2017/04/14 16:28

インテリアペイント特集2017 ケーススタディ(1)

次元を超えたペイントテクニック
"塗料マニア"milyさん

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大阪府下のとある戸建住宅。ナチュラルガーデンに彩られた玄関アプローチから既に"その雰囲気"が漂っている。玄関ドアを開けるとまるで海外の住宅、それも経年でカッコ良さが増した独特のエイジング空間が広がっている。「塗料マニア」の異名を持つカリスマDIY主婦・milyさんの自宅を訪ねた。

玄関ドアを開けると目に飛び込んでくるのが吹き抜けホールの圧巻の佇まい。経年で漆喰が剥がれてレンガ下地が覗いているような壁、ステンシルやグリーンをオシャレにあしらった演出、雰囲気にそぐわなかったラッピング建材の階段手すりにもメタルプライマーを塗って白の艶消しのペイントを塗装、経年の良さを感じられる空間にまとめた。ビニールクロスやラッピング建材といった普通の家の空間をmilyさんのDIYペインティングで変えていったものだ。
玄関ホールは序章に過ぎない。リビングダイニングやそれぞれの居室、キッチン、洗面所、家具や建具、調度、小物にいたるまで家中フルスペックでmilyさんの手が入っている。いずれもエイジング塗装の細かなテクニックが施され、「古さ」が「カッコ良さ」に転化する「経年の世界観」が表現されている。フェイク(擬似)塗装で憧れの空間を演出しているディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンの建物のような佇まいが普通の住宅に広がっているのだ。


milyさんがDIYを始めるようになったのは8年ほど前のこと。「庭を可愛くしたくて」ディスプレイの梯子を作ったのが最初。
「ご近所の大工さんに端材をいただいて金づちと釘だけで作ったのですが、それだけだと味気ないのでホームセンターで塗料を買ってきて塗装をしました。まったく初めてだったんですが、大雑把な性格が幸いしてか適当に塗った感じがいわゆるシャビーシックないい感じに仕上がり『あっ、結構できるかも』(笑)と思ったのが始まりですね。市販のものと違ってデザインやサイズを自分の家にフィットさせられる、理想のものを形にできるDIYの魅力にどんどんはまり込んでいきました」と振り返る。
例えばダイニングの一角に据えつけられている収納棚。壁と壁の間にピタリと納まり、圧迫感を感じないようにと奥行きも浅く設計して製作した。市販品では絶対に見つけられないサイズだ。しかもアンティークなステイン仕上げの天板、モールをあしらった扉、白をベースに"汚し"テクニックでエイジングした経年のテイストなどデザイン性でも市販品を軽くしのいでいる。


聞いてみたいのはそうしたテクニックをどのように身につけていったかということだ。「(DIYブームの)最近でこそHOW TO本やネット情報などが溢れていますが、私が始めたころはお手本にするようなものはほとんどなかったですね。だから本当に見よう見まね。失敗を繰り返しながらだんだんできるようになっていったという感じです。でもその失敗が"嫌"につながらないのがDIYの不思議なところ。理想のものへの強い憧れ、それを自分の手で作り上げる満足感や達成感が一番のビタミンだと思います。『次は何をつくろう』とプランニングの段階から本当にワクワクしています」とスキルアップの原動力を明かしてくれる。


「主婦のDIYって実用とデザインを両立しているところに特徴があると思います。例えば、この引き出しをこういう開け方にすればオモチャをしまいやすくなるとか、キッチンカウンターをタイル張りにすれば熱いものも直接おけるし、料理を出すときの見映えも良いしなど、暮らしやすくてそれでいてデザイン的にも素敵な空間。そうしたDIYを重ねていくごとに、家族みんなのハッピー感が高まっている実感が一番の根っこかもしれませんね」。
「塗料マニア」の異名をとるだけあってmilyさんの部屋づくりや作品づくりにはペイントがとても効果的に使われている。錆びや古びた感じを醸すエイジング、かすれた風合いが味のシャビーテイスト、本物のレンガの壁に見えるフェイク塗装、靴のダンボールの空き箱でさえアイアン調のペイントでカッコいい収納ボックスに変える。「最初は塗料に水性と油性があることさえ知らなかった」とはとても想像できないほどの腕前だ。


「100円ショップの缶をペイントでリメイクする"リメ缶"がブームになっており、とりあえず100円ショップの塗料で始める人も多いと思うのですが、塗りやすさだったり仕上がった表情だったり、良い塗料との違いは歴然。DIYが好きになれば自ずと良い塗料を使うようになります。品質を追い求めているストーリー性が感じられ、そしてパッケージデザインにも気を使っている、そんな塗料に惹かれますね。一人ひとりの需要は少ないかも知れませんが、心に響く製品というのは必ず支持され裾野が広がると思うんです」と塗料メーカーにもエールを送る。

milyさん:ご主人、小学生の女の子と男の子、3歳の娘さんの5人家族。「DIYの楽しさを伝えたい」と続けているブログは大人気。DIYつながりの友人たちと開くワークショップ、作品の販売など活動の幅が広がっている。

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自作の収納棚。塗装表現が見事。

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和室を洋室リノベしたmilyさんのアトリエ


「季節の色」に包まれて育つ
ロハスキッズ・センタークローバー

20170222-7-1.JPG「季節の移ろいを感じながら毎日を過ごしたい」と外遊びを大切にしている保育園がある。近くの多摩川の土手を毎日散歩して、春の心地良いそよ風や夏の草花の匂い、秋の夕焼けの色を感じながら子供たちの心を育む。「外遊びだけでなく園内でも季節を感じることはできないだろうか」。園長先生がふと壁に目をとめる。「そうだ!壁の色の変化で季節を感じよう」。東京・世田谷区の保育園ロハスキッズ・センタークローバーのペイントワークショップ「季節の壁」プロジェクトが始まった。

「子供たちにとって季節の移り変わりを感じることはとても大切なことだと思っています」と園長の中田綾さん。「植物の香り、風景の色、暑さや寒さ、そして時間の感覚。その肌に直接感じることで自然を大切にする気持ちや感受性が育まれ心豊かなひとに育ってほしい」との思いを込める。外遊びを大切にしている理由だ。
あるきっかけでベンジャミンムーアペイントと出会い、「色で季節を感じる」というキーワードが浮かんだ。「季節にはそれぞれ"色"があります。季節ごとに園内の壁の色を変えれば、室内に居ながら季節の移ろいを感じられる。例えば、秋の色の中で遊んだり、ケンカをしたり、ごはんを食べたり。季節の色に包まれながら子供たちの日常が過ぎていくって、とても素敵なこと」と思いは膨らんだ。
こうして、同園の平成28年度の教育カリキュラム~ペイントワークショップ「季節の壁」がスタートした。この取り組みには、ベンジャミンムーアペイントの輸入総販売元・ベンジャミンムーアペイントジャパンが全面的に協力、プログラムが進められた。


「季節の壁」の流れは、子供たちが色を選ぶ「色ワークショップ」、その選んだ色を子供たちが中心になって塗装をする「壁塗りワークショップ」、最後にその壁の上にアーティストがライブペイントを行う3段仕掛けで完成させていく。
第1回目は昨年の6月。最初に行う「色のワークショップ」ではベンジャミンムーアペイントジャパンの長張氏が来園し、色選びのサポートを行った。
ベンジャミンムーアペイントの3,600色のカラーデッキを広げると「すごーい!」とみんな大興奮。素直でダイレクトな反応が返ってくる。
子供たちには「今の季節をイメージして色を選んで」と先生からミッションが出される。すぐに集中できるのが子供たちのすごいところ。みんなの顔は真剣そのものだ。そして、「せーの!」の合図で一斉に指さした色は揃ってグリーン系。6月の色が決まった。「色を選ぶというプロセスの中にも想像力や感性を磨く大切な要素が詰まっています」と園長先生。ペイントワークショップにした理由が一つ加わった。


「色のワークショップ」の次は「壁塗りワークショップ」。ベンジャミンムーアペイントジャパンのスタッフたちがサポートしながら、子供たちが選んだ色を子供たちの手で壁に塗っていく。「みんな、自分たちで選んだ色という意識がありますから雑には扱いません」(園長)というように自主性や主体性を育むことにもつながる。
「道具のことや塗る前の準備、自分の手を動かして塗る作業というように実際のプロセスを体験することで"物づくり"の大切な部分が伝わり、完成したときの達成感や感動が子供たちの心を大きく育てます。何でもすぐに完成品が手に入り、バーチャルが広がっている世の中だからこそ物づくりのプロセスを知り、リアルを体験するということがとても大切です」と意味合いを説明する。
色選びで感性が育まれ、リアルな体験を通じて物づくりの醍醐味と達成感を味わう。「子供たちの価値観が形成される時期に体験するワークショップとしてペイントはベストではないでしょうか」と新鮮な見方を示してくれる。


初夏に行った第1回目に選んだ色は『スキューバグリーン』。2回目の9月に秋の色で選んだのは『オリーブプロビデンス』、そして今年1月の最終回では、毎日散歩で多摩川の土手から見上げる冬の夕焼けの色をイメージして『デコローズ』を子供たちは選んだ。「ベンジャミンムーアさんのペイントは一つ一つの色にストーリーが浮かぶ素敵な名前がつけられています。臭いもなく安全性にもすごく配慮されており、子供たちが使う上でも何の問題もありません。送迎の際に保護者の方々にもお奨めしていて、まるでベンジャミンムーアさんの営業マンです(笑)」と信頼は絶大。
塗装作業のときに被るバンダナと大人用のTシャツをツナギ代わりに着ると子供たちにはお仕事モードのスイッチが入る。3回も経験するといっぱしの職人気取りだ。「よーじょー(養生)」という専門用語が自然に出てくるのが微笑ましい。子供たちのニュートラルな心にペイントの楽しさがどんどん吸収され、「この子たちが大きくなったら躊躇なく部屋の壁を塗装するでしょうね」(園長)と微笑む。

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デコローズのお披露目に「ワー!」

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大人用のTシャツがツナギ代わり

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ローラーをスイスイ


需要盛り上がり、人づくりに注力
カラーワークス

カラーワークス(社長・秋山秀樹氏)はカラービジネスの底上げのためマンパワー事業を加速させる。「インテリアペイントへの社会的な関心が高まっており、これを更に強力に支える人材の育成が急務」(秋山社長)と判断しているためだ。特にコンサルティング(ソフト)できる人材とともに施工(ハード)人材の面での対応力が求められている。

カラーワークスは昨年4月に洋風建築住宅会社のカントリーベース(本社・石川県金沢市、社長・山田修司氏)とタイアップして「C&Cフィニッシングアカデミー」を立ち上げた。特殊モルタル造形とペイント(フィニッシュ)を組み合わせたデザインコンクリートの技法をマスターするスクールだ。
デザインコンクリートは、モルタルで石材やレンガ調を造形し、塗装のテクニックで古びた意匠を付与するなどして、立体的なデザインを創り出す世界。商業ベースでは以前から導入されていた技法だが、建築業界から一般生活者にまで関心が広がり、幅広い需要がある。その一方で、技法をマスターしている職人が少なく、需給ギャップが生じていた。


カントリーベースは輸入建材を使った欧米風の住宅を設計・販売し、全国的に人気を集める。住宅内外は壁紙を使わずオールペイント仕様にこだわり、デザインコンクリートをアクセントで加えるスタイルを確立。カラーワークスはインテリアペイントで独自の世界観でブランド力を発揮する中で、造形的要素を新たに加える必要があり、両社の思惑が一致。
C&Cフィニッシングアカデミーは4月の開講以来、定員を上回る応募があり、現在3カ月先まで予約が埋まるほどの人気ぶり。応募者の約6割が塗装職人で、ペインターの参加が目立つ。「フラットに仕上げる塗装の世界から、もっと造形性があり、想像力を生かせる技法をマスターして仕事の幅を広げたい」と受講理由を語る。
受講期間は5日間。だがその内容はとても充実している。合板下地が用意され、その上にブラックペーパーとラス張り・下地用の速乾モルタル(ラピッドセット)で下地を造る。これにカンテラと呼ばれる特殊モルタルで造形する。カンテラは最大10cmの厚さが付き、木や石、岩肌、レンガ、ブロックなど任意のデザイン表現が可能。


またカービング(彫刻)やスタンプ転写などにより、例えば古くなってモルタルが剥落しレンガの一部が露出した壁の造形ができる。これにペイントでシャビーな感じの仕上げを施す。デザインは自由度が高く、クライアントの求めるイメージを立体感あふれる造形に仕上げられるのが魅力。デコラティブハウスといったコンセプトの住宅が注目され、その背景には工業的、画一的な住宅スタイルの陳腐化がある。
講習費用は35万円/人と決して安くはない。一月に1回のサイクルで、これまでに100人超が受講。応募者は塗装職人や他の仕上業種や工務店関係から、新しい技法をマスターして独立したい素人まで多彩だ。将来性のある職業として関心を引き付けているようだ。ちなみに塗装職人の場合口コミで応募するパターンが一番多いという。

ホームデコを資格化

ホームデコレーター資格の制度化はある意味でカラーワークスが展開してきたカラービジネスの集大成。色彩を基点に住空間を編集するには、従来からあるインテリアコーディネーター資格やカラーコーディネーター資格では十分対応できない。
インテリアコーディネーターは色彩を表現するペイントノウハウが欠如し、内装=壁紙の世界から脱け出ることができない。一方のカラーコーディネーターは、色彩知識はあるものの、それを具体化する手段を持たない。ホームデコレーターはこうしたギャップを埋める能力を開発するのが狙い。
実は既に秋山千恵美さんを中心に数年前からホームデコレーターの人づくりに着手。国内ばかりでなく、韓国、台湾など海外での人材育成の実績がある。「色を楽しむ生活をベースに住空間を創造できる人づくりをしたい。社会的にも強い要請があると実感しています」(秋山千恵美さん)。
このため公的な資格としてホームデコレーターを確立させたい考えだ。関連省庁の承認などの手続きを経て、年内には制度化を具体化する。


ドリームチームはインテリアペインターの育成と同時に、カラーワークスの扱う商材(F&B、HIP、S-Wなど)を取り扱う事業者を組織化し、カラービジネスの底上げを図る狙いがある。昨年の募集説明会には全国から多彩な業種が参加したが、塗料業界(塗料店、塗装業者)の参加は少なく、インテリア業界、リフォーム業者、工務店などからの参加が大半を占めた。
ドリームチームは現在、20社が加盟しているが、100社程度に拡充する計画。「インテリアペイントの需要の高まりがある一方で、受け皿となる業態が未整備。このギャップを埋める必要があります。カラーワークスのビジネスパートナーとなっていただける企業の参加を望みます。特に塗料業界関係者の参加は産業の活性化につながります。ぜひ応募してほしい」(秋山社長)と呼びかける。

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