2016/12/09 17:29

雨仕舞から塗装を考える(15) ~"塗る"より大切なこと~ 原田芳一

―第14章―
着色・クリヤー塗装について

近年、木製のデッキやバルコニーなどを設ける住宅が多くなっています。木製にするのは木の質感を好んでのことですので、木材の保護を目的とした塗装をするにしても、木目や風合いなどを生かした仕上がりが求められます。膜を造って塗りつぶしてしまうことはできません。そこで、木材に浸透するタイプの塗料が用いられます。「着色保護塗料」と呼ばれるもので、顔料、防腐・防カビ・防虫剤、撥水成分などが配合されており、木材にしみこんで色をつけるので、表面に膜を造りません。木の質感を保ちながら木材を保護することから、ユーザーのニーズをうまく捉えた製品であるといえるでしょう。
ただ、機能や効能には程度があります。木材を腐食から守るためにまず必要なのは防水性ですが、浸透タイプは造膜タイプに比べ、その性能が低いことは明らかです。衣類でいえば、かたやレインコート、かたや布地に防水スプレーをかけただけとイメージできるでしょう。造膜タイプなら、膜が傷つかずに残ってさえいれば防水性能を発揮し続けるのですが、浸透タイプは「防水スプレー」ですので、塗った瞬間から少しずつ防水性が失われてゆき、やがては完全になくなってしまうのです。


では、防腐性や防カビ性についてはどうでしょうか?木材の種類に「注入材」というものがあります。木材の表面に溝のような傷をつけ、圧力をかけて薬剤を注入した加工材です。薬剤が数ミリの深さまで入り込みますので、雨に当たっても成分が流されづらく、耐久性は高いと言われています。それでも屋外にさらした状態で安心して放っておけるのは5年ほどのようです。傷をつけ、薬剤を注入しても5年ですので、表面を塗って自然の浸透力に任せるだけのものではどの程度か、推して知るべしでしょう。
ただし、浸透タイプがダメで、造膜タイプが良いと言っているのではありません。むしろ浸透タイプのものより腐食を早める恐れがあります。木材は湿度が高ければ湿気を吸い込み、低くなると吐き出すということを繰り返しています。吸い込めば膨張し、吐き出せば収縮しますので、その表面に薄い膜をつけると、伸縮に追従できず、剥がれてしまいます。ただし、剥がれるだけなら腐食しません。問題は、剥がれないところも存在することです。塗膜が最も剥がれやすいのは日射や雨水を受ける上方で、次に側面、そして最も剥がれにくいのは下方です。塗膜の剥がれた箇所から木材内部に浸入した雨水は下へと移動しますが、下方へ向かえば向かうほど塗膜が残っているため、そのうち水を溜め込むようになります。膜を付けることで、かえって腐食を促進させてしまうことになりかねないのです。


このように、浸透タイプ・造膜タイプそれぞれに長所と短所があります。着色塗料に話を戻せば、その効果は限定的で、効果を引き出すためには頻繁に塗装しなければなりません。ただし、塗装業者がたびたび塗装するのでは、費用がかかりすぎてしまいます。でも、施主はそのことを知りません。ですから、我々は頼まれたからといって反射的に塗装してはなりません。近い将来に再塗装が必要になること、そして、それはあまり経済的でないことを伝えるべきです。更には、塗装にとらわれずに、どんな方法が最も合理的なのか、それを詳しく検討し、提案することが求められます。
写真①を見てください。ビスの周囲から腐食していることが分かります。このビスは上から下へと打ち込まれていますが、これによって雨水を溜め込むようになり、腐食していったのです。この状況を目の当たりにすれば、誰しも腐食箇所を交換する提案を行うでしょう。でも元の状態に戻して浸透タイプの塗料を塗っても、また腐食してしまうことは明らかです。木材の腐食は多くの場合、新築時の納まりに問題があります。塗装の提案より、納まりを改善する提案を行う方が優先です。このケースであれば、ビスを横や下から打てないか、ビスを打つのではなく他の方法で固定できないかなど、雨水をとどまらせないためにさまざまな方法を模索すべきなのです。

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写真①


また、磁器タイルなどに塗布すると目地に浸透し、雨水の吸い込みを防ぐクリヤー材なども、着色タイプの塗料と同じ範疇であると考えて差し支えありません。クリヤー材には基材を透かして見せることが求められます。一方、膜を厚くすると透明度が低下します。ガラスを小口側から見ると、透明ではなくグリーンに見えるのと同じ理屈です。クリヤー材が透明なのは、膜がないか、またはあってもたいへん薄いからなのです。完全な皮膜を造らない塗料のため、着色タイプの木部用塗料と同様、成分が流れやすいことから、その効果が発揮される期間はかなり限られます。従って、マンションなど、塗装仕上げの面と磁器タイル仕上げの面がともに存在している建物を修繕した後には、明確に膜を造って保護した面と、不十分な膜、または目地に浸透させただけの面とで、耐久年数に違いが生じてしまうことは避けられません。マンションなどの大規模修繕は10年から15年に一度行うことが望ましいとされている中、その一部は数年しか耐久性が期待できない施工となるのです。そうであるならば施主に対し、事前にそのことをきちんと説明すべきです。そうして十分理解をして頂いた上で施工の是非を決めてもらわなければ、後々トラブルの原因となってしまうでしょう。

◇プロフィール
原田芳一氏。株式会社リペイント湘南(神奈川県藤沢市)代表取締役。塗装・防水工事を主体に年間100件以上に及ぶ建物調査を実施。「究極の雨仕舞は、100年住宅を可能にする」をコンセプトに資産価値に寄与する総合改修工事業の構築を目指す。48歳。