名古屋の金山駅のトイレでふと、目の前の"錆"が目に留まった。錆と言ってもデザインの錆だ。タイル張りの内装に、アクセントとなる錆調パネルの主張が絶妙な味わいを演出する▲本来は建物の劣化を示す錆を、意匠として楽しむ感性に、塗料表現の多様性を実感させられる▲しかし、塗装業界の本質はやはり防錆にある。日本の特許第1号(1885年)が、堀田瑞松の開発した「防錆塗料」であった事実は象徴的だ。国の近代化と特許制度の歴史は、まさに錆との戦いから始まったと言ったら大げさだろうか▲翻って現代の社会インフラメンテナンスに目を向けると、老朽化する社会インフラ、その一方で深刻な人手不足という壁が立ちはだかる▲そこで、鋼構造物の塗り替え現場では、防錆に重要となる工程のケレン作業の省力化に注目が集まる。こうした背景から、近年は錆の上からでも直接塗布して腐食を抑制できる「残錆対応型塗料」の採用が増加している。技術革新による工期短縮と省力化は、社会インフラの維持管理において、重要な役割を示している▲美観としての錆、そして鋼構造物を守るための防錆。形を変えながらも、塗料産業は常に錆と向き合い、進化を遂げてきた。社会課題に向き合い、現場の声を捉えた次なるイノベーションの誕生に深く期待したい(T)