2017/02/02 16:36

雨仕舞から塗装を考える(17) ~"塗る"より大切なこと~ 原田芳一

―第16章―
外注の捉え方

近年、サイディングボードなどパネル張り外壁の建物が増えてきましたが、その弱点として目地に施されているシーリング材が挙げられます。伸縮性があって建物の動きに追従しながらも、水分を通すことのないシーリング材はたいへん重宝なのですが、紫外線の影響を受けやすく、また接着力が弱いため、改修工事においてはシーリングを適切に更新することがたいへん重要です。......と、ここまでは外壁塗装を提案する立場の人ならだれしも理解していることでしょう。
また、こんなことを目や耳にします。
「外壁塗装工事ではシーリング補修がとても大事です。そこで、当店では自社の塗装職人がなれない手つきで行うのではなく、専門のシーリング職人に行わせているので品質には自信があります!」
私は、この考えに違和感を覚えずにはいられません。もちろん、シーリングが急所であることに関してはまったくもってその通りだと思っています。ですが、その最も重要なシーリング工事を外部の人間に委ねることが、本当に施工品質の向上につながるのでしょうか?

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写真①


写真①は、バルコニー上げ裏(天井)のシーリング材を撤去した様子です。 シーリングを引き抜くと雨水がたまっていました。調査したところ、バルコニーの笠木など複数箇所に建築当初からの不具合があり、そこから雨水が浸入していました。この建物は、10数棟ある建売住宅の1棟です。築10年が経過したということで、オーナーが私どもをネットで探し、塗り替え工事を依頼してくださいました。 また、この方にご紹介いただき、お隣のお宅も施工しました。実は、そこでも同じような不具合により、バルコニー床下に雨水が浸入していました。従って、この10数棟の住宅は、すべて同じような状況になっていると考えて差し支えないと思います。
こちらの住宅街区では、我々が施工している間にも多くのお宅で塗り替え工事が行われていました。でも、そのいずれの工事においても、バルコニーの上げ裏を開けたり、笠木を外したりといった、大工工事を伴う補修を行った様子は見られませんでした。前述の通り、バルコニーの床下には必ず雨水が浸入しているはずです。では、なぜそんな状況を放置したのでしょうか。


例えば、その街区内で数棟の塗り替えを一度に行っていたある塗装店では、下請のシーリング職人にシーリングの打ち替えを行わせていたと思われます。シーリング工事の後、塗装工事が行われるまで2週間ほど空いていたことや、シーリング工事と塗装工事で職人が違っていたこと、作業車や作業着の様子など、複数の事柄から、そのことはほぼ間違いありません。我々が手掛けた2棟ともそうだったように、上げ裏のシーリングを撤去すれば腐食している状況は必ず分かります。ですから、シーリング職人は知っていたはずです。でも、元請の管理者に報告することなく、そのまま打ち替えたのです。従って、それらの棟では、施主はもとより、請け負った施工店の管理者も雨水が浸入していること、それによって腐食が進行していることを知らなかったのです。


どうして報告しないのか?それは、下請のシーリング職人の立場になってみると分かります。彼らは、建物の改修工事を請け負っているわけではありません。シーリングの打ち替えを請け負っているのです。元請ではないので、そこに建物をもたせるための義務は発生しません。逆に、そのことを元請に報告するとどうなるでしょうか。もし追加補修になったら、その部位のシーリング工事は中断せざるを得ないでしょうから、自ら申告したことによって手が空いてしまいます。また、施主と元請との契約で増額はしない旨の約束をしている場合があります。そういったケースでは、元請が不具合を受け入れなかったり、また、報告した下請にサービスで修理をさせたりすることもあるでしょう。こんなことから、下請は「言うだけ損」の感覚を持ってしまうのです。


ですから、この事例はある職人の倫理観が欠如しているといったことではく、我々の業界の仕組みの問題であると捉えるべきです。そもそも、元請の塗装店やリフォーム店がシーリング工事を外注するのは、分離発注によって合理化を図りたいからに他なりません。同じことだけさせていた方が、スピードは上がるし、上手に仕上げることができます。
ただし、キレイに、上手に仕上げることと、建物をもたせることは全く異なります。建物の仕組みを理解し、建物の維持延命に関して総合的に判断できる人間が手掛けなければ、建物をもたせるための工事などできないのです。現に、この事例における、我々が施工した2棟以外の住宅では、おそらく今も雨水の浸入とそれに伴う腐食が進行しているでしょう。それぞれのオーナーは、住まいの資産価値が急激に低下していることに、いまだ気づけていないのです。


これを読んでくださっている皆さんは、多少なりとも雨仕舞という考えを理解なさっています。かたや、防水やシーリング、板金などの職人で、雨仕舞の概念を知らない人間は大勢存在します。ですから、この連載を読んでいる段階で、皆さんの方が彼らより根本的な知識は上回っているのです。皆さんには、ぜひとも専門以外の業種を外部に丸投げせず、自信をもって、深く携わっていただけることを望みます。

◇プロフィール
原田芳一氏。株式会社リペイント湘南(神奈川県藤沢市)代表取締役。塗装・防水工事を主体に年間100件以上に及ぶ建物調査を実施。「究極の雨仕舞は、100年住宅を可能にする」をコンセプトに資産価値に寄与する総合改修工事業の構築を目指す。48歳。