海洋環境技術でグローバルシェア拡大へ
船舶塗料事業の展望語る

明治時代、国産塗料が軍艦の採用から発展したのは知られるところ。フジツボや藻など海洋生物の付着を防ぐ塗料の防汚機能は、船の航行性能を飛躍的に高め、今も国際貿易を支える貨物船や客船において塗料の性能追求が続けられている。近年は、海洋環境保全と燃費性能向上を求める技術課題が浮上。「船舶塗料市場に環境技術で革新をもたらす」(白幡社長)と技術からシェア獲得に意欲を示す。白幡社長に技術開発の現状、成長戦略について聞いた。


----船舶塗料の需要家でもある造船業界の合従連衡が活発です。

「国内1位の今治造船と2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU)が手を組みましたからね。ライバルの中国、韓国も大手同士の連携に着手しており、国同士による連携構造が一層鮮明になっています」

----何が起きているのですか。

「最大の目的はコスト競争力の強化です。船舶の竣工量は2011年をピークに減少し、以来価格競争が一段と激しくなっています。10年ごとに好不景気を繰り返してきた造船市況を見ると、そろそろ需要回復に向かう時期ですが、鋼材や資材が高騰し、かつて以上に採算確保を難しくしています。韓国、中国が国の強力なバックアップを受けて拡大化を進めているのに対し、日本は低燃費船や温室効果ガスを排出しないゼロエミッション船といった先端技術で対抗していく構図です」

----経営体力がいりますね。船舶塗料の需要構造を教えてください。

「船舶塗料には、造船、修繕の2つのセグメントがあり、当社の売上構成は造船40%、修繕船60%です。利益面では修繕船の比重が高く、新造船の段階で、できるだけ多くの船舶に当社の塗料を採用して頂き、修繕需要につなげることが重要です。また修繕のセグメントは船主との関係も大切ですので、アジア、欧州に拠点を広げ、関係構築を強化しています」

----船舶塗料市場における貴社のグローバルシェアは5位ですが勝機は。

「当社のグローバルシェアは8%弱ですが、トップメーカーも20%台と業界内ではダントツの存在がなく、まだ勝負はついていません。各市場で圧倒的優位に立つドミナント戦略をグループ全体で指向していますが、この市場においても十分にトップグループ入りを目指せると考えています」

----そのための方策は。

「国際海運の全世界の船舶によるCO2の排出量(出典:EDMC/エネルギー・経済統計要覧2021年版)は、約9億トンと推定されています。大量に荷物を積んだ大型船が世界中を航行している現状は、環境に対しても非常に大きな影響があり、IMOも2050年までにCO2排出を半減する指針を出しました。これから船舶の低燃費化技術が加速していくと思いますが、船舶塗料の役割も大きいと見ています」

----社会的ニーズに塗料の価値を直結させていくということですね。

「そうです。今年上市した『FASTAR』は、まさに燃費性能の向上、防汚剤の溶出量削減、工程短縮を実現する次世代型塗料として、地球環境保全への貢献と船主や造船会社に喜ばれる製品の提供を可能にしました。直近で既に70隻への採用が確定しています。特に薄膜化技術は、最大4割弱の塗装工程を削減することが可能となり、現場ユーザーから好評を頂いています」

----「FASTAR」は、従来と異なる販売手法を取ったということですが。

「これまで新製品は、国内顧客から実績を重ね、アジア、欧州へと確実に広げていくパターンでしたが、FASTARは、世界同時発売で早期のシェアップを目指しています。顧客には、先行する省燃費型防汚塗料『LF-Sea』『A-LF-Sea』や溶出剤フリーの『アクアテラス』で塗膜表層の改質技術に着眼した当社の技術的系譜をお示ししてきましたのでFASTARにおいてもスムーズな理解を頂いています」

----しかし同時発売には、技術的な完成度が重要になりませんか。

「その通りです。性能面での信用もさることながら、世界中の修繕ドックで期待した塗膜が作られ、長期航行中も機能を発揮するということを証明しなければなりません。そこで以前から注力してきたのがラボデータと実船性能との相関検証です。長期に及ぶ実船航行データをビッグデータとして購入、ラボ性能データと比較することで、数年先の塗膜状況を予測するシミュレーション技術の開発に着手しました。また予測の精度を高めるため、岡山・玉野の評価センターで実際の海水を使用し、実船で想定される塗膜溶出等の模擬実験研究を進めています。塗膜性能を訴求する上で、精度の高い未来予測が示せるデータを顧客に提供し、技術に対する信頼度が高い会社として認知される存在を目指しています」

----塗膜の高機能化と予測技術が開発トレンドになるということですね。

「そうですが、あえて付け加えるなら時流に応じた適切なタイミングで製品が出せるかどうかも重要な鍵です。環境規制が出てから製品を作っていたのでは間に合いません。当社では既に2030年に向け、さまざまな航行条件においても塗膜が外的要因を受けにくく、更に溶出量を抑制できる塗料の開発を継続しています。この先にあるのは、溶出ゼロの防汚塗料の開発です。燃費性能を高めながら、どう実現していくか、将来への期待が膨らみます」

「社長に就任して4年目になりますが、船舶塗料事業は長期的な視点が必要と改めて実感しています。AI活用や同業連携など、業界内でゲームチェンジが生じた際にも勝負ができるよう、これからも技術開発投資を継続していきたいと思います」
 ――ありがとうございました。



白幡清一郎氏
白幡清一郎氏

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