―第27章―
磁器タイル張り仕上げの考察

外装仕上げにはグレードがありますが、最も高価なものの1つに磁器タイル張り仕上げが挙げられます。タイル張りは高価なゆえに、耐久性も高いと思われている方は多いのではないでしょうか。確かに、太陽の光による劣化がほとんど起こらないので、見た目のコンディションは良好な状態が長く続きます。ただし、硬いので、他の仕上げ材よりひび割れしやすいです。また、重量があるのではがれやすく、落下するとたいへん危険です。かつては、タイルがはがれる原因の多くは、下地の目荒らしが不足しているなど、施工上の問題が大きいと考えられてきました。それが最近の研究では、躯体(構造体)と仕上げ層の温度差及び湿度差で発生する『相対ひずみ(ディファレンシャルムーブメント)』によって接着力が低下することが分かっています。すなわち、一般的な方法で張られたタイルは、いずれ必ずはがれてしまうのです。そういったことから、オーストラリアやスイスといった国では、外壁のタイル張り仕上げを法律で禁止しているほどです。簡単に言うと、タイルの硬さが、汚れや色あせが起こりづらいという長所と、割れたりはがれたりしやすいという短所を合わせ持っているのです。

マンションなどで磁器タイルが多用されているのは、鉄筋コンクリート造であることが大きな理由のひとつです。建物の動きが少ないことと、雨水の浸入をコンクリートの厚みで抑制していることから、磁器タイルを張ることによるトラブルは、他の構造に比べ比較的少なくなります。半面、木造や鉄骨造においては、そのリスクは断然高まります。

まず、木造ですが、他の構造に比べ、外圧を受けて建物が動く率は高いです。しかも、木材自体が大きく膨張・収縮します。それだけでも割れやすいのですが、加えて、多くの木造建築では伸縮目地を設けていません。伸縮目地を作れば動きを吸収することができるのですが、見た目の悪さなのか、そういった設計はほとんどありません。また、湿式(タイルをモルタルなどで張り付けること)を採用している建物では、そのほとんどが直張り工法にて仕上げられています。ここで、直張り工法と通気工法について少し触れておきます。 

その最大の違いは、二次防水(一次防水である表面仕上げ材の内側に施された防水層のこと/透湿防水シート・アスファルトフェルトなど)の表面にすき間があるかどうかです。通気層としてすき間が設けられていれば、雨水はそのすき間を通って下方に流れ落ち、水切りなどから排出されますが、直張りの場合、そのすき間がないため、一次防水より浸入した雨水が二次防水の表面にとどまってしまいます。そのため、雨漏り、腐食などのリスクがたいへん高くなるのです。個人的には、木造直張りで湿式工法、かつ伸縮目地を設けない磁器タイル張り仕上げは、雨があたらない箇所以外は採用すべきではないとさえ思っています。

次に鉄骨造についてです。鉄骨造は、骨組みを造る構造ですので、おのずとパネル張りの建物が多くなります。磁器タイルはパネルに張ってゆくのですが、その張り方が問題になります。

写真①

写真①

写真①は鉄骨造で、ALCパネルを下地として磁器タイルを張った建物ですが、縦にまっすぐひび割れが発生しています。なぜこのように、定規で線を引いたように割れてしまったのでしょうか。それは、磁器タイルを張る際にALCパネルのジョイント目地を隠してしまっているからです。ジョイント目地にはシーリング材が充填されていて、伸縮目地のように動きを緩和しているのですが、その上に硬い磁器タイルを張ってしまえば、割れてしまうのは必定です。ジョイント目地を避けるようにタイルをカットしながら張り、シーリング材を充填して表面も目地化すれば、このようなひび割れは起こらなかったでしょうが、ALCパネルはジョイントが多く、それをすべて目地にするのは工程が膨大になること、また見た目も悪くなることから、普及していないのが現状です。

このように、建物の動きにたいへん弱い磁器タイルは、メンテナンスフリーとは名ばかりであることがご理解いただけたと思います。では、実際のメンテナンスはどのように行えばよいのでしょうか。

塗装という観点から考察してみると、一般的に広く使われている磁器タイル用クリヤーは、防水材としての効果は期待できません。そもそもクリヤー材は、厚く塗りつけてしまうと白濁するため、ごく薄くしか塗布できません。従って、雨水を防ぐような連続した膜にはならないのです。また、目地に浸透し吸水を防ぐタイプの材料もありますが、あくまで対象は目地なので、タイル自体のひび割れを抑止したり、ひび割れた箇所からの吸水を防止したりといった効果はありません。他には、厚く弾力性のある塗膜でひび割れを防ぐ効果を持つクリヤーもあるのですが、厚ければ濁りやすく、柔らかければ汚れが付着しやすいため、せっかくの磁器タイルでありながら、見た目がかなり悪化してしまいます。そもそも、磁器タイルの長所は見た目の変化が少ないことですから、表面を塗装することに対する絶対的な意義はないのです。従って、タイルが接着面から浮いていれば樹脂を注入したり、ひび割れていれば張り替えたり、目地を作成したりといった、物理的な方法での修補を中心に考えないと、メンテナンスになりえません。