2016/11/16 15:32

自動車補修用塗料特集2016(秋) BP工場再生、水性戦略の方向性 経営側メリットの訴求強める

水性シフトが加速している。改正特化則と化学物質リスクアセスメント関連のセミナーは盛況で、コンプライアンスがBP工場サバイバルの前提との認識がAクラスの層に浸透してきた。塗料メーカー各社はこうした状況を受け、従来の戦略を180度転換し、塗装のトータルプロセスをからめた水性システムの導入によりBP工場の収益アップにつなげていく方策を提案する。その焦点のひとつが調色工程の革新にある。今年末から来年にかけて塗料メーカー各社は新たな調色システムの革新を発表する予定だ。

事故需要の減少によって入庫状況は慢性的に悪化傾向にある。BP工場は完全に2極化しており、一部の繁忙工場に対し、閑散とした工場が多くある。加えて創業者のリタイア時期が重なり廃業が目立ち、経営不振からの倒産も増え始めている。
車体整備業はカーディーラーの内製化BP工場と専業者で構成され、専業者はディーラーの協力工場として創業したケースが多い。しかし、内製比率の引き上げに加え、レス率の縛りがあり、脱下請けの動きが活発化。更にカー用品や家電などの量販店が参入し、軽補修ではガソリンスタンドの異業種がカバー。カーアフターマーケットは再編の途上にある。


こうした中で水性システム導入の動きがここ1年目立っている。VOC規制では自主取り組みのスタンスであったが、特化則やリスクアセスメントは例外なく法規制の対象となり、全国的に見ても労基がBPへの立ち入り検査をするケースが多発。秋田では小規模BP工場に査察が入り、注意・指導があったという。
また内製化の場合、入庫状況の緩衝材として下請けに出すケースがあり、元請としてのコンプライアンスで下請工場の法規違反を問題視、協力工場を含めた対応の動きとなっている。専業BPでも人手不足から工場環境の安全衛生確保は必須条件との認識が浸透してきた。


水性導入で工場改革

塗料メーカーは水性シフトをテコとして自動車補修用塗料事業の在り方を抜本的に変える方向にある。材料システムの売り込みから、塗装工程のトータルの見直しへ、更にはBP工場のマネジメントの変更まで踏み込む姿勢を見せる。そのわけは水性化はトップダウンがないと進まないと見ているからだ。「コンプライアンスという建前だけではなく、経営的なメリットがあることの認知が大事」(塗料メーカー)。
トータルプロセス変革の中に水性システムを位置づけ、6カ月程度のスケジュールでオール水性化を実現する方向。かつて水性を一部導入した工場のほとんどが、水性の壁にぶつかり撤退している。その理由は溶剤システムの延長線上で水性システムを導入、「生産性が落ちる」との短絡的な評価となったためだ。特に現場の作業者ではベテランほど水性アレルギーがあった。
こうした経験知を踏まえ、今回の水性競争はシステムの良し悪しではなく、将来にわたってBP工場をどう位置づけるかが勝負どころとなっている。10年先を見通した工場の在り方を考えていくと、水性導入は避けられないテーマ。しかし、ステレオタイプ(固定観念)は依然根強く、保守的な経営と現状維持的現場が主流となっている。


トップの決断のポイントは水性化による経営メリットにある。水性導入によってBP工場の収益が改善されなければ先行投資に二の足を踏む。水性の場合、材料コストの上昇に加え作業効率の阻害からデメリットの方が大きいという通念がある。しかし、視点を変え工程を見直していくと、ネックとなる焦点が調色にあるのが分かる。調色のトラブルは前後工程を大きく左右するからだ。
そこで塗料メーカー各社は調色の革新に着手。従来のCCM連動の測色システムという単体発想から、プロセス全体を効率化するための調色システムへと転換。先端IT技術の活用はもちろんのこと、調色のスタイルそのものを変えるスタンスにある。こうした新システムは今年末から来年にかけ、各塗料メーカーから発表される予定だ。


サービスの創造が鍵

更に人材不足が深刻化する中で、塗料メーカー各社は人材育成に踏み込む。職人的技能工から技術者(テクニカルマン)としての育成に重点を置く。しかもプロセス(工程)の改革に合わせ人材養成期間も大幅に短縮する。調色で一人前になるには5年以上かかるのが実態だが、メーカーの想定するシステムでは、多能工化することで人材のシフトやローテーションを組みやすくするための人材研修となる。
長期戦略としては、BP工場の社会的位置づけの底上げを図る。整備工場のような認可制ではないため車体整備業は一段低く見られているが、アフターマーケットの中では最も付加価値のあるビジネスとの側面がある。整備のようなルーティンワーク主体でないため、車体整備には新サービスを創造する余地が大きい。
クルマの保有期間は12年と長期化する傾向が続く。この間、事故以外の車体整備として注目されているのがリストアやリフォーム、リノベーションというサービスメニュー。つまりクルマのカラーチェンジ。BP工場の持つ高度な調色技術をオリジナルカラー提案の武器に変え、塗装のテクニックによってデザインの刷新を図り、集客力につなげていく。