2016/11/23 17:21

雨仕舞から塗装を考える(14) ~"塗る"より大切なこと~ 原田芳一

―第13章―
塗装目線に立つ

今回から数回にわたり、塗り替え工事に関連するさまざまな事柄について、あえて疑問をもって考察してゆきます。


●下が先、上が後
屋上やルーフバルコニーなど、平らな床状の屋根のことを「陸屋根(ろくやね)」と呼びますが、そういった屋根やバルコニー・ベランダなどを防水する際、立ち上がりを設けることは、皆さんの多くが疑うことなく行っていると思います。床を防水する上で、雨水をその床表面にとどめ、排水口に導くことが求められるからです。でも、ただ立ち上げればよいというものではありません。
写真①の防水の納まりには疑問がありますが、お分かりになられるでしょうか?それは、防水層の立ち上がりの端末が露出していることです。皆さんがテープやシールなどを剥がそうとするとき、端っこを起こし、つまんでから引っ張りますよね。真ん中をつまむより剥がしやすいからです。防水層も同じです。防水層で最も剥がれやすいのが端末部です。しかも立ち上がりの端ですから、剥がれてしまえば雨水を呼び込む形状になります。そして、いったん雨水が入りこむと、防水層があるために溜まってしまい、その結果、防水をしなかったときより雨漏りしたり腐食させたりしてしまうのです。これなどは「塗ったせいで腐食する」典型です。なお、それを防ぐ方法はいたって簡単です。防水してから防水層に重ねるように壁面を塗装すればよいのです。

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写真①


●カビを防ぐには
外壁や屋根にカビのようなものが発生したことが塗り替えのきっかけになる場合も多いでしょう。その際の目的は、当然カビなどを生えづらくさせることですので、まずはカビが繁殖するメカニズムについて理解する必要があります。ただ、メカニズムといってもそれほど難しいことはありません。生き物が命をつなぐためには水分が必要なことは誰しもが理解できます。では、そのことを踏まえて考えてみましょう。カビは外壁や屋根のどの方角に生えやすいでしょうか?もちろん北側ですね。理由は日が当たらないからです。それにより水が乾きづらくなるので、カビなどが生きてゆくのに適した環境が形成されるのです。それと同じ理屈で、外壁の仕上げにもカビなどが生えやすいものとそうでないものがあります。
リシン仕上げの面に発生したカビです。写真②の表面、いかにも乾きづらそうに見えますね。
写真③は、装飾系左官仕上げ塗材の表面を30倍に拡大した画像です。無数のすき間が空いています。あたかもスポンジのように水を溜めてしまうのがイメージできるでしょう。
リシン・スタッコ・左官仕上げ塗材など、表面がザラザラした風合いをもつものは、そうした理由で、他の仕上げよりカビなどが生えやすい傾向にあります。そこで、これらの面を塗装すると、表面が滑らかになり、塗装前に比べ水を溜めこまなくなることから、結果としてカビなどが発生しづらくなります。防カビ塗料、いわゆる殺菌剤が配合されている塗料でなくとも、塗装して平滑な面にさえすれば生えにくくなるのです。もちろん、殺菌剤が加わればより効果が高くなるのですが、それは程度の問題でしかありません。

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写真②

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写真③


●塗料の付加価値
上記に関連して、ぜひ知っていただきたい重要な事柄があります。それは、塗料の構成についてです。塗料は樹脂・顔料・溶剤・そして添加剤で形成されています。樹脂は塗膜を作る上での主たる成分です。顔料は塗膜に色を付けるための成分です。溶剤は塗料の粘度を調整するためのもので、蒸発するので塗膜とはなりません。添加剤は補助的な成分であり、塗料に付加価値をつけるためのものです。従って、添加剤はすべての塗料に入っているわけではありません。塗膜に柔軟性を与える「可塑剤」やつや感を調整するための「つや消し剤」、塗料に防カビ効果をもたらす「殺菌剤」は、この添加剤に入ります。
さて、ここで確認したいのは、添加剤はあくまで補助的な成分なので、添加剤を入れなくても塗料は作れるということです。例えば、塗膜の耐久性を高めるためのベストな比率で配合した樹脂に、何かの付加価値をもたらすために添加剤を入れたとします。当然塗料全体における配合比は変わります。つまり、耐久性においてベストな比率ではなくなったのです。添加剤は塗膜を生成する観点からは必要のないものだということです。付加価値を上げるための添加剤の量と、塗料の基本性能における品質は、原則として反比例します。このことは防カビにとどまらず、断熱・遮熱・防汚など、さまざまな付加価値を持つ塗料に対しても当てはまります。我々はそういった塗料に対し、一般的な塗料の持つ性能はそのままで、各効果が加わると考えがちですが、実はそうではないことを認識すべきです。メリットをもたらせば、必ず反作用としてのデメリットが発生するのです。

◇プロフィール
原田芳一氏。株式会社リペイント湘南(神奈川県藤沢市)代表取締役。塗装・防水工事を主体に年間100件以上に及ぶ建物調査を実施。「究極の雨仕舞は、100年住宅を可能にする」をコンセプトに資産価値に寄与する総合改修工事業の構築を目指す。48歳。