。
確かに、塗膜の劣化が建物の劣化に直結するのであれば正しいでしょう。しかしながら、雨水の浸入を防ぐという改修工事の本質に照らしてみると、チョーキングは重度の劣化とはいえません。理由はとても簡単で、チョーキングが起きても雨水が浸入してこないからです。


当たり前ですが、すき間がなければ水は入ってきません。ですから、チョーキング現象が激しく起きていたとしても、構造体にはほとんど影響しません。建物においては意図しないすき間が最大の問題であり、すき間が空きやすい部位が最大の弱点となります。
それではすき間が空きやすい部位とは具体的にはどこでしょうか?
すき間をひびのようなものと捉えるならば、ひび割れしそうなところは弱点になるかもしれません。ただ、ひびは最初から空いているわけではないですよね。実は、建物には新築当初から意図に反して空いているすき間があるのです。


「取り合い」と呼ばれる部位がそれです。取り合いとは、異なる材料同士がくっついているところです。当然、同一の材料が継ぎ目なく連なっている箇所に比べ、すき間が空いている確率は極めて高いのですが、一見したところではその危うさを感じられません。でもそこが盲点になります。
例えば、写真①のようにアルミの笠木材(手すり壁などの上端に取り付けるフタ状の部材)の上に手すりの脚部がくっついていると、何となくどこにも問題がないような気になるかもしれません。でも、実際は脚部の根元から雨水が浸入し、腐食していました。(写真②参照)


塗り替え工事においては、アルミ部材は塗装しないことが多いと思います。その理由はいろいろありますが、最も大きいのは酸化皮膜が形成されるので、塗装しなくても極めて腐食しづらいからでしょう。そこで、塗装職人はアルミには一切手を入れなくなります。でも取り合いに目を向ければ、そこには危険なすき間が新築時から存在しているのです。
木造住宅などにおいては、バルコニーの笠木は重要なウィークポイントです。従って建物を腐食から守るという大前提に立てば、アルミは塗る必要がないから何も手をかけないということでは本末転倒なのです。

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写真①

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写真②


次に、すき間の幅についてです。
幅は狭ければ狭いほど雨水が浸入しづらくなりますから、その点については狭いことに利があります。ただし、狭いほうが常に良いとは限りません。なぜなら、水が抜けにくく、乾きづらくなるからです。更に、狭いすき間には毛細管現象により水が自ら入り込んできます。中途半端なすき間では、かえって水を呼び込むことになるのです。
そこで、水を逃がす目的であえてすき間を空ける場合は、明確に空けないと水が排出されないばかりか、逆に水を引き込んでしまいます。


写真③は、サイディングボード張り外壁の下端です。ボードの内側に浸入した雨水は、ボードと水切りの間から外部に排出される仕組みになっているのですが、そのすき間が狭すぎます。これでは浸入した雨水はスムーズに排出されずこのすき間にとどまるでしょう。更には、サイディングボードの表面を伝った水も、この水切りの上にたまった後に毛細管現象によって引き込まれます。結果として、このようなわずかなすき間では腐食を誘発させてしまうのです。

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写真③(画像提供:外壁塗装の清水屋)


では、塗り替え工事でこのような状況に遭遇した場合、取るべき対処策は主に3つ考えられます。
まず1つ目は、毛細管現象が発生しないようサイディングの端末を削り、すき間を空けてしまうことです。水切りはサイディングボードの裏側で垂直に立ち上がっているので、ここにすき間を設けても雨水が浸入しないようになっています。そこで、カッターや電動工具などを用いてサイディングボード下端をカットし、意図的にすき間を空けてゆきます。そうすれば、サイディングボードの内側に入りこんだ雨水を速やかに排出させることができ、サイディングボードが小口から雨水を吸い込んでしまうことを防ぐことが可能になります。
ただし、この方法はあるリスクをはらんでいます。それについては次回の章で詳しくご説明いたします。

◇プロフィール
原田芳一氏。株式会社リペイント湘南(神奈川県藤沢市)代表取締役。塗装・防水工事を主体に年間100件以上に及ぶ建物調査を実施。「究極の雨仕舞は、100年住宅を可能にする」をコンセプトに資産価値に寄与する総合改修工事業の構築を目指す。47歳。