2016/06/21 20:05

雨仕舞から塗装を考える⑨ ~"塗る"より大切なこと~ 原田芳一

―第8章―
シーリング処理の盲点

外装の改修において、不定形シーリング材(以下、単に「シーリング材」と記します)はとても便利な材料で、大変重宝されています。自在に変形するので対象がどんな形状でも充填することが可能であり、きわめて容易に水を止めることができます。そこで新築から改修、DIYにいたるまで、さまざまな工種において幅広く使用されています。
そんな「夢のような」材料であるシーリング材ですが、実は、やみくもに使用するとかえって腐食を促進させてしまう大変厄介な代物なのです。そこでシーリング材の使用方法においても、雨仕舞的な観点が必要になってまいります。


さて、太陽光の紫外線は、建物に対するさまざまな劣化の原因となります。例えば、我々塗装業者が劣化を診断する際に指標として多く用いる「チョーキング」ですが、主に紫外線により、有機材料の表面の樹脂結合がほどけ、粉状になる現象です。他には、色あせや塗膜表面のひび割れなども、紫外線が原因である場合が多いです。
紫外線は有機化合物に対し作用しますが、陶磁器など(焼成物/焼き物)には影響を与えません。分かりやすい例を挙げれば、焼き物の茶碗とプラスチックの茶碗を日当たりの良いところに10年間放置したとします。プラスチックの茶碗はパリパリに割れてしまうかもしれませんが、焼き物の方は、汚れを落としさえすれば、10年前とほとんど変わらない状態を確認することができるでしょう。


このように紫外線による劣化は、有機系、言い換えれば石油由来の材料に対して影響を与えます。ただ、その中にも影響を受けやすい材料とそうでない材料があります。実は、それを見極めることはわりと簡単です。ズバリ、柔らかい方が影響を受けるのです。これはみなさんの生活レベルでもお感じになられることと思います。例えば、ゴムひもを屋外に放置していると、数週間のうちに硬くなり、引っ張っても伸びることなく切れてしまいます。


では建築材料の中で最もやわらかいものとは?そう、シーリング材です。すなわち、シーリング材は紫外線の影響を最も受けやすい材料なのです。シーリング材は原則的に、他の外装材よりも早く劣化します。従って、シーリング材にて止水した箇所は、再び雨水の浸入を許してしまう宿命をもっているのです。ですから、シーリング材が用いられている部位に対しては、他の部位に増して定期的にメンテナンスを行う必要があります。
更に注意すべきなのは、シーリング材を用いる「向き」についてです。

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写真①


写真①にある2つの矢印は、ともにシーリング材が充填されている箇所を示していますが、シーリングは紫外線により劣化するので、壁面の縦目地のシーリングに比べ、手すり壁の天端のシーリングの方が、より劣悪な環境におかれているといえます。

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写真②


写真②は写真①の天端部分を近影しました。シーリング材が切れていますので、ここから雨水が浸入しているのは明白です。垂直面に施された縦目地のシーリング材はまだ健全ですので、浸入した雨水は逃げ場を失い、コンクリート内部にとどまっていることが予測されます。
要するに日の当たる時間の長い箇所の方が、劣化が早く進行するということです。写真②のような空を向いている面は、シーリング材が早く劣化しますし、雨水を受けるので、多くの場合において雨水の入り口となりえます。更に先に劣化しやすいということは、その段階では垂直面や裏面などはさほど劣化が進行しておらず、水を通さない状態が続いているといえ、結果として「水を閉じ込める」という、最も避けなければならない事態となる可能性が高いのです。
このように、シーリング材を安易に用いると、将来的に建物の腐食を進行させてしまうことにつながりかねません。


では、シーリング材を適切に使用するための大原則として、以前ご紹介いたしました、防水性能の高さにおける不等式を再び示します。
上向き面≧斜め上向き面>垂直面>斜め下向き面≧下向き面
例えば垂直面と上向き面に対し、同様のシーリング処理を行ってはならないのです。また、軒裏にシーリング処理がなされていたら、水抜きを設けてあげるほうが良いかもしれません。この原則を応用し、想像力をはたらかせれば、どんな現場に遭遇しても適切な施工ができるようになります。


さて、最後になりましたが、写真②のような手すり壁の天端は、どのような処理が適切なのでしょうか? ひとつの方法としては、天端を防水化した後、金属製の笠木を取り付けることでしょう。そうすれば、シーリング材に直接日が当たることはなくなりますし、二重の措置により防水性能が高まり、先にあげた不等式にも沿うこととなります。



◇プロフィール
原田芳一氏。株式会社リペイント湘南(神奈川県藤沢市)代表取締役。塗装・防水工事を主体に年間100件以上に及ぶ建物調査を実施。「究極の雨仕舞は、100年住宅を可能にする」をコンセプトに資産価値に寄与する総合改修工事業の構築を目指す。47歳。