2017/04/14 17:40

インテリアペイント特集2017 ケーススタディ(2)

壁に"遊び心"を 磁力下地ペーパー
安全塗料(東京)

安全塗料(東京・八王子)は上質なインテリアペイント仕上げにこだわってきた。特にドライウォールのパネルは建物の動きを拾うため、きれいに仕上がったペイントカラーにクラックを発生させてしまう。溝口一成社長は10年前、独自のルートでドライウォール専用下地ペーパーを開発、大手ハウスメーカーに売り込んだ。反応は良くモデルルームなどで採用され、内装分野でのペイント復権につなげた。
次のステップがペイントカラーの世界に"遊び心"を注入するテーマ。ペイントカラーの楽しさに加え、もっとウォールを立体的に活用できないかと考えたのだ。そこで下地ペーパーに磁力を付与するアイデアが浮かぶ。類似品があったものの、磁力の強さで差別化に走る。


単身、国内最大手のマグネットメーカー・ニチレイマグネットと交渉に入る。マグネットメーカーも用途拡大を目指しており、インテリアマーケットへの関心から共同開発に合意し、約1年かけ昨年春に磁石がつくペイント専用下地ペーパー「ワンダーペーパーマグネット」を開発し上市した。そのアイデアの新鮮さでグッドデザイン賞を受賞するなど大きく評価された。特許も取得。また、この共同開発にはウォールデコレーションストア(東京)も参加。まさにコラボレーションの成果といえる。
「ワンダーペーパーマグネット」の特長は何といってもその磁気パワーにある。磁石を付けたアイテムを壁にしっかりと固定することができる。例えば文庫本用のラックで壁に造作でき最大3kgの荷重に耐える能力がある。ニチレイマグネットでは磁石付きのレンガ調のアイテムなどを商品化(写真)。ウォールをカラーリングと造作で可変的に遊べる要素を付与している。
安全塗料はネットを通じてのダイレクトセールで「ワンダーペーパーマグネット」の販路を確保。「現状は供給が追いつかないほどの売れ行き」だという。業販に関しては塗料販売店、ホームセンターなどに卸す。卸しチャンネルはインテリアペイントの動向と相関するため時間をかけて開発していく考え。

主張するインテリアウォール

「ワンダーペーパーマグネット」効果は異業種人脈へと浸透し、さまざまなコラボレーションの輪を広げる。そうした人的ネットワークを活用してモデルルームを実現。東京・西八王子にある集合住宅の1Kルームを、大家さんの承認のもとリノベーションしたのだ。
その集合住宅は築40年近く。JR西八王子駅から徒歩2~3分という好立地にありながら、空き部屋が増えていた。空室対策としてペイントリノベーションのアイデアを持ちかけ、モデルルームづくりに着手。これに参加したのが手描き黒板制作のプロである藍田留美子さんと鉄の造形作家の2名。藍田さんはもともとデパートなどで宣伝ボード用のロゴデザインでキャリアを積み「黒板マーケティング研究所」を立ち上げたその道のパイオニアだ。


独自に編み出したアイデアである黒板を販促に活用する活動を推進する。あるカーディーラーの要請で6畳大の黒板を作成し、そこに藍田さんのユニークな描き文字デザインでシーズン(四季)に合わせたポップな広告図案を表現したところ、それまで通る人たちが無視していたショールームの集客力が倍増したという。黒板マーケティングの威力や恐るべし!
また黒板デコレーションに欠かせないのが鉄の造形だ。黒板を縁取ったり、アクセントを加える要素に鉄の造作を使う。「ワンポイントで鉄の造作を加えるだけで黒板の存在感、アピール度が飛躍的に高まります」と藍田さんは強調する。鉄の造形作家とのコラボは新たな発想を生む。鉄をシャビーにペイントし、そこにロゴ文字を描き入れる。表札から店頭ディスプレイまでといろいろだ。


溝口氏のペイントカラーと藍田さんのアイデアと鉄の造形家のコラボによる初の作品がモデルルーム。今回ウォールカラーと壁の造形までのデザインを藍田さんが担当した。とにかく「描く」ことが大好きという藍田さんにピッタリの企画。リノベーションのコンセプトは「昭和レトロに新鮮な息吹を注入する」。
ウォールカラーは大胆な配色となった。キッチンスペースは寒色そのものである彩度の濃いブルーにペイント。シンクの上部に鉄で造作された棚を取り付ける。棚は幅16~17cmの板を鉄で縁取りし、支えはアールを付けシャビーペイントを施し、ブルーの壁を立体的に引き立てる。メインルームの壁はイエロー。ブルーとイエローの色彩効果で、何の変哲もない部屋は昭和レトロからハイパーモダンな雰囲気に変身。トリムとルーフにはベージュ系の色をペイント。そして「ワンダーペーパーマグネット」によって、壁にラックとブロック造形が付き、遊び心を刺激する空間となっている。


藍田さんは「住む人が自由に変えられる壁の可能性が実感できてとても楽しい仕事でした。私の仕事でもっとペイントの可能性を探りたい気持ちになりました」と感想を述べる。一方、溝口氏は「インテリアペイントの世界は、外部のデザインマインドのある人たちとのコラボで、これからもっと広がり深くなる要素がある。これを機会にコラボしたビジネスの方向を強めたい」と話していた。

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イエローの壁に小物で造形


ペイント!遊び心を刺激するツール
Shake Hand(沖縄・那覇市)

おもちゃ箱をひっくり返したような世界が広がる。キッチュでいて、どこかクリエイティブな感じの不思議なショップ。那覇市牧志にある「大工の手―Shake Hand」はペイントカラーを基本とした創作工房だ。商品はシャビーなカラーリングをした板材1枚3,000円など。また古い米国の雑誌の切り抜きを板材に張りクリヤー仕上げ。インテリアアイテムとして観光客にも人気。とにかく常識や既成概念に捉われない遊び心を大切にした雑貨がショップにあふれている。

「Shake Hand」を運営するコミットの取締役・迎里(むかえざと)清雅氏は「塗装は表現力が無限にあって、とてもクリエイティブな商材だと思う。フラットにただ塗るだけでは面白くない。アッシュ系で仕上げてみたり、いろいろな工夫を加えて、ペイントの世界を広げたい」と語る。迎里氏はペインターだったわけではない。デザイン関連の仕事の延長からペイントの世界に入ってきた人だ。それだけにペイントの常識は迎里氏にとっては非常識となる。こんなエピソードを語る。
「工務店からあるホテルの内装のペイント仕事を依頼されたのですが、私たちの持っている技法(テクニック)を使った仕上げなのに、その技量に対する評価はゼロ。平米単価だけでやれという形で、それ以来コンストラクターの仕事は一切断っています」。


とにかくこだわった塗装仕上げに情熱を込める。ついにはオリジナルペイントを開発。取引先の塗料ディーラーに依頼し、24色のカラーパレットがある「Shake Handオリジナルペンキ」を完成。100ccの可愛らしいポット入りで、女性客に人気があるという。
迎里氏はデザイナー出身だけあって、ペイントがデザインマインドを刺激するようだ。ペイントをツールの基点とした商品づくり、木工教室の開催、ガーデニングサポートと関心は広がるばかり。
省資源といった堅苦しい発想ではなく、遊び心で木片や廃材をペイントすることで商品化。木片(数cm角程度)にカラーリングしただけで、木片タイルができあがり、客がそれを買って壁やテーブルに張り付けて楽しむといった具合。廃材をペイントで再生するアイデアがショップにみちみちている。


ペイントで息を吹き込まれた製品のひとつに、ガーデニング用品がある。木箱にロゴを入れシャビーな仕上げで存在感あるプラントボックスにする。更にクライアントからの依頼でガーデニングをトータルに設計するケースも多い。「お客は私たちにオリジナル性を求めているのだと思う。大量生産の安価な商品があふれていますが、どこかよそよそしい。もっとハンドメイドの味があり、自分テイストを感じさせるものへのニーズが強まっています」。
ショップとは別に、木工製品の秘密基地「GARDEN COMMIT」が那覇新都心にある。この基地は工房となっており、木材から組み立て、仕上げのオリジナル製品をオーダーメイドで手造りしている。ここでガーデニングに必要なカスタムガーデン・木工製品がつくられている。

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おもちゃ箱のようなショップ

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オリジナルペンキ(24色)