2017/04/11 11:23

雨仕舞から塗装を考える(19) ~"塗る"より大切なこと~ 原田芳一

―第18章―
最も腐食しやすい部位は?②

前章に続き、バルコニーの弱点について考察してゆきます。
前回、バルコニーの床については、防水層の耐久性が高いので、きちんと施工されていればあまり問題にならないと述べました。でも、その防水層にも弱点があります。それは端末部です。
以前にもお伝えしましたが、防水層で最もはがれやすいのは端っこです。防水層の端から浸入した雨水は、防水層と下地の面材(合板など)とのすき間を移動します。その際、外に出ようにも防水層があるため、その場にとどまるか、内部に移動するかのどちらかになります。水蒸気になったとしてもなかなか逃れられず、そのうち冷やされて再び水に戻ります。ですから、防水層の内側に入り込んだ雨水は、雨漏りや腐食の原因になりやすいのです。新築時の納まりで、バルコニーを防水してから掃き出し窓を取り付けた方がよいとされるのは、このことからです。掃き出し窓の下枠(窓台)までを先に防水してからサッシを取り付ければ、端末が露出しないので、雨水が浸入するリスクは大幅に軽減されます。
補足ですが、バルコニー防水を更新する際には、必ず端末が表面に現れます。その処理を適切に行わないと、防水したことが原因で雨漏りや腐食を誘発させてしまいます。

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写真①


写真①は、バルコニー掃き出し窓の下端と防水層立ち上がりとの境目を写したものです。1年前に既存の防水層の上に新たにウレタン塗膜防水を施したようです。防水材が水切りからはみ出るように塗布されています。水切りは文字通り水を"切る"ためのもので、水切りの裏側に雨水が回らないよう、先端は立ち下がっています。その立ち下がりを防水材で埋めてしまえば、当然雨水は水切りの裏側に回り込んでしまいます。

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写真②


写真②は、写真①の水切りを裏側からのぞき込むように撮影したものです。ウレタン塗膜防水層の端末がはがれています。この物件は、この位置から雨水が浸入していました。雨漏りさせないために防水工事を行ったのに、その防水が原因で雨漏りさせてしまったのです。ですから、我々は、既存防水を保護するより新規に防水層を付与した方が必ずよくなるといった短絡的な思考に陥ってはならないのです。
実は、弱点はこれだけではありません。腰壁(手すり壁)は、上端に備えられている笠木が健全であっても弱点となります。納まりに問題があることがきわめて多いからです。ここでは分かりやすくお伝えするため、サイディング外壁の例を挙げます。
「外壁通気(工法)」という言葉を耳にしたことはあるかと思います。構造とサイディングとを直接くっつけずにすき間を作ることです。これにより、湿気の逃げ場が確保され、内部結露を防ぐとされています。ただ、実際の建物では、結露防止もさることながら、雨漏りの防止にたいへん役立っているのです。

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写真③

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写真④

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写真⑤


写真③はサイディングの下端に備え付けられている土台水切りです。雨水がサイディングの表面を突破し内側に浸入すると、サイディングと構造材(柱・梁・面材など)との間に設けたすき間を下に流れて土台水切りの表面から排出され、雨漏りを防いでいます。でも、写真④のように、たいていのバルコニーでは、基礎との境界にあるような水切りがついていません。従って、雨水が浸入すれば、通気工法になっていてもバルコニーの上げ裏(天井)材の上面にたまってしまうのです。
サイディングメーカーや板金メーカーは、バルコニーなどに取り付ける写真⑤のような「オーバーハング水切り」をラインアップしています。でも、私の実感では、既存の建物でこういった水切りが取り付けられているバルコニーは1割にも満たないと思っています。


前回から2回にわたってお伝えいたしましたように、建物、特に木造の建築物における、もっとも腐食しやすい部位であるバルコニーは、設計や施工の段階から納まりに問題がある場合が多いのです。我々塗り替え工事に従事する者は、経年により劣化した状態を元に戻すことを目的として取り組む傾向がありますが、その感覚を改めなければなりません。外装についての基礎的な知識を習得した上で、現状を疑い、適切な形に変更することを常に意識しなければ、建物を守ることにつながらないのです。

◇プロフィール
原田芳一氏。株式会社リペイント湘南(神奈川県藤沢市)代表取締役。塗装・防水工事を主体に年間100件以上に及ぶ建物調査を実施。「究極の雨仕舞は、100年住宅を可能にする」をコンセプトに資産価値に寄与する総合改修工事業の構築を目指す。48歳。