安田塗装(本社・東京都豊島区、社長・安田啓一氏)は昨年、東京ドーム内にあるローラースケートリンクの塗り替え工事を行った。

内外壁の建築塗装を主力とする同社にとって床塗装工事は決して多くある仕事ではないが、かねてから東京ドーム関連施設の塗装工事に関わっていた関係から同社にオファーが寄せられた。安田氏は「施工業者にとって、工事の種類が増えることは技能を高める上で非常に大事なこと。快く引き受けさせて頂いた」と当時を振り返る。

塗料は溶剤系2液ウレタン樹脂系塗床材を採用した。年中無休の施設のため、工期を要する厚膜仕様は厳しいと判断。色については、パントンカラーから2色の指定を受け、特注色として取り寄せた。「リンクを周回する滑走コーナーと中央部を色分けするためのマスキングに神経を使ったが、ワックスの剥離も相当の労力を要した」と説明。「一部の箇所で手直しもあったが、当社としては良い経験となった。次の仕事に生かしていきたい」と無事引渡しを終えた。

通常、同社が塗床材を使用するのは、ベランダなどのFRP床や商業施設のエントランス、駐車場、マンションのゴミ置き場などいずれも小面積の物件が中心。いわゆるコテ塗りによる厚膜仕様が求められる大面積の塗り床においては、専業者に外注するケースが多いという。そのため塗料も在庫性や性能のバランスを考慮し、内外部での使用が可能な溶剤系2液ウレタン樹脂系に絞り、建築塗装会社の位置づけの中で床工事に関わってきた経緯がある。

その意味でも今回ローラースケートリンクという大面積の施工を請け負ったのは同社にとってもまたとない機会。職人の技能修得に一役買った形だ。

安田氏が特に認識を強めたのが、塗膜物性の重要性。「施工後に来場客がジャンプしたり、激しくストップしてターンする姿を見ると、床塗装は壁や屋根に求められるものとは全く異なる」。安田氏の言葉を借りれば、塗膜を(壁に)乗せるか、(床に)付けるかの違いを肌身で感じたという。

こうした感覚の違いは、施工管理の違いを浮き彫りにする。

床と比べて耐衝撃性などの物性にシビアでない外壁塗装の場合、効率化のための工程のアレンジや工夫できる余地が残されているのに対し、塗り床の管理幅は狭い。「きちんと物性を確保するためには、下地処理が肝心」と塗り床においては施工側による安易な判断がミスを生む要因になるとの過去の経験が生かされている。

「塗装会社にとっては、経験が次の仕事を生む原動力になる」と今回の実績を弾みにしたい考え。今後は水系の採用にもトライしていきたいとしている。